534.ポクッと逝った後〜●●side
「そうだ。
そして長い歳月の間に、歪みはうねり、うねりは大きな波となって、ベルジャンヌ1人が波を受ける事になった。
更に不幸な事に、ベルジャンヌは受けた波を止めるだけの力も、自覚のない献身たる性根も持ち合わせていた」
「さすが、俺の奥さんだな」
「その年で惚気けるな。
外見を若くしても、中身は爺だろう。
しかしその通りだ。
王家の者達を、我を、世の中を恨んでくれれば、我も心を砕く事はなかった」
「爺でも、奥さんを褒められたら嬉しいもんだぞ?」
「まったく。
お前と過ごす時間も長くなった分、気を許し過ぎたな。
我は始まりを歪めたと気づいて以来、二度と人に干渉せぬと決めていた。
ベルジャンヌが17で死ぬのは宿命だと知り、決して変えられぬ時の定めだからと見殺しにしたというのに」
「けど、お前は更にその先を見た」
「そうだ。
ベルジャンヌがラビアンジェとして転生し、再び17で死ぬ未来をな」
「ただ、それは宿命じゃなく、運命だったってやつか。
何か俺の世界の、オカルトとか占いとかのテレビ番組でも言ってたな。
宿命は変えられねえけど、運命は変えられる云々て」
娘と孫娘達がそういう話、好きだったんだよな。
占い師になった孫は、男だったけど。
ま、俺も割りとそういう話は好きだったりする。
月和は昔から達観してたから、話に付き合っちゃいたが多分、興味なかったと思う。
月和は専らホラーや、昭和の濃ゆいドロドロした人間模様の昼ドラとか、サスペンス系が好きだった。
ラビアンジェとして転生してから、そういう小説書くくらいには大好きなジャンルなんだろう。
ホラーやサスペンスは難しいみたいで、こっそり書いてはしょげながらボツにしてっけど。
俺の奥さんは可愛いな。
「お前のいた世界にも、同じ概念があったか。
数多存在する世界は、少なからず影響し合う。
同じような概念が存在していても不思議ではない。
運命は変えられる。
それ故に我は時を操り、運命を手繰り、比較的平和に生きられそうなお前達の世界の、日本という国にベルジャンヌの魂を飛ばした」
「ああ。
お陰で俺は月和と出会って、惚れて、夫婦になった。
運命的な出会いだったな」
「……あれは運命と言うのか?」
う……ある意味、俺の黒歴史ではある。
アヴォイドの訝しげな言葉に、思わず口ごもる。
いや、アレは月和も知らない。
俺達の本当の馴れ初めで……そう、運命の出会いには違いない。
「……イイマスヨ?
まあ出会いが何でも、俺が心臓発作でポクッと逝くまで、ずっと仲良くやってたってのが、もう運命だろ」
「こじつけが酷い。
しかしまさかたった1度の転生で、あれほど情緒の欠落したベルジャンヌが、我の与えた課題を乗り越えると思っていなかったのは確かだ。
もっとゆっくりと時間をかけ、傷ついた魂を癒してくると考えていた。
ベルジャンヌの回復力が凄いのか、それとも月和の両親とお前が与えた愛が大きかったのか……」
月和の両親があったかい人達だったのは間違いねえ。
早くに両親を亡くしてた俺にとっても、実の親みたいに接してくれた人達だ。
魂が月和と繋がって、転生したばっかの月和がどれだけ
自覚なき心の傷ほど、厄介だ。
あの両親の元に転生できたから、ベルジャンヌとしての人生と向き合って、受け止める事ができた。
俺はそう思ってる。
俺と一緒に家庭を築いて、添い遂げる事ができたのも、月和が先にあの2人から子供らしい愛情を受け取ってたからこそだ。
もちろん俺の月和への愛情だって、親が与える愛情と種類は違うけど、負けちゃいねえぞ。
「お前が死に、我がお前の魂をここへ連れてくる前に見せた
失敗すればお前はラビアンジェに転生した妻と共に、魂を消滅させる。
ビジョンとして見たからこそ、脅しではないと理解したはずなのに、迷いなく即答だったな」
アヴォイドが苦笑する気配を感じる。
あの時。
俺が心臓発作でポクッと逝った後だ。
やたら明るい
その時コイツは、俺に月和の前世と来世の未来を見せた上で、俺が拒否すると確信して尋ねてきたんだ。
性格悪くねえ?
『当たり前だ、月和は俺の奥さんだ。
死んでも奥さんで変わらねえ。
旦那として、奥さんは守るもんだ』
『後悔しないと?』
『しつこい。
迷うような事でもねえな』
『ならば心して審判の時を待つが良い』
あの時コイツが言った審判の時っつうのは、少し前に乗りきった。
コイツが初めて見せてきた
魂が紐づく俺は、消滅だった。
もっともコイツが与えた罰は、それだけで終わらないんだけどな。
本当、性格悪すぎだ。
※※後書き※※
ご覧いただき、ありがとうございます。
No.453でのアヴォイドと旦那さんの会話が、今回のコレです。
そしてラビアンジェが目覚め時に、旦那さんが何て言ったのかは次回!
黒歴史な月和と旦那さんとの馴れ初め。
実は既に書いてます。
月和が知らない、という事だけチラッと覚えておいて下さると嬉しいです!
今章終わったら投稿する予定なので、そこまでこぎつけられるよう頑張ります(≧∇≦)/
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