577.ロウ爺〜ミハイルside
※※前書き※※
視点が変わっているので、ご注意下さいm(_ _)m
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「あと1人、来ると思うか?」
俺は寝かされたアシュリーの状態を瞳の力で確認してから、背後に立つラルフに視線と疑問を投げた。
もうじきアシュリーの記憶は、日常に必要な知識を残して完全に消える。
娘である王女の記憶も含めて、全て消える。
『愛せなくて、ごめんなさい。
あなたの姿すら、見る勇気を持てなくて、ごめんなさい』
『良いんだ。
私にとっても、君は母親という認識になっていない。
だから気にせず、何もかも忘れて良い』
王女がアシュリー記憶を消す間際の、母娘の会話。
王女はどんな気持ちだったのか……。
これまで、どんな気持ちで実の母親を護ってきたのか……。
アシュリーは王女に記憶を消される間、目を閉じていた。
1度として、王女の姿を見ようとしなかった。
王女は相変わらず無表情で、しかし抱える感情の色は複雑そうに視えた。
黒い憎しみの色は何一つない。
白に薄紫や薄水が混ざる、どこか物哀しい青系統の色がほとんど。
時に薄緑や薄黄が混ざるのが視えたから、安堵に近い感情もあっただろう。
感情の色が薄い人間は、感情の起伏が少ない。
常に感情に蓋をしているタイプで、レジルスもこれに近い。
もっもともレジルスは俺の妹が絡む時だけ、黒と真っ赤な色が混じったような嫉妬の色を放つ。
しかも濃い。
その色を視る度、妹がレジルスに監禁されやしないかと冷や冷やする。
犬になっている今もそうだ。
しかし対象が妹から王女に変わっているのには、何か理由があるのか?
このまま妹から王女に乗り換えてくれると、兄としては嬉しい。
血縁関係ではあるが、今のレジルスは犬。
犬としてなら、
王女もポチと名づけて、分かりづらいが可愛がっている。
疲れや魔力の減少がピークに達する程、撫でる頻度が多くなっていたから、可愛がっているはずだ。
ポチに気を許しているが故の行動だろう。
レジルスが妹への執着を、このまま手放してくれる事を、兄として切に願う。
そんな
船には、まだ病が完治していない流民達も乗っている。
病が悪化しないように最善を尽くしつつ、隣国に船が到着すれば、船を降りずに王女のいるロベニア国へ直帰するつもりだ。
ラルフもそのつもりだろう。
『リャイェン。
もし後から1人増えたら、その人も受け入れて欲しい』
王女が俺達と一緒にいたリャイェンに、そう話していたのを聞いた。
それ故の疑問だった。
「来るとして、誰が来るんだろうか?」
ラルフも首を傾げている。
検討もつかない。
その時だ。
「おい、あれ」
不意にラルフが、俺の後ろを指差した。
背後に魔力の高まりを感じて、再びアシュリーへと視線を戻そうとした。
途端……。
__ドスン。
「ぐあっ」
何かが、いや、人が俺の真上から落ちてきた。
もちろん俺は床に伏して倒れた。
「み、ミハイル?!」
「な、え、人がいたのか?!
す、すまんな!」
慌てるラルフと、落ちて来た人物。
ほぼ反射的にだろうが、俺の上に跨った何者かはすぐに下りてくれた。
声から老人だとわかるが、一体何者だ?!
手を差し伸べたラルフに掴まりつつ、老人の姿を確認して、王女の意図を知る。
「……そういう事か」
「君は、君達は何者かね?
それより、その瞳は……」
老人の髪は、ベルジャンヌ王女の実母と同じ白桃色。
少し白味が強いのは加齢によるものだろう。
瞳は俺の祖母や妹と、同じ藍色。
「ミハイルと申します」
敬意をもって名を名乗る。
「あ、ああ。
突然、すまなかった。
怪我はしておらんか?
儂はチェリア……いや、ただのロウビル。
ロウ爺とでも呼んでくれ」
ロウ爺は家門を名乗りかけて、止めた。
確信する。
俺が1度だけ訪れたチェリア家で見つけた、色褪せた家族の絵。
描かれていた父親らしき人物が、年老いればロウ爺の姿になるのだろう。
間違いない。
この老人は、俺の祖母であるシャローナの祖父。
そしてすぐ後ろに眠るアシュリーの父親だ。
※※後書き※※
いつもご覧いただき、ありがとうございます。
昨日と全く同じお知らせです。
開催中のカクヨムコンに参加したくなって、新作を投稿する事にしました。
もう少し書き溜めてから、ゴロの良い12/12(木)に開始します。
仮ですが、タイトル↓
【くっせえですわぁぁぁ!〜転生女伯爵の脱臭領地改革〜】
タイトルで推察された方もいたと思いますが、ほぼほぼコメディです。
そしてサポーターの方。
少し前に限定記事で投稿した【つれーですわ】のアレです。
公開した際には新作の方もよろしくお願いしますm(_ _)m
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