第16話 【芳賀 美奈】の遺書

【四日目】


 お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん。

 ごめんなさい。

 先立つ不幸を許してください。

 私は、もうあと一日だってこうして生きていたくありません。

 理由は、私の書いた日記を読めば理解してくれることでしょう。

 私は、私だけが、今この島で生き残っているのです。

 嘘をついてごめんなさい。

 どうして、あんなに意地になってお金に執着していたのだろう、と改めて考えています。

 けれど、それももう終わりです。


 もう一度書きますが、何故なら今、この島で生き残っているのは私だけなのです。

 いえ、この惨状を作り上げた犯人がどこかに隠れているのでしょうが、どちらにせよ、私に残された運命は殺人鬼の手で殺されるか、もしくは自ら命を絶つかの二択しかないのです。

 とうてい、生き残れやしないと察してしまいました。


 一日、たった一日、私は割り振られた部屋に引きこもっていました。

 ショッキングなことがあったんです。

 由美さんまでもが殺されてしまったんです。


 きっとあの日記を読んでいるのなら、なんのことか理解してくれるはずです。


 私は、殺されたくない。

 殺されるくらいなら、自ら命を絶ちます。

 毒を盛られて苦しむのはゴメンだからです。

 由美さんのように、滅多刺しも嫌です。

 顔を耕されるのも、嫌です。

 ワタベのように、首を切り取られるのも嫌です。


 そう、ついにワタべまで殺されてしまいました。

 四日目の朝、つまりは今日、つい先程のことです。

 私は、外の荒れ狂う風の音で目を覚ましました。

 そして、部屋に備え付けられていた机に置かれた、彼の生首を見つけたのです。

 あまりの光景に泣き叫びました。

 けれど、誰も来てくれませんでした。

 それで、全てを察してしまったのです。

 みんな、殺されてしまったのだと。


 あのように弄ばれ、まるで小さい子供が玩具の人形にするように、壊されるくらいなら、せめて自ら死にたいのです。


 いえ、その選択肢すら犯人が用意した2択でした。

 私の部屋、その中央には昔ニュースで見た絞首刑のための、太い縄が輪っか、それを真似た物が下がりブラブラ揺れているのです。

 その輪が、とても魅力的に見えました。

 これは、この選択肢は犯人の情けなのでしょうか?

 わかりません。


 でも。


 どうか、どうか、許して。

 もう、明日まで待てないの。

 怖くて怖くて、こんなのが明日まで続くなんて耐えられない。

 仮に耐えられたとしても、私は私のままお母さん達の待つ家に帰る自信がないの。

 本当にごめんなさい、


 さようなら。


 今まで育ててくれて、ありがとう、大好きだよ。

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