243.ブラボー、厨二病〜ミハイルside
「祓いたまえ!」
「くっ……祓いたまえ!」
レジルスに続いて羽根だけの札をシエナも含めて魔法呪に全て貼りつける。
後はこのキラキラ札を……。
「決めポーズを所望しますわ!」
嘘だろう?!
忘れてた事にしようとしていたのに!
聞かなかった事に……。
「清めたまえ!」
嘘だろう?!
こいつやりやがった!
「くそっ、清めたまえ!」
すぐに後へと続く。
もちろんレジルス同様に真剣かつキリッとした顔で貼りつけた後も、まるで剣で斬りつけた後のようなポーズを保つ。
やるからには兄の威厳を見せてやる!
「ブラボー!!!!
厨二病ー!!!!」
妹は飛び跳ねてからの、感激のガッツポーズ。
今の笑顔は年相応に見える。
もしかして今までで1番の笑顔かもしれない。
心から喜んでくれたようで…………何より……だ。
俺は何かを削られていく感覚に陥りながら羞恥に震えて……あ、レジルスも仲間だったか。
目が合い、そそくさと互いにポーズを解除した。
恥ずかしがるなら率先してやらないで欲しかった。
その時だ。
__ドン!
火柱が上がり、魔法呪が赤と黒のシエナごと燃え上がる。
俺もレジルスも驚いてそちらを見やる。
「「「ぎゃあああ!」」」
2人のシエナも、魔法呪本体も悲鳴を上げて逃げ回ろうとして、足や体に貼った札がその動きを止めながら、炎の勢いを加速させ、真っ黒に炭化して火がふっと消えた。
大小3つの見る影もなくなった黒い塊が転がっているが、白いリコリスとキラキラ札には少しの焦げ跡もない。
「ぅ……ぁ……」
花の咲いていない方のシエナが小さく呻いているが、他の2つは微動だにしなくなっている。
だが次にキラキラ札から水の竜巻が現れ、炭化した3つの体を飲みこみ、砕き散らすようにその場でグルグルと回れば、水がドス黒く染まっていく。
「超強力水流の縦型洗濯機……」
ボソッと呟く妹の言葉がまた理解できなかった。
でも絶対聞き返すまいと心に誓う。
やがて札が一際明るく輝き、水流はかき消え、ドサ、と何か1つの個体が落ちた。
「ギャア、ギャア……」
赤子のような声で何かが鳴く。
上を向いて手足らしきものを弱々しく動かしている。
亀をひっくり返したかのような格好だ。
「あら」
「公女」
妹がそう言って近づこうとしたのをレジルスが止めた。
いつの間にか結界は解かれているから魔法呪の危険は去ったのか?
「危ない。
半透明の魔り……生霊が転がっている」
今絶対妹の生霊の方に話を寄せただろう。
よく見ればその何かと少し離れて半透明のシエナの上半身がうつ伏せに倒れていた。
ゆっくりと亀もどきに近づいている?
「お札を貼っているので問題ありませんわ。
ほら」
「ま、待つのだ!」
ふと妹の声に我に返って視線を戻せば、レジルスの制止も虚しく服の裾をめくって腹を顕にした瞬間だった。
華奢な腹の
あの黒い霧にも全く動じていなかったのはこういう事だったのか。
あの時の風刃が作った傷痕は残らなかったようで何よりだが……何やってる?!
背後から服の裾を掴んで強制的に正す。
「ラビアンジェ、はしたないからそれは止めなさい。
レジ……王子には刺激が強い」
「まあ、左様でしたの。
ごめんなさいね」
「……いや」
素直に謝る妹に、薄っすらと赤面した王子は目をそらす。
決めポーズの時より刺激が強かったのか。
その様子が無性にイラッとて睨んでしまった。
決してムッツリ拗らせ野郎と思ったわけではない。
妹はいつの間にかそんな俺達と少し距離を取ってうっとり微笑んでいるが、絶対碌な事を考えて……。
「BとL……」
絶対それが何を意味するかなど聞くものか。
言葉が何か不穏だ。
妹の顔は更に危機感を上乗せしている気しかしない。
しかし急に踵を返して背を向けていた徐々に弱々しい鳴き声になっていた何かに近づいて拾い上げた。
甲羅の側面、多分右肩のあたりには白いリコリスの紋が浮かんでいるのを確認する。
何故白なんだ?
そういえば赤黒いシエナに咲いていた花の位置が黒い変態の素だった保健室にいるだろうヘインズ=アッシェと同じ場所だ。
偶然にしては出来過ぎている。
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