508.今世は無才無能、無責任逃走公女として

「公女!」


 更にレジルス第1王子?

秘密の小部屋に転移した。


 どうやって……ああ、以前に渡したハリセンを手に持っているわ。

貼りつけていたリアちゃんの羽根が、またしても許可を与えた形になったのね。


 新聞紙がひと回り小さいような?

見間違い?


 あと少しでベルジャンヌのように灰になる。

そんな刹那の時間。


「キャスケット……ディアナ……」


 僅差だけれど灰になるよりも早く、キャスケットの風が私を包み、ディアナが胸元まで一気に氷結させていた。


 キャスケットはもちろん、ディアナもこの力に抗えるくらい、力が強くなったのね。

うちの天使はポテンシャルが違うわ。


『今の月和は、昔とは違うだろう?』


 また……。

もう気の所為なんかじゃないと確信する。


 ええ、そうね。

の言う通りよ。


 本当に……私はアヴォイドから罰を受けていたのね。

アヴォイドがすまないと、愛を知らない方が良いと言っていた意味を、ここにきてやっと理解する。


 ベルジャンヌとして生を終えた後、アヴォイドが告げた言葉。

1つ人生を挟んで、ようやく繋がった。


 あなたを巻きこんで、ラビアンジェとして転生していたなんて。


「お兄様、ラルフ君、ついでだけれど国王とレジルス王子も……」


 息を呑む4人の瞳を、しっかりと見つめる。


「助けて」


 そう言いながら、まだかろうじて動く腕を動かして聖獣ちゃん達を抱き締める。


 ベルジャンヌの時は、この短い言葉助けてがどうしてか言えなかった。


「「「「当たり前(無論)だ!」」」」


 4人は思っていた通りのお返事ね。

そう、思っていた通り……。


「ふふ。

待っているわ、皆」


 体は凍えてきているのに、胸の奥は温かくて、笑みが溢れる。


 ベルジャンヌ前々世と違って、ラビアンジェ今世は助けてくれる人もいる。


 ……いいえ、そうではなかったわね。


 学園の外側に感じる、今世では祖父母として縁を繋がれた2人の魔力。


 私の正体に気づいたからこそ、瞳の力を使う……エッシュ。


 ベルジャンヌの力の代わりにと、与えたリコリス魔法に宿っていた私の魔力を辿って、自分の魔力を私に届ける……ロナ。


 前世でたくさんの愛を受け取れたからこそ、今世になって、前々世で護っていたはずの人達が私に抱えてくれた想いに気づいた。

孤立無援だと思っていたベルジャンヌの周りにも、聖獣達以外に助けてくれたかもしれない人がいたんだと。


 前々世では間に合わなかったけれど、今世では……。


 不意にピケルアーラが国王に、国王がピケルアーラに魔力を補完し合い、増強させて秘密の小部屋に張っていた結界を霧散させた。


『ラビアンジェ!』


 ピケルアーラがツチノコ走行からの、ジャンプして腕に飛びこんでくる。

聖獣の非なる力に限りなく近い、聖属性の魔力を私に纏わせる。


 途端、急な眠気に襲われる。

まるでベルジャンヌだった私が、輪廻の輪に入った時のように。


 眠りにつく前に、契約している全ての聖獣達の魔力を最大限に自分の魔力と混ぜる。

もちろん、ピケルアーラが私に纏わせた魔力も。


『生きろ!』

『生きるんだよ!』

『生きるじゃ〜ん(生きて〜)!』


 ラグォンドル、ヴァミリア、ドラゴレナ夫婦の声。

皆、ありがとう。


「余が魔法を下支えする。

安心して発動せよ」


 国王、イケオジか!


 国王が背後から私を支えるような形で、私の利き手に手を添わせ、共に手を上に掲げる。

私がこれからする事を察したのね。


 今の私の状態では、安定した魔法を発動できるか怪しかった。

助かるわ。


 レジルス王子がハリセンをギュッと握りしめてこちらへ一歩踏み出す。

何だかお顔に陰が差していて、不穏ね?


 まあまあ、お兄様が王子の肩に手を置いた?

美男子二人が見つめ合ったけれど、お兄様がヤレヤレ感を醸し出して首を振る。

どんな状況?


「……レジルス、初恋馬鹿も大概にせよ」


 国王が後ろでボソッと呟いたけれど、意味がわからないわね?


 なんて思いながらも、私はイケオジ国王に役得感満載で支えられながら、魔法を展開する。

この魔法はある条件下でしか発動しない、発動すればあらゆる魔法を強制解除できる古代魔法。


 必要となる対価は私と、私に連なっているあなたの魂。

失敗すれば、私達二人の魂は完全に消失する。


 支える事に力を使う国王を除き、三人の魂も展開する魔法に組みこんでいけば、この世界では異質と感じる魂の存在を感じた。


 やっと見つけた。

あなた、ずっとにいたのね?


 それとなく自分から連なる魂を切り離せないか試してみたけれど、絡みついて離せない。

連なる魂自身が拒絶している。


 来世で出会う事なんてないから、死んだら私を忘れて欲しい。

アヴォイドとは関係なく、そう思って言った事があったでしょう?


 なのにそれを嬉しいと感じるなんて。

私はもっと馬鹿なのね。


 苦笑しながら自分の魂と、連なる魂を魔法陣に組みこんでいけば、アヴォイドの魔力がどこからともなく流れこむ。


 邪魔をするわけでもなく、魔法陣に干渉している。

アヴォイドは何がしたいのかしら?


 けれど私ができる事は、もう何もない。


 そうね。

今世は無才無能、無責任逃走公女として、楽しく生きるんだったわ。


 運を天に、そしていつも通り人任せにして、胸に抱く三体の愛しい子達と深い眠りにつきながら願う。


 どうかを助けて……。






※※後書き※※

いつもご覧いただき、ありがとうございます!

やっと今章、終わりです!

ここで?!と思われた方もいるかもしれませんが、ラビアンジェが主で解決するのは、ひとまず終わりとなるのと、小説にしたら1巻分を超えるくらい、長々してきたので(^_^;)


詳しい今後については近況報告にまとめたので、よろしければそちらをご覧下さいm(_ _)m


途中、話がどうしても繋がっていかずに投稿頻度が落ちてしまいましたが、お付き合い下さった方には本当に感謝しかありません。

フォロー、レビュー、応援、コメントにめちゃくちゃ励まされました!

いや、今回本当に筆が止まるし、進行悩みまくったので。

それでも続けられたのは、読者の皆様のお力が大きかったです!

ありがとうございますヾ(*´∀`*)ノ


そして書籍版3巻が8/9(金)に発売します!

そちらも詳しい事を近況報告に書いてあるので、よろしければご覧下さいm(_ _)m

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