第73話再会、そして

 糞、どれだけの世界の因果を内包してやがる。直接的な攻撃方法がお互い無いからこそ長丁場になりやがる。


 そもそもここに時間という概念はあるのだろうか、自我を解放し何もかもを認識できない。


 だが俺はココに居る事が分かる。存在している。それを忘れてはいけない。


――どうでぇすかぁ~もぐもぐしてますぅ?


 うっさいわ■■■、つかおめえ固有名詞ねえじゃん。今更だけどよ。


――しばられちゃうんでぇ~ま、旦那様なら付けてくれていいですけどぉ?


 …………女、だよね?


――しっつれいな! ……多分? きっとメイビー?


 おめえも自信が無いのかよ……うん、【汝は女性である】。


――おっと、首から下が生えて来たよぉ~、性行為できちゃうね☆


 【汝は生命体である】、っとこれでエネルギー消費できるわ。吸収ばかりで飽和してるんだよな。


――うんうん、その調子、ゾンビーポイントの消費じゃ微々たるものだったからねぃ~


 やっぱ関係していたのかよ。情報イデアを消費することで存在が確定していく何て、マイナス存在……【邪神か何かかよ?】。


――あーいっけないんだー、タイプ・邪神になってるけどぉ? 私悪くないよね?


 …………俺は悪くない、まあなんだ、かなり助けられたし感謝してる。【我邪神也】。


――なにそれ……きゅんときたしぃ~


 お互いの位階が揃い始めたのか、存在を認識し始めている。君は君、俺は俺。


――お、私が見えて来たんじゃない? おひさ~


 軽いなおまえ、やっぱりあの時の生首幼女か、なんで目が玉虫色なの? 流行り?


――んー、この中枢コアとは別存在だしぃ~この次元世界とはまた違うとこの端末なわけよ? 旦那様が存在を消費したことで介入できたのさ。個性も生まれたのもその時でぇす。


 どれだけ存在でかいんだよ。グッ! 抵抗が激しくなってきたわ。


――がんばれーまけーるなー。ちからのーかぎりー。


 力抜けるわアホウ。





 どれだけの時間がたったのか分からない、俺は何をしているんだ。


 えっと……だれか待っていたんだっけ? 誰だ……?


 いや、阿岸……みんな……。


「糞ったれッ! はぁッはぁッ! あぶねえな。さっさと消えろ糞柱の親玉が!」


 だが介入できる要素は増えている、大地を構築。地平線が見えない。


 空を構築。突き抜ける碧き空は雲すらない。


 大気、海、惑星、宇宙、植物、太陽、そして生命を構築。


 重力が発生し大気がめぐる、日が刺し、草花が揺れる。何の音が聞こえ原始的な生命が発露する。ここは、地球。


――おーおめでとー、小宇宙を創造できたねー、これで初心者卒業!


 眼前に金髪で肌の色は透き通るように白い幼女が現れる、特徴的な玉虫色の瞳はこちらを見つめ続けている。


「口で会話しろよ、会話。もうできるんだろ?」


「まぁねーん。ほれほれ抱っこしたまえ? 待たせたのだろう?」


 しぶしぶ膝に抱えるとソファーを創造し、ゆるりと腰を据える。さらさらした金髪を撫でると心が落ち着く。その時間を楽しむかのように二人の間には会話がない。


「もうそろそろ吸収終わるんじゃにゃーい? どう? 世界を掌握する感じぃ」


「悪くないな。――だがどれだけの時間がたったか把握できないのがな……」


「ま、ここは位相がずれてるからねぇ、進んだ針は戻らない。それがこの世界の法則だよ」


「…………帰るの遅くなっちまったなぁ……」


「ま、何とかなるっしょ? その力があればね?」


 そうだけどよ、ぜってー縁切られるじゃんよ? 五年や十五年とかじゃねえよ……何億年だよ……。


 そうしているうちに掌の中には白い小さくなった柱が出現する、何かを叫び散らしているのだが聞こえない。こんなにショボくなっちまったか、親玉さんよ。


「ぷぷーっだっさ、あんだけイキリ散らしてたくせにこんなにショボくなっちゃって……ざまぁ!」


 手の中の柱を握り潰し掌握、吸収。権限は全て奪いつくした。


 その瞬間幼女の存在感が膨大に膨れ上がる。これ、マズイでない?


「やっばッ! 早く名前! 名前! 存在を確定させてッ!」


「――フラヴィ、【汝、フラヴィ・アートマン也】、そして【我、シビト・アートマン也】、【我らは不滅、永遠を共に生きる者也】」


 存在が確定され不滅存在となる。ん、なに赤くなってんだ?


「あー、そのー、いいの? 離れることも死ぬことも出来なくなっちゃったけど?」


「なにいってんだ今更。俺はそのつもりだったし、離れるつもりも離すつもりもないぞ?」


「あー、キュンと来る。ちょっと、ねえ、んーっと、襲っていい?」


「もちろんだ」


 ソファーに倒れ込む二人。他の誰にも邪魔されず存在するは創造神である二人のみ。





 安らぎも、熱い思いも感じ合い今ここにいる世界を全て自身へと内包する。世界は消え、再び無となる。


「それじゃーかえろっか」


「ああ、怖いけどな。座標特定、掌握、次元解放。――いくぞ」


 瞬きも経たずに眼前には地球……だったものが見える。


 ああ、滅びたのか、地球は。生命が存在せず、枯れ果て、海も存在しない。終末戦争でも起きたのか? それともあの肉の海に飲まれてしまったのか?


 地球に掌を向け吸収、同化する。後に残るものは何もない。


「そうか、人類は愚かな選択をしたのか。――だが一部の人間は宇宙へと旅立ったのか」


「そうみたいねー、っていうか月は? 私の権能は破壊と侵略しか産み出さないからさー使い勝手悪いんだよね」


「わかった。見て見るか」


 地球の衛星であった月には生命に溢れている。だが人類、人間は存在していない。――これは。


「フィルヴィルグッ! 生きていたのかッ! おい、返事をしろ!」


『んーだれですの? うるさいですわね。気持ちよく寝てたの……えッ! 死人さん!?』

 

「ああ、俺だこちらに呼ぶがいいか?」


『ええ、お願いしますわ。それと今までの情報を送りますわ。全ての答えはそこに』


 内なる世界にフィルヴィルグを顕現させながら情報を読み解き確認する。

 ああ、生きていたのか。彼女たちは自らを月のコアと同化させ眠っていたんだな。


 阿岸。コアを抽出、不滅存在のボディ作成。顕現開始。


「ん……ぅ、…………遅い。孫やひ孫や玄孫までは待ってたのよ?」


「ああ、すまない……今からみんなも再生するから」


「早くしなさい、ちなみにだれも浮気はしていないし、あなたをずっと待ち続けたんだから……馬鹿亭主」


 朱里、静里、三重、相倉、水無瀬、鈴、エステリ。

 そして俺の分身たち、命、恵、狭間。皆の存在が顕現する。


「あんた……まぁ帰って来たなら許してあげるわよ。大変だったんでしょ? 娘や息子が旅立ったじゃないの。また作るわよ?」


 それは大変だな……娘、息子の一族が存在していればいいなぁ……。


「おとーさん……責任取ってください。おとーさん以上の良い人いませんでしたよ? お嫁さんにしてください。遺伝子上私たちの身体では問題ありません! おかーさんもいいって言ってたし……」


 え、そうなの? まあ、倫理観突き抜けているしな……前例は作ればいいしな。――わかった、受け止めるよ静里。


「おっせーんだよッ! カピカピになってんぞ私の●●●ッ! 百回じゃたりねーぞ死人!!」


 お前…………、ああ、百回とはいわねえぞ。ぐっだぐだにしてやる。


「…………ダーリン何か言いたいことは? ん? へぇ? はぁ? まあ懐の深い嫁に感謝しなさいー。おかえりなさい、あ・な・た」


 ええ、感謝しますとも。ただいま。


「死人ッボスは強かったか! やっぱ銀河級にでかいんだよなッ! 銀河合体とかかしたの? ねえねえ!?」


 相変わらず水無瀬はバ可愛いなあ……。よしよし。


「おじいちゃん死んじゃったじゃない……でもね嬉しそうだったわ、死人様によろしく……てね。そりゃひ孫まで見れたら嬉しいでしょうね」


 王氏は逝ったか。魂は廻る。いつか会えるかもしれないな。


「お待ちしておりました我が神よ、とうとう本当の神になられたのですね……私も永遠に共にいさせて下さい」


 ああ、成り行きでな。もうエステリも不滅存在だ、時間はいくらでもある。共に在ろう。


「父上、お久しぶりです。我も子供ができました。幸せでありました」


 そうか、いい人が見つかったなら良かったよ。共にいないということは旅立ったのか。ハザマの選択を俺は認めるよ。


「お帰りなさいませ、そしておめでとうございます。私たちの祖を吸収し位階が上がったのですね。我が子も無事育ち旅立ちました、これからもよろしくお願いしますね?」


 そうか、成り行きでこうなってしまったが障害はもうない、ゆっくりできるさ。


「……おかえりなさいでぇす。待たせすぎですよぅ~子供は百人ほしいでぇす」


 そうだな百人作ろうか……それにしても大きくなったな? とても綺麗だぞ? なに照れてんだよ。


 フィヴィルグ、皆を守ってくれてありがとう。生命溢れる星になったな? 人類はいなくてもよかったのか?


「ええ、人類にはもうこりごりですわ、ドッカンドッカン戦争ばかりですもの。今の純粋な生命体の方がとても美しいですもの」


 そうか、それは悲しかっただろう。だがもうここは俺達しかいない。のんびり

すればいいさ。


「皆に紹介したいものがいる。俺と最初からいたゾンビーポイントの元凶、フラヴィ・アートマンだ。ちなみに俺の姓名だ、もちろんみんなもだぞ?」


「え、なにその紹介のしかた、まるで私が全部悪いみたいじゃないッ!」


「まあ、原点ではあるな?」


「悪意ありとみなすぅ! あ、いてッ! 靴投げないでッ! ごめんって!」


 再びみんなでこうして笑いあうことができて本当に良かった。


 ゾンビが発生してから様々な事。嫌な事も良い事も含めて、いい思い出となるだろう。

 

 まだ見ぬ俺の子供達、子孫、銀河に広がり発展していく人類。そして戦争。


 見守ることもあるだろう、介入するかもしれない。


 そのすべてを俺の好きなように生きて見せる。

 



――ゾンビーポイントを獲得しやがったな。


――夢も希望もない世界だ。まあ終末世界だわな。だけどゾンビをぶっ殺せば何でも手に入れることができるぞ? 武器も食料も――人間も。


――てめえは強くなることでしか生きられねえ。さあゾンビを殺せ、殺せ、殺しつくせ。――虐殺だ。

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