171.恫喝と貴族淑女のステータス〜シエナside
『けれどあの方が貴女方のように明確な意図を持って誰かを傷つけたり、身分を盾に理不尽な要求をした事はありまして?』
『……それこそ何か勘違いなさっているわ。
私も他の方達もお義姉様に注意をしていただけですもの。
それに誰も見てらっしゃらない場所では私の方がお義姉様に意地悪されておりますの。
私はお義姉様の事が大好きですけど、お義姉様には嫌われているのでしょうね』
いつも通りに物悲しい顔を作るわ。
『そう、例えば?
全て仰ると宜しいわ。
私の方から事実確認した後、ロブール公子へもご報告しましてよ?』
けれどこの女はどうして私に共感しないの?!
『そ、そこまでしろとは言っておりませんでしょう!
大体、お義姉様はどうせお認めにならないし誰も見ていない場所でしか虐めてこないから証拠もないわ!』
『左様ですのね。
でしたら貴女の虐められたという主張にも証拠がありませんから、この話は終わりましょう』
『……っ、それでかまいませんわ』
いつもなら皆私を信じてアイツを悪者にしてくれるのに、何なのよ?!
『例の加害者名簿に名のあった者達はあの方は勿論、在籍する2年Dクラスの者ならば許されると思って標的にしていたようでしてよ。
理由は貴女方の日々の言動、いえ、恫喝するのを目の当たりにして、と証言していますの』
『そんな、恫喝なんて……』
『もちろん教員達からも証言を得ております。
なにせ貴女方はあの方を貶め、蔑む時には公衆の面前で行う事に重きを置いてらした節がありますものね』
顔は微笑んでいても、目は笑っていなかった。
寧ろ怒りが垣間見える。
『そんな危ない状況なのに、あのクラスの学生達は誰1人大きな怪我もせずに学園生活を営んでいる。
それがずっと不思議でしたが、その者達はこうも申しておりますの。
学園内で彼等を故意に傷つけようとすると、必ず公女が近くに来て声をおかけになっていた、と。
そして微笑みながら何かしらの苦言を呈する、と。
それが何かは皆口を噤んでいたけれど、これもたまたまだと貴女は仰るのかしら?』
知らないわよ、そんなの。
そもそもそれが本当なら、怖すぎよ?!
え、ちょっとアイツ、何してるの?!
でも身に覚えがなくはないわ。
アイツは時々勘が鋭くて、気がついたら後ろに立ってる事があるもの。
だからアイツ以外を標的にするのは本能的に避けてきた。
無駄に目が泳ぎそうになるんだけど?!
『それ以外にもありましてよ。
その1つが昨年のあの合同卒業研究。
気に入らない貴族には服を作らない事でも有名なデザイナーの月影を、商会ごとあの研究に関わらせたのはあの方だと気づいてらして?
これもたまたまと?』
『な、に……』
貴族淑女のステータスとも言われるドレスのデザイナーと、アイツが?!
『月影だ、なんて……』
声が震えるけど、それどころではない衝撃を受ける。
私がもう何年も前から伝手を探している……あの月影と?
そしてある事に気づく。
この3人は月影のドレスをオーダーしている事で有名だったの。
しかも全員があの幸運のシュシュを事前予約して購入していた……。
私だって頑張ったのよ。
けれどお母様も含めて私の交友関係で月影と繋がる人はいなくて……。
結局今は別の有名デザイナーに頼んでいるし、パーティーにシュア様や私に誠実な男性がいれば必ず褒めてくれる。
だけどこれが羨望の眼差しを独占するあのドレスだったらと思わずにいられなかったの。
『自分は公女だと豪語する割りには、情報収集能力に欠けるのね。
それともDクラスの卒業研究などくだらないと、内容を読んでもいないのかしら?』
『目は通しておりますわ。
でも月影について一言も記載されておりませんでしたけれど?』
舐めないで欲しい。
私だって日々公女として努力しているもの。
お兄様が目を通すようにと言えば、不愉快だけどアイツが関わっていてもちゃんと読んだわ。
『まあ、ご覧になってらしたの』
ふん、目を丸くして意外そうね。
決めつけるからよ。
でも少しは鼻を明かせ……。
『なのに気づかないなんて』
途端に落胆したような顔をして、また馬鹿にしてきた!
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