159.婚約の破棄、からの解消
「まあまあ、どういった理由ですの?」
今まで話してきた事なら、ぶっちゃけ第1王子殿下なんて立場の人間が来る必要はないわ。
それはずっと感じていたの。
ずっと婚約者な孫の処遇について話がないのが引っかかっているのだけれど……。
逃げる?
でも今は心底残念な事に、逃げられないのよね。
何せ目の前の2人は一流とも呼ぶべき魔法の使い手だもの。
もちろんその気になれば瞬殺はできるけれど、さすがに前々世と今世の血縁者にそれは……ねえ?
ここは素直に聞くしかないじゃない?
「まず今回、第2王子の責任は重大だ。
謂れのない言いがかりで常にそなたを公衆の面前で蔑み続けた。
いや、あらゆる意味で教育や勉学から逃走を計るのは言いがかりではなかったが」
あらあら、何もそこを今言い直して強調しなくてもいいんじゃないかしら?
本当の事過ぎて何も言い返せないわ。
「それでもその期間はあまりに長期に渡る。
正直、王族でなくとも目に余るものがある。
いっそ異常だと言っても過言ではない。
そしてそれを目の当たりにし続けた者の一部は、公女という身分であってもそなたになら何をしても良いと思わせるようになり、そなたが所属するDクラスへの差別発言や偏見をも助長させた。
中には政略による関係である己の婚約者への暴言を第2王子になぞらえて正当化させていた者までいた。
俺の卒業後に増長した者が増えたのは、そうした身分社会の頂点たる第2王子の日々の許されざる言動が招いた背景が濃い。
そして遂には公衆の面前でそなたに直接的な暴力を振るい、怪我までさせている。
今回あの者がそなた達を助けに蠱毒の箱庭に入ったのも、言葉そのままの純粋な理由からではない。
事の重大さに気づき、己の言動の責任を少しでも軽くしようとした保身からだ」
そうね。
私達の関係はとってもドライ、というよりも関係そのものが無いに等しいわ。
なのに私の為に蠱毒の箱庭に助けに来るなんていう理由付けそのものに無理があったの。
王子の想いがどうとかキャンキャンと吠えていたワンコ君は孫の表面上の理由に騙されてしまっていたみたいね。
「そして今回の件でロブール公爵より婚約破棄の申請があった」
まあまあ、お父様ったらどういう心境の変化なのかしら?
それも解消ではなく、破棄?
「解消ではなく、破棄だったのか?」
あらあら、さすが兄妹?
同じ事を同じタイミングで引っかかるのね。
「ああ。
だがこれには側妃が異議を唱えた」
そうそう、昔から孫母は私と孫をくっつけたがっていたのよね。
普通ならとっくに向こうから破棄されていたはずなのよ?
「色々ともめた……」
何だか遠い目ね。
色々巻きこみ事故に遭ったのが窺えて、ちょっぴりお気の毒様。
「最終的には婚約の解消で落ち着いた」
「慎んでお受け致しましたわ」
「軽いな」
「まあまあ。
それは残念でしたわ?」
「待て、まだ先がある」
あらあら、ビビビッと逃走センサーが強く反応したわ。
「それは聞かなくても問題無いのでは?」
お兄様、ナイスアシストね。
私もどうしてかそれには本能的に同意よ。
「いや、ある。
聞いてもらえないと俺が……泣く」
「「……何故?!」」
泣かれるの?!
うっかり口を挟んでしまったわ。
それもまたまた兄妹揃っているのだけれど?!
お兄様、ドン引きなお顔でフリーズしている場合ではないわ!
何だかよくわからないけれど、妹のピンチよ?!
「俺としては長くそなたを想ってきたのだ」
立ち上がって近づいてくるわ。
そういえば箱庭でも昔に会った事があるような事をほのめかせていたわね。
もっと真剣に記憶を思い起こす努力くらいはすれば良かったかもしれない?!
なんて思っている間にそっと私の手を取るのだけれど……片膝をついたわね?
これってラブロマンスとかでよくある求婚のポーズじゃなかったかしら……。
「どうか俺と婚約して欲しい。
後々は婚姻を結びたい」
まあまあ、お顔の良い人がやると随分絵になるのね?
キラキラのエフェクトが見えたわ。
でも流されてあげないわ!!
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