王妃様にとっちめられそうになりましだか、アドと女王に助けられました
「フランソワーズ。此度のことはどういうことなのですか」
私は画面の王妃様を見た。
だめだ完全に怒っている。
ヴァンの馬鹿! なんで魔導通信を王妃様に繋ぐのよ!
私は恨みがましい視線をヴァンに向けた。
ヴァンが必死にどうしようもなかったと首を振っているんだけど……
これはちょっと無いんじゃない!
「いえ、王妃様。これには色々ありまして」
「いろいろじゃありません。貴方、フェリシーの礼儀作法の補講が嫌で逃げ出したというではありませんか! フェリシーが完全に切れていました」
ええええ!
何でそうなっている? 確かに礼儀作法の授業は嫌だけど、逃げ出したりしたことは……過去に王宮の調理場で匿ってもらった事はあったけれど、あれは小さい時の話だ。
そもそも今回私は被害者なのに!
「あまつさえ、あなたは面白そうだとアドルフを誘って魔の森の試練を受けさせたとか。どういうことですか!」
「……」
いや、ちょっと待って。どうしてそうなった? それは私は関係ないわよ!
でも、蛇に睨まれたカエルの心境で私は話せなかったんだけど……
「何を言っておられるのですか。母上。今回はフランも被害者なんです」
横からアドが声を出してくれた。
さすがアド。やる時にはやってくれる。
私の中でアドの良いイメージが最大限になった瞬間だ。
「あ、アドルフ、無事だったのですか」
でも、今度は王妃様はうるうるしているんだけど……
「当たり前です。母上。私はこう見えてもエルグランの王子なのです。そんじょそこらの試練など問題はありません」
アドは胸を張って言ってくれるんだけど、ギャオギャオが白い目で見ている。
「何を言っているのです。私がどんなに心配したことか。
それをあろうことか陛下はお前に極秘の任務を与えたとか嘘を言ったのですよ。
私が知らない間にあなたがどれだけ大変な目にあったかと思うと……」
王妃様が涙目に言ってくれるんだけど……これは絶対に不味いやつだ。
「母上。心配おかけして申し訳ありませんでした。今回は私が公爵夫人にお願いしたのです」
「なぜそのような事を? どのみちそこのフランソワーズにそそのかされたのでしょう」
「えっ、そんな」
王妃様が酷い事を言ってくれるんだけど……私はそんな酷い事はしない。
「そうです。母上、そもそもフランはその場にいなかったのですから。私を唆しようが無いでしょう」
「そうでした。フランは逃げ出していたのでした」
王妃様は納得してくれたんだけど、今度は私が王妃様の前から逃げ出したことになっているんだけ
ど。
ちょっとアド。そこも修正してよ。
私がアドをつついた。
「えっ、どうした?」
アドが私の方を向いた時だ。
「エルグラン王国、王妃殿下。此度は貴国のアドルフ王子殿下とその婚約者であるフランソワーズ様に助けて頂いたこと、感謝に耐えかねません」
女王が横から口出してくれた。
「あなたは?」
突然入って来た女王に王妃様が訝しげに聞くと
「私、このフイーアネン王国女王ライラと申します」
「まあ、フイーアネン王国と言えば旧帝国で宰相まで勤められたことがあるという由緒正しきお家柄ではありませんか」
流石、復古主義の王妃様。良く知っておられる。
それに私と態度が全然違うんだけど。
何かアイドルと言うかスーパースターに会った感じだ……。
王妃様は公国の時も思ったんだけど、どちらかと言うと古い家柄を尊びすぎなような気がするんだけど……
「いえ、そんな太古の話など、今は領民の者共ですらそのようなこと覚えておりませんのに」
「さすが古の国の王族の方は謙虚でいらっしゃいます。何を謙遜されることがありましょう。旧帝国で宰相を勤められるなど相当な家柄でしかありえませんのに」
王妃様が心から賞賛している。いつもは愛想笑いでよいしょしているのに、この笑顔は本心からだ。こんなことは滅多にないのに!
「ありがとうございます。そのように大国の王妃様に褒めていただけるなど思ってもおりませんでした。たとえ話半分にしても嬉しく存じます」
如才なく女王が
「いえ、私は本心から申しております。それと女王陛下がこの通信に出られるという事は此度は我が国のフランソワーズと我が息子がご迷惑をおかけしましたの?」
王妃様が話題を変えた。私を睨みつけるんだけど。私は何も悪い事はしていないわよ!
「いえいえ、お二人の助けなくては私の命も危うかったのです」
「まあ、なんという嘆かわしいことでしょう。古の良き家柄の女王陛下がそのような目にお会いになるとは。二人で役に立つなら何なりとお使い下さい」
なんか全然王妃様の態度が違うんだけど……
二人はそれからも延々と貴族の社交会話を続けてくれた。
私はいい加減にうんざりしたけれど、
これで王妃様の機嫌が直るのならば安いものだ。
「長々と話して、申し訳ありませんでした」
「いえ、こちらこそ、大国の王妃殿下とお話しできてこれほどうれしい事はございませんでした」
「困った時には我が国の二人を存分にお使いください」
「その時は頼りにさせて頂きます」
「わかったわね。アドルフ、それとフランソワーズ」
「お任せください」
私達は頷いた。
これで旨く誤魔化せたというのは甘かった。
「それとフランソワーズ、今回の件は帰って来てからじっくりと聞きましょう」
「……」
そう言うと王妃様は通信を切られたんだけど、ちょっと待ってよ!
これって絶対にまずい奴じゃない!
私は頭を抱えてしまったのだった。
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ここまで読んで頂いて有難うございます。
そろそろ山場です。
今夜から。こうご期待!
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