帰還してからの日々

第57話黒柱の策略

 防衛用の仮拠点にしてるビル内にはまともな家具がないようだな、指を一つ鳴らし新しい家具を並べる、嫌というほどZPを先程御馳走になったからな多少消費しても大差ない。


 真新しいソファーに腰を下ろし煙草に火を付ける。テーブルの向かいに王氏、俺の隣に鈴が腕にくっ付き膝を撫でられている、まあしばらく会っていなかったからな。


「これからどうする王氏? 現在は沈静化しているがいつまたゾンビが来るやもしれんぞ?」

 現在都市内もどうしようもない状況だ。王氏のファミリーも被害を受けているようだしな。


「都市中のゾンビや保管してある核石を死人様に提供し機体をお譲り頂きたいのです。その、後払いになりますが…………」

「……うむ、いいぞ? すぐにでも配備しよう、食料の銃器も必要なだけ言え」

「ありがとうございます……すぐに行動いたします」

 王氏と入れ違いに、廃墟で遭遇した元気な老人が入って来た。


「竜人様ッ! お会いできて光栄です!」

「おお、あの時の! 元気にしてるようだなッ! ほれ、再生剤だ、それと護身用にコレを持っておれ」

 ハンドガンに高周波ソードも渡す、そんな恭しく受けとなくとも。なんか爺さん筋肉凄くなってない? 

 再生剤に変な物はいってないよな?


「さらに精進いたします! では警備にいってまいりますッ!」

 忙しい奴だな。引っ付いている鈴を連れて倉庫に移動をする。李君が待機して指示出しをしているようだ。


「李君久しいな、頑張ってるね? 物資を出したいんだけど指示をお願いするよ」

「お久しぶりです、こちらへどうぞ」

 案内された倉庫はかなりの広さがあり、機体も数体収納できそうだ。

 空戦機を出しておこう、高所からの攻撃しないとゾンビの数がかなりヤバいからな数機だけ出しておこう、それと武装にエネルギーキューブと。

 

 別の倉庫には保存の効く食料に、戦闘兵糧、テントに毛布など被災した際の品も用意した、ファミリーの家族なども多くいたからな、市内から色々なものを回収もするのだろうけど拠点化できる場所等なかなか無いからな。


 防壁として使用している塀の場所へ行き作業している人員にも差し入れをする。かなり消耗しているようだったしな、よくあのゾンビを撃退してたと思うよ。


 これ見よがしに陸戦機をずらりと並ばせ、士気向上も兼ねる。必ず防衛をできるという気概を持って欲しい。


「我こそはという戦士にはこれに乗って戦ってもらう! 王氏に続くのだッ!」


 盛大な歓声に包まれるも、苦笑いしながら王氏が近づいてくる。


「こんな数の機体よろしいのですか?」

「もちろんだ、人員を纏めるのも、敵を挫くのも王氏に任せる。予備機も十分に用意するから登録と訓練を頼む、それと陸戦機の自爆コードも王氏に委ねておこう。鹵獲、裏切りが無いとも限らない」

「はッ! 任せていただきます!」

「もう軍隊でも撃退できそうな数だよな、もう都市掌握しちゃいなよ、都合良いだろ?」

 王氏は返事はせずににやりと悪い笑顔をする。うんうんと頷いてると真剣な顔をしてこちらに問いかけてくる。


「して死人様、鈴を嫁に連れて行ってくれませんかの。なに打算ももちろんありますとも、義父というの名の。世界で一番安全な場所であり、あれは寂しがっておりましたからな」

「……わかった、責任を持って嫁として、家族として愛することを誓う。これは結納品も送らないとな」

 カスタムされ一回り大きな空戦機にレールキャノン、宝飾品も贈呈させてもらう。


「お、おお、これはッ!」

「特別にカスタムした空戦機だぞ? 装甲も機動力も断然上だぞ。レールキャノンは強力すぎるから出していなかったが、装備させておくよ」

「ありがとうございます! ゾンビ共は任せて下され。……鈴をよろしくお願いします」

「もちろんだ」

 後ろを付いて歩いてきた鈴がぽそりと、呟く。


「……たった数日しかいなかった私と一緒になってくれるのですか?」

「なにしおらしくなってんだよ? 愛してるよ鈴。こっちへおいで」

 先程までぐいぐい来ていたのに何尻込みしているんだか。腕を引き抱き寄せると軽くキスをする。


「俺の拠点にも嫁はいるのだが仲良くできるか? ちなみにさっきの機体を操縦していたエステリも嫁だぞ? しかもダークエルフの」

「ダークエルフッ! ……まるで物語のようですね。どうか私も大切にしてくださいいね?」

 背に手を回すとゆっくり握りしめて来る、体温が暖かく、落ち着かせてくれる。

 

 この周辺を安定させるために、届く範囲で黒柱の殲滅を行いますかね。




 

 昨夜の間に空戦機を二台ほど簡易的な魔導リアクターと装甲を強化したものを作成してある。もちろんエステリと鈴が搭乗する空戦機だ安全が一番だからな。


 鈴といたしてる時にエステリも当然のように部屋に入って来るからな、驚いたがこれは価値観というか文化の違いなのか? 一夫多妻が殆どの異界ならではなのか。

 知的眼鏡の妖艶美女と銀髪褐色ボインのダークエルフ、とてつもねえ攻撃力だったよ。


 空戦機と並行に飛行しながら次の黒柱を目指していく、やはり中民黒全土に広がっているのだろうか。壊滅した都市内にも黒柱が生えてやがった、人間を素体にしたゾンビが多く、牧場みたいな計画を放棄して滅ぼしに来てるよ奴ら。


 攻撃し破壊した黒柱内には機体が入っていなかったのは、ゾンビ生産特化で低コストな施設なのかもしれない。


 陸戦機や空戦機は自前で生産できるが、材料取りやカスタムしやすいから割と必要だったんだがな。


 ちなみに確保しているZPを使いハンガー内で機動戦艦を製作中である、問題であったリアクターの製作に成功したからだ。

 大型のリアクター制御は大変らしく時間はかかっているがな、ハザマもミコトちゃんも楽しそうに製作していたよ。


 巨大な戦艦には装甲に刻印された魔導技術で防御力が俺の機体を越える勢いだ、水や光から食料生成できる機械も改造していて拠点化する気満々だな、ハンガーにずっと人を入れるわけにもいかないしな。


 通信が鈴から入りモニターに顔が表示される。


『死人、これで南方は粗方回ったと思うわ、それにしてもこの機体凄いわね。父も喜んでいたわ』

「それはよかった、それにしても生き残りが少ないな」

『それはこれだけのゾンビがいれば、ね』

「できるだけ殲滅すればいずれ避難してこれる。次行くぞ」

『了解』





 王氏の拠点を利用しながら半月ほど転戦を繰り返す。どこから話が流れたのか何度か軍が接収に来たりしたがその度に全滅させる、力無き軍に居場所などない。避難民が集まり、現在は集落のような様相と化している。


 都市内から資材をかき集め、古い防壁に繋げる形で簡易防壁も築きつつある。


「王氏、そろそろ日本に帰還しようと思う、問題はないか?」

「もちろんです、現在安定していますので、生産活動の開始も目途が付きました」

「そうか、頑張れよ都市長」


 やはりというか集う人民に強力な後押しがあり、責任者としてトップに立ったようだな。食料生産が課題だが、放棄されたままの土地をいくつか確保できている。


 流通も多少は戻り始めたからな。また活気のある都市に戻ってくれるといいがな。


 ついてくる二人と共に俺の機体に搭乗する。


「二人ともハンガーに入れば窮屈じゃないぞ?」

「旦那様の傍がいいのですよ?」

「女心のわからない愛しい人ね」

 翻訳してくれるデバイスを二人には装備してもらっているので会話が可能になっている、一人用の座席に両方からいい香りの肉感が誘惑してくる。くらくらする香りだな。


「しょうがないな、ほら、日本に帰るぞ」


 ハザマの高度を徐々に上げ久しぶりの日本へ帰国する。

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