76.手際の良い2年生グループ

「何だ、公女。

魔力の低い無才無能が俺に意見でもするつもりか。

それともその鞄の中の魔法具で攻撃でもするのか。

公女の情けない魔力では俺に魔法では勝てないからな」

「公子!」


 あらあら、随分好戦的ね。

いつでも魔法を放てるように体内の魔力を循環させ始めたわ。


 心配しなくても魔法具の方がお高いから、殺るなら無料の自前魔法で瞬殺するわよ?


 金髪組は息を飲むだけで何もしていないけれど、お孫ちゃんは警告するような声を出して腰の帯剣の柄に手をかけてしまったじゃない。


 これが一触即発という状況なのかしら?


 青春真っ盛りの仲良しグループがこれでは勿体ないわね。


 それにしても家格君もお孫ちゃんもお兄様と同い年だったわ。

という事は……これは反抗期ね!


 だとしたら……。


「まあまあ、あなた達もなのね。

それはあなた達のせいではないわ。

ホルモンの為せる技よ」

「何のこと……何故そんな生温かい目を向ける」

「こ、公女?」

 

 ふふふ、舌戦が止んで雰囲気が和らいだわ。

やっぱりこういうのって、言われないと本人達にもわからない事だものね。

教えてあげられて良かったわ。


 お孫ちゃんなんてあからさまに戸惑っているもの。

凛々しさが和らいだお孫ちゃんは、なんて可愛らしいのかしら!


 ああ、本当に、本っ当に、早く帰りたい!

せめて1人でこの滾る妄想を胸にノートに立ち向かう時間が欲しいわ!

いっそ全員引き連れて転移魔法で帰宅しようかしら?!


 いいえ、駄目ね。

約1世紀ぶりに学生らしく、今夜はキャンプするんだもの!

キャンプは青春よ!


 そうしてラルフ君を後ろに引き連れて4年生達に歩み寄り、どうしてだか緊張が高まった彼らの脇をそのまま通過するわ。


「は?!」

「「え……」」

「公女?」


 上から順に家格君、金髪組、お孫ちゃんよ。


 ほぼ同時発言に加えて同じようなお顔ね。

やっぱり喧嘩しても仲が良いのね。

素敵よ。


 このお顔こそ鳩が豆鉄砲ってやつだわ。

可愛いじゃないの。


「カルティカちゃん、蓋の真ん中に穴を開けてくれる?」

「はいっ!

時短ですか?!」

「ふふふ、香ばしさをプラスしましょう。

ラルフ君、ローレン君」

「仕上げの焼きですね。

お任せを」

「風魔法で火の調節だな」


 でも彼らより大事なのは心配顔の3つのお顔ね。

ムカデに意識を向けさせれば、途端に目が輝いたわ。

うふふ、可愛い子達。


 何だか無言で空気だけはざわついている4年生グループは無視して、私達も彼らに負けずに仲良く穴に近寄るわ。


 カルティカちゃんがまずは土で固めていた穴の蓋の真ん中に人が1人通れるくらいの穴を空ける。


 穴からは煙と共にふわりと香る甲殻類を焼いた時のような香ばしい香りが漂う。


 ふふふ、いい感じね。


「ラルフ君は火を穴全体に広げるイメージで。

ローレン君は高火力でやっちゃって」

「「了解」」


 私の意図を完璧に汲んだいつものメンバーは心強いわ。


 穴のすぐ外に行って片膝をついたうちのリーダーとサブリーダーは仲良く穴に向かって手をかざす。


 魔力が2人の手に集中する。


 煙がかき消えたから、穴の中ではきっと風と火の魔法がシンクロして炎がムカデの硬い殻を焼いているはずよ。


 あの殻、かなり硬いし分厚いのよ。

いきなり殻を焦がして炭化させるくらいの火力で焼いても、中は生煮えだったりするわ。

仮に中が煮えても殻が炭化していないと、剥がす時に身の部分がくっついて剥がすのが大変なの。


 私は気にせず殻を持って齧りつくけれど、一応後ろの4年生も入れればローレン君以外は全員貴族だものね。

品良く食べられる方が良いでしょう?


「公女、燻すか?」

「そうね。

食べきれない物は燻製にして日持ちさせれるようにして、寄付に回しましょう」

「私、土箱作ります」

「それじゃあ、僕の収納魔鞄マジックバックに出来上がれば入れましょう」


 いつも通り手際良く役割を決めていく私達。


 ふふふ、2年生だけのこのグループならこの森も憂いなく楽しめるのよね。


「待て、何を勝手に下級生の、それもDクラスが動いている」


 もちろんこれは家格君よ。


「問題ない」


 これはラルフ君。


 そうね、せめて家格君が大人しくしてくれていれば、実力不足の4年生がいても何とかなるのだけれど。



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