王弟の息子視点6 暴虐女に婚約者を蹴飛ばすついでに弾き飛ばされました

「わっはっはっはっは」

俺達は尖塔にどうにかして立っている馬鹿笑いをする暴虐女を見て唖然としていた。


こいつは馬鹿なのか?

何でそんなところで高笑いしているんだ?

俺には疑問しか無かった。


「あなた、何でそんなところにいるのですか?」

フェリシーが叫んでいた。


「フンッ、愚かな教師たちよ。このようなちゃちな所に私を閉じ込められると本気で思っていたのか」

馬鹿にしたように暴虐女は言い切ったのだ。


「な、なんという口の聞き方を」

フェリシーが切れていた。

何かいつもの暴虐女とは違うような気もするのだが。フェリシーに対してあんな強気でいるのは絶対におかしい。


毒が回ったんだろうか?

そうか、あんな馬鹿笑いするのも毒のせいだ。もうじき倒れるだろう……

だが俺の期待はあっさりと裏切られた。

それも最悪の方法で。



「まあ良い。皆のものには私の仕掛け花火をとくと味わってもらおう」

そういった時だ。壁が弾けて光の玉が一杯飛び出してきたのだ。


それは次々に爆発していく。


俺達は慌てて伏せた。


あの暴虐女、何てことしてくれるんだ!


それは次々に校舎の中に飛び込んで爆発してくれるんだけど、俺らの兵士たちは大丈夫なんだろうか?


俺が心配した時だ。


爆発は終わっていた。

いつの間にか暴虐女は塔の中に戻ったみたいだ。

もっとも壁が壊れて無くなっている。何故か少し煤だらけに見えるが、こいつ、自分の出した魔術を食らったのか? 本当に馬鹿だ。


その手元から金の玉がまた、飛び出したのが見えた。


それはゆっくりと中庭にそびえ立っている初代国王の銅像の方に飛んでいった。


ゆっくりと……


そして、あろうことか初代国王陛下の銅像の顔に激突爆発したのだ。


「えっ?」

流石の俺も戸惑った。初代国王の顔面に火の玉を爆発させるか?


これは絶対に不敬罪だ。

フェリシーとか王妃とか叔父とかの顔がひきつっている。

貴様もこれで終わりだ。

俺はニヤリとした。


しかしだ。それどころではなかった。国王の銅像はゆっくりと俺の配下の騎士たちが隠れている校舎にぶつかって行ったのだ。そして、校舎を巻き込んで次の校舎に倒れていく。

将棋倒しの要領だ。

俺達の配下千人がいた校舎が……

凄まじい大音響とともに倒れていくのだ。


跡には瓦礫の山しか残っていなかった。

俺達の夢は大音響とともに潰えたのだ。

ムカつく暴虐女の仕業によって!


「ちょっと、フランソワーズさん、これはどういう事ですか?」

呆然としていた俺はフェリシーの声を聞いて我に返った。

まだ終わってはいない。

叔父と王子2人の命さえ奪えればまだなんとかなる。

こちらにはエーリックとその妹もいるのだ。


でも、何故か暴虐女はフェリシーの声にビビっているみたいだ。

変だ? さっきと違うと俺は感じた。


「フランソワーズさん。あなた自分のやったことが判っているのですか?」

「先生、ちょっと黙っていてください」

「だ、黙れですって!」

「いっけーーーーー」

暴虐女の剣から光が走った。

それはなんとフェリシーを攻撃したのだ。後少しで躱したが。


やはり毒が効いているのか? でないとフェリシーを狙う意味が判らなかった。


「フラン、いくら日頃からフェリシー先生を恨んでいるからって、何も剣を向ける必要はないだろうが」

そこへアドルフがフランに近づいて叫びだしたのだ。


「な、何ですって!」

暴虐女は何故か逆ギレしていた。


そして、あろうことかそのアドルフに対して飛び蹴りをしてくれたのだ。


「えっ、ちょっと、フラン、いきなり飛んで来るのは良くないぞ、いくらしばらく会えなかったからって」

アドルフは全然判っていないみたいだったが……


「喰らえ!」

暴虐女の飛び蹴りはものの見事にアドルフの顔面を直撃した。

これでアドルフを手に掛ける手間が省けたとほくそ笑んだのは一瞬だった。


なんと、あろうことかそのアドルフの頭が俺の顔面に飛んできたのだ。

俺は避ける間もなかった。


「ギャッ!」

俺は悲鳴を上げてふっとばされてそのままエーリックの顔面を直撃して意識を飛ばしていた。

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