450.うなぎ登り〜エメアロルside
『母上に取り次いで』
『残念ながら、側妃様は明日の支度で王妃様と話をされております』
『……そう』
母上の宮に直行したものの、空振りだった。
仕方なく一旦、引き返す。
誰に告げても大事になるし、明日以降、平穏無事に過ごせる気がしない。
ひとまず明日はシュア兄上よりも先に、標的になっているロブール公女を見つけなきゃ。
けれど見つけても私が守るなんて不可能だ。
シュア兄上と同じくらいの魔力量でも、魔法の扱いは劣る。
それがまだ学園に入学していない、
そうだ!
まずは早朝に城を出て、公女を見つけよう!
申し訳ないけれど、明日は公女に自主的に隠れてもらえないか交渉するんだ!
恐らく母上が手を回してしまえば、私がどれだけ注意を促しても、シュア兄上がいる離宮の護衛を強化してもらう、なんてできない。
母上の周りへの影響力って、禁止されている魅了魔法を使ってるのかなって疑うくらい、侮れないんだよね。
下手をすれば母上が私を警戒して、明日私が城から出られないように何かしら手を回しかねない。
何より母上達の計画が万が一、失敗した時が怖い。
そもそも国王夫妻と第1王子は、魔力も多くて魔法にも秀でているんだよ?
どうやって亡き者にするのか検討もつかない。
だからこそ母上達は、私を首謀者として責任転嫁できる保険にしてそう。
もう、本当に止めて欲しい。
実は逃げの猛者っていう異名も持つらしい、ロブール公女に弟子入りしたい。
まだ13才だけれど王家の血はしっかり反映された外見の王族。
きつ過ぎる現実だけれど、母上からすれば便利な
こんな時、自分の立場がどれだけ脆くて、誰も信用できない事を痛感してしまう。
しか〜し!
私にも巻きこめる人物が1人いるとは、母上すらも知るまい!
『ジェナ!
お願い、明日私が早朝から学園に行けるよう、どうにかして!
私のせいにならない方法で!』
『……もう、仕方ないわね。
ルスお兄様と一緒に学園へ行けるか聞いてみるわ』
それが何だかんだと悪知恵が働く、私の可愛い異母妹のジェナだった。
情事云々は秘密にしつつ、母上とシュア兄上が公女を逆恨みして何かするかもしれないと伝えた。
シュア兄上のやらかしはジェナの耳にも入っていて、大事にしたくないという私の意志を尊重してくれたんだと思う。
『噂のロブール公女に会ってみたかったのよ!』
うん、きっと以前から公女の事が気になっていたんだろうね。
けれど、多分、きっと、いや絶対、このいたいけな異母兄を尊重してくれたはずだ。
まあ結局、私1人で公女に隠れるよう説得しに行くつもりだったのだけれど、ジェナが強引について来たから、本音はわからないんだけれど。
「ルス兄上……あの……」
「レジルス第1王子!」
正直に話すなら今かもしれないと思って口を開いたものの、兄上を呼んで足早に近づく人物を前に口を噤んた。
「ラビアンジェを見かけませんでしたか?
……ああ、失礼しました。
シュレジェンナ第1王女殿下、エメアロル第3王子殿下、お久しぶりです」
そう言って、話の途中から私達に気づいて礼を取るのは、ロブール公子。
「……いや、見ていない。
弟妹達に学園を案内していただけだ」
「「……お久しぶりです、ロブール公子」」
まさか当の公女の兄君の前で、お宅の妹君をうちの愚兄が孕ませる方向で狙ってますよ、なんて言えないよね!
それよりも、ルス兄上?
今、サラッと公女がいた事を隠したよね?
もちろん私としては正直、助かったよ?
口裏はしっかり合わせるから、鋭い眼光を私達弟妹に向けるのやめて?
「そうですか。
祖父母が初めて学園祭へ来るので、ラビアンジェに案内を頼もうと思ったのですが……」
嘘でしょう?!
ロブール家の先代当主夫妻も学園祭に来るの?!
今までそんな事なかったよ?!
運命の恋人達って、先代国王の存命期間中に王家を支えていた実力者!
母上達の企み失敗の確率がうなぎ登りじゃない?!
成功されるのは断固反対だけれど、私が死ぬ確率もうなぎ登り……そんなの、いーやーだー!
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