悪徳商人の独り言2 木刀女に破落戸共はやられましたが、この国でどちらが強いか思い知らせてやりました

俺は侯爵夫妻を殺したように破落戸共を使って俺はカトリーナを手に入れられると思っていたのだ。そのついでにあの忌々しいフランとかいう気の強そうな女もものにしてやると。

何なら俺がものにしてその後破落戸共にも散々おもちゃにさせても良いと。


俺は破落戸共に秘密の屋敷に連れ込んで、監禁凌辱するつもり満々だったのだ。


なのに、なのにだ。


店で捕まえたとの報を心待ちに待っていたのに、来たのは破落戸共が失敗して騎士団に捕まったとの信じられない報告だった。


まさか、あのフランとかいう女が、あんな手練だったとは思ってもいなかったのだ。


破落戸共がコテンパンにのされて、騎士団に捕まったと聞いた時は唖然とした。


それも破落戸共は俺の配下だとあっさりと自供したというのだ。


何ということだ。


これではお先真っ暗な未来しかないではないか。


しかし、あいつらの馬鹿なところは後のことを騎士団に任せてしまった事だ。


本当に馬鹿だ。俺が何年間、この国の貴族に食い込んでいると思っていのだ。


何のために、毎年夏と冬の心付けを欠かさずに騎士団の上役に配っていると思っているのだ。


俺は直ちにいつもの10倍の付け届けを上役に届けると、平身低頭お願いしたのだ。


「すこし、私の配下が暴走してしまったようなのです。私は何も襲えと言ったわけではなくて、間違いを正そうと思っただけなのです」

「何を正そうとしたのだ?」

騎士団長が鷹揚に聞いて来た。


「実はそのフランという女は平民のくせにあろうことかこの国のデ・ブリュネ男爵家の娘だと名乗っているのです」

「何だと、平民の分際で貴族を名乗っていると言うのか」

「さようでございます。とんでもない事でございましょう」

俺は騎士団長の言葉に合わせて金を包んだ袋を握らせたのだ。

騎士団長はにこりと笑うと

「本当に詐称なのだな」

「当たり前です。貴族年鑑によると男爵のアンナ様の年齢が二十歳になっているのです。なのに、娘のフランソワーズ様が十六なのは絶対に有り得ないでしょう」

俺は自信を持って言い切ったのだ。

それが正しければ四歳の時の子供になってしまうのだ。絶対にあり得なかった。

ただ、俺はアンナ自体が二十年前に功績を上げて男爵位を得たことを知らなかったのだが。それだとゼロ歳の時に功績を上げたことになってしまうんだが……


「ふんっ、そうじゃな。それで捕まえてみるか」

「詐称は下手したら絞首刑にございますよね」

「流石に詐称だけで絞首刑は無理だが、何なら、修道院送りに出来るぞ。その途中で破落戸共に襲われることもあるよな」

騎士団長は俺の考えることを良く判ってくれていた。

それでこそ騎士団長だ。


俺は取り敢えず、邪魔なフランを始末することにしたのだ。

カトリーナはフランを始末してから料理しても十分に間に合う。


付け届けがきいたと見えて翌早朝に騎士団はフランを捕まえてくれたのだ。

破落戸共は無罪放免釈放してくれた。



更に、あろうことかフランはその尋問していた騎士の一人病院送りにしてくれたのだ。

もう笑うしかなかった。貴族詐称に加えて騎士暴行罪が加わったのだ。


更に、貴族詐称を確実なものにするために、我が故国にあるエルグランの大使館の事務官を確認のために来させたのだ。そうしたら何をトチ狂ったのか、フランはその証人にまで暴行を加えたのだ。全治一ヶ月の重症だそうだ。


もうこうなればどうでも出来る。


平民のくせに貴族詐称をして、取り調べの騎士に暴行、証人にまで暴行したのだ。

罰としてはどのようなことでも出来た。


処刑したと偽って騎士団からその身柄を引き渡してもらってもいいだろう。


俺は喜々としてフランの様子を見に行ったのだった。


案内された牢獄で座り込んでいたフランは憔悴しきっているようだった。


これならば簡単にいう事を聞かせられそうだった。奴隷としてこき使ってやってもいい。


「お前は」

フランは俺を見て驚いて顔を上げた。


「何故お前が捕まっていないんだ。私達を襲わせた犯人なのに」

フランはきっとして俺を睨んで来たのだ。


「ふんっ、愚か者よな。この世で金で解決できないものは無いのだよ」

俺は笑って言ってやったのだ。

本当にこいつは馬鹿だ。俺が何年この国でやってきたと思っているのだ。高々一侯爵家の令嬢が俺に楯突けるわけは無いのだ。


何しろこの国の大臣共は騎士団長も含めて全て俺の意のままに動くのだ。


「そんな俺様に楯突くなんて本当に貴様は愚か者よな」

俺はそんなフランを見下して笑おうとしたのだ。


その瞬間だ。


俺の目の前に白いものが見えたのは。


それがフランの白い足だと気づくまでもなく、俺様は鉄格子の隙間から伸びたフランの足に蹴倒されていたのだった。

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お腹が減って元気のなかったフランの一撃炸裂。

でも、更に罰が重いものに……

続きは今夜です。







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