242.コントとキラキラ札〜ミハイルside
「あんたはいっつもそうね!
そうやって何でも知ったような顔をして!
父さんと同じように逃げるばっかりだったくせに!
なのにあんたはずっと公女でいた!
それも王子様の婚約者?!
ふざけないでよ!
私は平民だと蔑まれて生きていたのに!」
シエナの感情的な叫びも大きくなる。
しかし黒い霧はそれに反するかのようにどんどんと薄くなり、あの赤黒い塊はシエナを型どっているのがわかるようになった。
「そこは肯定した事しかないから今更ね。
けれどあなたは私が望まない公女や王族の婚約者でい続けた事を理解できないし、するつもりもないでしょう?」
「当然じゃない!
うまくいけば王太子妃、王妃へと上りつめたかもしれないのに!」
「ある意味であなたにはそのチャンスがあったのは確かだけれど、遠ざけたのもあなた。
だってあの離れで起きた事は全て王家のオネエな影が報告をしていたから」
「……は?
そんな……嘘……え、オネエ?」
うん、俺もかつてはそこに引っかかった。
これまでの真面目な話が霧散しそうな雰囲気が出てきた。
「本当よ。
オネエ様が天井で同棲していた時はもちろん、定期的に来ていた時にはいつも静かに話すよう諭していたのに、全く話を聞かず、挙げ句に王子とのイチャコラな痴態まで楽しそうに話すのだもの」
オネエな影がオネエ様になった?!
はっ、待て、レジルス。
さっきまでの気遣わしげな様子はどこ行った?!
黒いオーラが見える!
魔法呪の影響じゃないよな?!
拗らせてるだけだよな?!
同棲って、お前の生家の命令で天井にいただけだぞ!
何なら天井の修繕してただけだぞ?!
「元婚約者の彼が王太子候補として相応しくないと吹聴しているかのようで冷や冷やしていたのよ?
でも良かったわ。
あなたが自分の言動は行き過ぎていたと自覚していたみたいで。
それすら自覚していなかったらどうしようかと心配していたの。
私だけに留めていたのなら特に問題なかったのね」
「だからその顔はやめなさいよ!
どうしてお祖母様みたいな顔なの?!」
「だってあなた、可愛らしいわ。
馬鹿な子ほど可愛いと言うじゃない?」
「初耳よ!
大体馬鹿だと思っていたって事じゃない!」
「あらあら、ついうっかり?」
コテリと首を傾げて苦笑する。
「でももうそんな心配は必要ないわね」
「ふん、そうよ。
私は聖獣になったのだもの。
ひれ伏して命乞いをするなら……」
「ふっ……ぷふふ……あはは、あはははは!」
突然妹が吹き出した。
「何がおかしいのよ!」
「聖獣?
ふっ、ふふふふ、わ、笑わせるから……あはは」
「なんですって!
もういいわ!
殺してやる!」
「無駄よ。
ね、アルマジロちゃん?」
「わたしのからだー!!」
まるで合図を待っていたかのように真っ赤なリコリスが赤黒い体に一瞬で開花し、シエナを模した上半身だけのシエナが羽交い絞めにした。
ん?
右肩に白いリコリスが一輪咲いている?
赤の中の白は目立つから見間違いではない。
「あなたが聖獣?
何のコントなの?
学校の中庭コントのリトライ?
もう……本当に笑わせないでちょうだい」
先ほどまでの柔らかな微笑みは失せ、冷たい目をした妹はそう言って結界から一歩踏み出す。
「悪霊退散!」
バチィン!
「「ぎゃあああ!」」
「お2人も早く!」
とか言いながら悪霊退散連呼しながらバシバシやり始めたが、いつの間に腰のハリセン握ってた?!
アルマジロとやらのシエナも痛そうに叫んでるぞ?!
いいのか?!
「悪霊退散!」
「「ぎゃあああ!」」
いいんだな?!
レジルスがやっちゃったけど、いいんだな?!
「悪霊退散!」
「「ぎゃあああ!」」
俺も続いてバシバシする。
「「「悪霊退散!
悪霊退散!
悪霊退散!」」」
__バチィン!
__バチィン!
__バチィン!
「「ぎゃあああ!
ぎゃあああ!
ぎゃあああ!」」
誰が叫んで誰のハリセン音かも、どっちの悲鳴かもわからないくらいに屋上は喧騒に包まれる。
黒い霧はもう出ていないし茎も所々叩き切れ、少し魔法呪が縮む。
「悪霊退散!
お2人は通常の札を貼ってからの、キラキラ札を!」
キラキラ札が何なのかわかってしまう自分が何とも言えない気分になるな?!
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