~秘密のブルームーン~

たから聖

第1話 とある老紳士。

木こりの男性は……タバコを

吹かしながら一息ついた。


その男性は、おっとりとした

口調で……


『昔……チーズ職人をしていた

時があってね?』

タバコをもう一口吸った。


『その出来栄えには……それは

それは人気が、あってね。僕の

作ったチーズを食べたいと

皆がこぞって買いに来たものさ。』



『僕のお目ざめは、アイスコーヒーに、生クリームを泡立て

一人で空を眺めながら、お手製の

デスクと椅子で……森に住まっている小鳥達のさえずりを聞いて

いたのさ。』



元チーズ職人だった木こりが

インタビューに応えていた。


『空ってね?色んな顔を持ってるんだ。』


『太陽はね、雲に守られているから安心して照っていられるんだ。』


クスクスッ……と木こりの男性

は笑った。



しばらく沈黙していると、

インタビューの女性が続けた。


『あ!昔おっしゃってましたよね?』


女性記者は、書類を探していた。

女性記者は……記事を

探し当てると、

紳士な元チーズ職人に対して

態度が変わった。



『雲の切れ目に語りかけると、

雲は恥ずかしがり屋さんだ。

雲は、慌てて姿を変えるのさ。』


……と言う感じで、よかった

でしょうか?


女性記者は……取材を続けていた。


木こりの男性は……テレビに

とても映され慣れていた。


そうそうと話しを続けた。

『小鳥達は……とてもいい子さ

カラス達もね、風に吹き飛ばされたハンガーを拾ってきて

くれるんだ。』


女性記者は……インタビューを

続けた。



『なぜ、チーズ職人を辞めたか

お答えを……?』


マイクを向けられた男性は

語り始めた。



『僕は、もうね、疲れてしまったんだ。』

そうだねぇ……と一息ついていた。

『一人の時間を、買ったって

ことさ。君は分からないか?

どんなに至福のひとときか……』



女性記者は静かにメモを

取り続けた。


『頂点か。うーん。それは

どうだろうね?トーマスには

勝てなかった。でも違うチーズ職人の友人には、僕の秘伝のレシピ

を譲ったよ。ハハハハ。』



『そう。僕の信頼している友人

だよ。同じ系列店の友人なんだ。

どうなるかな?って感じだけどね

……。

後は、僕と彼だけの秘密さ。』



インタビューが、終わろうとした

時に、木こりの男性は……

お手製のウインナコーヒーを

一口飲み、一息ついた。



テレビが向けられていた。

『ワイフが居たときも、あったさ。長くは続かなかったね?』



『何でだろうね?僕はただ、

僕なのに、、、、。』


『お金儲けも、したさ。家族の

為に……。』


木こりの男性は……チーズを

一口食べた。



『僕かい?僕は木こりになって

よかったよ。木との会話も、

出来るしね?風と一体するとき

なんて、最高だよ。』


男性は……続けた。


『自由気ままなのさ。』


僕かい……?男性はアハハと

大笑いをし、作りたての牛乳を

手にし……



コクコクと飲みだした。


女性記者が問うと、

『ねぇ、ちょっと視点をずらして

見て下さい。あれが見えますか?』



木こりの男性は続けた。

『あぁ、月にしては、変わってるね?昔見たね?』



女性記者の直感が、ピンッと

した。あたりは緊迫した空気に

なった。



その時、

チリリリリリリンと電話が鳴る。


受話器をとると、何を言っているのか男性には……理解出来なかった。



女性記者に変わると、とてつもない剣幕で……女性記者に対して

受話器の向こう側では

早口で……女性記者をまくしたてていた。



撮影現場に割って入るように

ドアノブが空いた!



『頼むよ、おじいちゃん。

ホントに仕方ないなぁ。』


『おじいちゃんの友達がたくさん

居る所に、行くよ!いい!?

インタビューは中止!中止!!』



女性記者は、木こりの男性の

容態も丁寧に担当医師に伝えると……


医師は……カルテに書き加えた。


『おじいちゃんはホントにブルームーンの話しを、したがるよね?

さぁ、あまりここに、長居して

は……いけないよ。』



福祉施設の職員が大きな車で

迎えに来ていた。


『おじいちゃん。ありがとう。

おじいちゃんの様子は……テレビ

に写しては……ダメなの。

いつかの時に、保管しておくわ。』



女性記者と木こりの男性は……

指切りの約束をした。



ペンションと施設の距離は……

歩いて5分の所にある。


木こりの男性は……

『わざわざ車なんか出さなくても

全く、君たちは!!』


『会長どうぞ。お迎えに上がりました!』

迎えに来た皆が……敬意を払って

いた。


『施設での講演会ですよ?会長!

あぁ、もう……。』

と……木こりの男性は、される

がままに、スーツ姿になっていた。


『会長!授賞式では……

レッドカーペットでハリウッド 

女優との撮影会がございます!』




『君たち、うるさいねぇ。

僕は、僕のペースで仕事をするよ。』



召使い達が玄関前にズラリと

並んでいた。



蝶ネクタイをつけた頃……

『あ!!!』と……木こりの

男性は、ペンションに忘れ物を

したのに、気が付いた。




【しまったぁ。トーマスからの

プレゼントを忘れて来て

しまったんだぁ!!】


まあ、いいさ。

直ぐに、連絡入れよう。



蝶ネクタイのモーニング姿に

着替えた会長は……トーマスに

連絡を入れた。



【君のプレゼント。秘密のレシピを使ったね?ダメだねぇ。】


【え?!知人に大金をはたいた?

バカだなぁ。今ちょっと忙しい

んだ。仮住まいが……】

連絡が終わると……



自家用ヘリが、バラバラバラバラ……と、会長を乗せて飛び立った。



トーマスは……

【何もんだ?!アイツ?まあいいさ。俺もいつか隠居生活するか。】


エプロンをパンッと……音を

立てて、ヒラリと巻いた。




【会長!!トーマス氏とは、

いかがな間柄で?!】


会長は、グラスを片手に笑った。





『秘密さ…………クスクスッ』





【THE END】

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~秘密のブルームーン~ たから聖 @08061012

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