330.今度こそ〜国王side
『先日、学生達が蠱毒の箱庭に入り、死者が3名出た事は聞き及んでおるな』
王族として許されざる愚行を犯した、第2王子の母__側妃の顔が強ばる。
『陛下、発言してもよろしいか』
『許す』
その王子に長年付き従った愚かな公子の父に、許可を与える。
実質的な加害者と被害者。
当事者達の親が非公式に集まるこの場で、まず口を開いたのは、予想通りの人物。
四公という立場においてすら、この場では身分が1番低い、加害者側のアッシェ家当主。
『主と定めた第2王子に臣下として忠言もせず、ただ付き従うだけで側近であるなどと勘違いをしたばかりでなく、その御身を危険に曝した事の罰は、私共々、如何様にも受けましょう』
騎士団長でもあるこの者は、学園内での息子の言動を把握していながら、それを是正はしておらぬ。
四公当主は、あらゆる価値観が間近にある学生の内は、基本的には自由にさせる。
学園入学前の15才で皆成人を迎える事もあり、自らの子供が四公家のみに許された公子や公女を今後も名乗るに値するか、最終的な見極めを行うからだ。
もし値せぬと判断された場合、その半数は事故か病気により、家系から消える。
残りの半数の末路を見るに、そちらの方が公子や公女として育った者にとっては、幸せかもしれぬ。
とはいえ此度は王子共々、愚行の期間も長い。
余と同様、アッシェ家当主からロブール家当主に、何度かロブール公女への面会を求めておったはず。
死亡した元公子の父であるニルティ家当主も、確かそうであったな。
結局、ロブール公女が
公女でありながら、口にするには憚られる理由により聖獣ヴァミリアと契約しておった事も、少なからず関係しておるように、今は感じておる。
『あの者の父として、騎士団長の職を辞する事も厭いませぬ。
愚息は公子として我が家紋よりあった、全ての事柄への後ろ盾を、今より即刻、無いものと致します。
無論、アッシェの名を自ら名乗る事は、今後許しませぬ。
ロブール公爵。
愚息が公女に対し、申し訳ない事をした。
公女の望む沙汰を下してくれれば、そのように対処しよう』
大きな円卓に両手をつき、ちょうど目の前となる被害者の父に頭を下げる。
『娘が貴公へ何かしら要望すれば、それがどのような事であっても、アッシェ家の存続に関わる要望でない限り、叶えると約束すれば、まあ、別に?』
ふむ……対してライェビストは、絶対に面倒がっている。
正直、アッシェ家の三男がどんな顔をしているのか、識別すらできておらぬのではなかろうか。
顔を上げた加害者の父も、幾らか引いておるな。
騎士団長と魔法師団長とは日頃から関わる事が多い。
故に余と同じく、そこに気づいたのであろう。
『お待ち下さい。
今回の件は、止められなかった臣下にも責任があるはず。
ロブール公爵、そういう事ですから、以前話していた婚約破棄の件は、今一度、考え直してくれますね』
今度はアッシェ家のたかが代えのきく公子に責任転嫁とはな。
今のライェビストのように、余もまともなため息を吐きたいものよ。
『側妃よ、ならば蠱毒の箱庭での殺害
しかしそうも言ってはおれんな。
王妃の眉根が幾らか寄っておるが、それよりもレジルスだ。
普段は無表情なくせに、今はかつて見せた事もないほの暗さを醸し出しておる。
学園在学中、悪魔の気配を感じたとして、保健医として留まったのは、本人の意志。
あれは魔法呪として悪魔がどれ程危険な存在か、身をもって知っておる。
しかし今思えば、母である王妃の生家で、あらゆる苦痛と孤独に1人耐え続ける中、ロブール公女に出会ったのは僥倖であると同時に、執着を生み、故に公女の身を案じての事ではなかろうか。
少なくともこの場に同席したのは、蠱毒の箱庭から自力で帰還し、聖獣に取りこぼされた公女をも救ったからではない。
異母弟と公女との婚約
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