536.告白〜●●side

「それなら月和を手伝わず、このまま放っておけ。

強制解除の古代魔法を発動させた。

失敗すれば月和の魂は消滅する」

「そういや失敗すりゃ、もう月和は転生はできねえって言ってたな。

キャスケットは死なねえし……ん?

最悪だけは完全に回避できてんな?」


 アヴォイドからは、ラビアンジェが眠る前に発動させた魔法がどんなものか教えてもらってる。


 まあ結果オーライだ。

思ってたのと違うけど、目論みは予想通り成功したっぽい。


 そう、予想通りだ。

確信してたくらいには、月和は未だに俺を愛してるって知ってたからな。

俺の影響力=愛だ。


 ラビアンジェとして生まれた月和は、月を見ちゃ愛してる綺麗ねって俺に話しかけてたんだ。


 ちなみに月和がラビアンジェに転生する前。

まだ月和として向こうの世界で生きてた頃。


 アヴォイドが俺に初めて見せてきてた未来のビジョンでも、ラビアンジェとして生まれた月和は、そう言ってた。


 そこ、大事。

月和の俺への愛には、向こうの世界で俺達が夫婦やってた時からブレがない。


 俺達の世界の、ちょっとした隠語もどき。

だからアヴォイドは、今も気づいてねえよ。

単に2度目の人生を懐かしんで、感傷にふけってるとしか思ってねえ。


 月和は寂し気で、ちょっと泣きそうで、口元だけ微笑んでた。

最初に見たビジョンじゃ、ちっこい幼女姿だった。


 なのに旦那を思い出しては、色気を醸し出して、何回も綺麗ねって言うん告白してくんだぞ?

思わず爺姿から幼児姿になって、ニヤニヤしちまったわ。


 魂だから姿は自由だけど、爺のロリコンは俺の中で犯罪意識を刺激したんだろうな。


「月和、俺も愛してる時間が止まりゃ良いのにな


 って何回も応えた。

聞こえてなくても、いっつも応えてた。

月和に届いたのは少し前、アルマジロの腹吸いしてた時だったけど、ずっと応えてたんだぞ、月和。


 俺の奥さんは、とにかくいじらしい。

俺がこっちの世界にいるって知らなくて、2度と会えないって思いこんでて、ちょっとやさぐれて人生投げてたとこも、いじらしい。


 へへへ、可愛い奥さんだ。

爺だろうが、大好きが爆ぜるってもん……。


「ひとまず前触れなく妻に話しかけるのと、その変態顔は引っこめておけ。

若返っても、中身は爺だぞ」

「おっと、口に出てたか?

んなドン引きした声出すなって。

今世の奥さんの年齢に引きずられて、俺の気概も若くなってんのかもな?」


 手の皺が消えて、滅茶苦茶に張りが出てる。

今の俺は10代……高校生か。

服まで変わってんな。

昔懐かし、長ラン学生服。

ブレザーじゃねえから、年に何回か応援団やった時の期間限定スタイルだ。


 月和はこの頃に撮った俺の写真がお気に入りだった。

俺の弟からいつの間にか3年分の写真のネガを仕入れてて、あらぬ設定を書いたファンブックを作っては、あられもねえ顔で眺めてたんだよな……。


「どちらにせよ、未だラビアンジェが死ぬ運命は変わっていない。

ラビアンジェが展開した古代魔法を発動する為に、課題を与えられたあの者達3人が課題をこなせる確証もない。

これからベルジャンヌ過去に撒かれるだろう種を、ラビアンジェ未来で芽吹かせられるかもな」

「まあな。

でもこんな状態なのに、月和は最善を尽くしてる」


 いつの間にか月和は、ベルジャンヌの姿に変わっている。


「じゃ、行ってくるわ」

「干渉する気か?

お前の魂が消滅するやもしれんぞ?」

「まさか。

んな事したら、月和が絶望しちまうだろ。

ちょっとアシストするだけだって。

夫婦の共同作業ってやつ。

ミハイルの方には、月和が干渉作用を起こさせてるみたいだし?」

「……お前が関わったところで、ベルジャンヌの死は宿命。

変えられんぞ」

「知ってる。

もし変えられるとしても、今度は月和かラビアンジェの人生が消えちまう。

ベルジャンヌが生きてたら、ソビエッシュは絶対手放さねえよ。

ストーカーっぽい目つきの人間は、俺も生きてた時に出くわした事がある」


 を思い出して、ブルッと身震いする。


「じゃ、行ってくるな」


 ベルジャンヌ姿の奥さんを撫でてから、奥さんを通して目的地に座標を定めた。




※※後書き※※

いつもご覧いただき、ありがとうございます。


今回こそ書けました!

No.453で旦那さんが言った言葉!

そしてNo.415でラビアンジェが言った言葉の真意!


◯そして気づいた方がいたら凄い!

・月和夫婦の出会いは、マッチングアプリ。

※実は書籍1巻を発売時、校正担当者様にはチェックされておりました。気づく人はここで気づくのかとビックリ(´゚д゚`)

・今回判明した旦那さんの高校生時代の制服は、ブレザー。昔懐かしなのは、長ラン学生服。


Q.夫婦が死別したのは、現代にして過去?現在?未来?


月和として生まれたベルジャンヌが、心の傷と向き合って癒す事ができた時代背景に、納得していただける要因になるんじゃないかなと(≧∇≦)/

※今章はタイムパラドックスが、テーマの1つです。


◯お知らせです!

※先日したお知らせと同じです。


書籍【稀代の悪女】3巻が、重版しました!

今のところ、全巻重版です!

それもこれも、お買い求めいただいた皆様のお陰です!

心より、感謝申し上げますm(_ _)m


今すぐではありませんが、3巻重版記念SSをと考えているので、その時はよろしければご覧下さい(*^^*)


活動報告にはカドカワBOOKSツイッターURLを貼りつけているので、のぞいて「嘘と違うかったか」と思ってやって下さい!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る