434.ベルジャンヌの感情

「……そう」

「気づいていたのか?」


 私のお顔をじっと見つめるラグちゃんには、気づかれたみたい。


「そうね、薄々?」


 思わず苦笑してしまう。

きっかけは幾つかあるの。


 1つ。

今は全学年主任として正式な形で学園にいるレジルス第1王子。

彼は学園を卒業後、何故か保健医として学園に留まっていた。


 2つ。

私のいるチームと夏前に死傷した例の3人、そしてミルクティー色の髪をした騎士科のミナキュアラ=ウジーラ嬢。

私達8人が蠱毒の箱庭に転移した事件。


 3つ。

元義妹で従妹のシエナが、悪魔を親友だと思っていた事が判明した魔法呪騒動。

第1王子が黒マリモちゃんだった事もこの時気づいて、保健医として留まっていた理由を察したわ。


 4つ。

ベルジャンヌだった前々世の私に、性別はともかく侍女として仕えていたリリ。

今は沼活動拠点である教会の教皇となっているリリは、悪魔に唆されてキメラを造っていた。

ベルジャンヌを復活させる為に。


「痺れを切らせたのかしら?」


 その全てに、ベルジャンヌが自分ごと滅したはずの悪魔が関わっている。

悪魔の行動の全てに、ベルジャンヌの因果を感じずにはいられない。


「そうらしい」

「何か動きを見せたの?」

「俺を探しているようだ」

「……ラグォンドル、自分の安全を優先なさい」


 正式ではないけれど、思わず命令してしまう。


 チラリと鬣に結んであるシュシュを確認する。

パッと見ただけでは、フワフワの鬣に埋もれてわからない。


 シュシュにかけた守護魔法を強化しておいた方が良いわね。


 手を伸ばして片手はラグちゃんの頬に添え、もう片方の手をシュシュに触れる。

そのままラグちゃんとシュシュへ、守護魔法を重ねがけしておく。


「ふ、心配し過ぎだ。

命令するのが嫌いなくせに、こういう時は行動が早いな」


 そう言ってラグちゃんが私の頬に自分の頬をスリスリ。

はあ、頬に当たるこのフワフワ感……たまらんのう。


「だって相手は悪魔だもの。

私の大事な家族に手を出すのは許さないわ」


 吸いつきたい欲求に抗いつつ、シュシュ同様、鬣に埋もれるディアの前脚にも触れ、亜空間からディアに作っておいたシュシュを装着した。

今まではディアの成長を妨げないよう、タイミングを見計らっていたのだけれど。


 ラグちゃん同様、シュシュとディア本人に更なる守護魔法を重ねがけして、シュシュが決して外れないように細工しておく。


 ラグちゃんとディアが聖獣になる前に、それぞれで関わった悪魔だもの。

どんな干渉があるか、わからない。


 それに悪魔の目的が明確になった以上、ラグちゃんこそが標的になりかねないわ。


 とはいえ今の私があの悪魔と積極的に関わる事は避けたい。


 必然的に聖獣達が危険に曝されてしまうし、ベルジャンヌだった私に深く関わった好意的だったソビエッシュとシャローナが、祖父母とは違う立場で接触してくるかもしれない。


 もちろん誓約に焼かれたくないのもある。

前々世では、リリよりも深く関わった2人だもの。


 前世を経験した今なら、2人に持っていた感情が何かだって、自覚している。


 ソビエッシュは、前世の旦那さんの弟に感じていた、家族愛に近い友愛。

旦那さんは仲良し兄弟で、彼の弟が私に好意的に接してくれていたのが懐かしいわ。


 シャローナは、私が前世の子供達に感じているような愛情。

ほっとけないし、いつも気になってしまうし、構い倒したくなっちゃう。


 そんな2人だからこそ、関わりたくないの。

だって私が転生するまでに何十年という時間が過ぎてしまった。


 きっとベルジャンヌが稀代の悪女となった事で、2人は多くの苦悩を抱える事になったわ。

立ち塞がる困難も多かったはず。


 けれどその分、育った絆もあったみたい。

孫として生まれたからこそ、感じられるの。


 そんな彼らの人生時間は、既に死んでいる人間が軽々しく関わるべきでは、決してないはずよ。


 当然だけれど王家や四大公爵家を含め、悪意を持ってベルジャンヌと接した人達や、その子孫までは知らないわ。

今世でまで世話を焼く理由もないし、中には利用しようとするずる賢い人間もいるでしょうから、触らぬ神に祟りなしね。


 ただ誰が対処するにしても、悪魔を真に滅する事は極めて難しいのは、今世になって身に沁みた。


 この世からあらゆる悪意がなくならない限り、不可能なんじゃないかしら。

それって生物全般が滅びないと難しくない?



※※後書き※※

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

ディアのシュシュをどこかで書いたような、書いていないような?

どこかのタイミングで読み返して、書いていたら修正入れます(^_^;)


本日サポーター限定公開にて、短編予定小説の続編を投稿しておりますので、サポーターの方で興味がございましたらご覧下さい。

一応明日分もあるんですが、今後ものんびり更新する感じです(^_^;)

短編(長くて四万文字)で……終わるのかは……不明?

最悪はプロット形式で略式完結……何せプロローグだけ作って投げっぱなしが、他に2作品も限定公開に存在しているのが、個人的に許せない(・_・;)

基本的に投げた小説は完結させたい……。

という事で、そんな感じの(どんな感じ?!)サポーター様向けお知らせでした\(^o^)/

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