ならず者を退治しに屋敷に単身で乗り込みました
「ええええ! 何よ、これは?」
私は大声で叫んでいた。
「どうした、フラン」
慌てて、アド達が私の周りに飛んできた。
「ヴァネッサが拐われたって」
私はわざと大声で叫んでいた。
誘拐犯らは一人で来いだとか、ふざけたことをほざいている。
しかし、そんなのは私に関係ない!
私の可愛い後輩を拐うなんて、許せない!
私は完全に切れていた。
「えっ、ヴァネッサって、姉上の気にしていた子だろう」
「ジェド、クラスの女の子らにヴァネッサの今日の行動を聞いてきて」
「街に用事があるって15時30分に学園を出てるよ」
私が頼むと即座にジェドは答えてくれた。
「えっ、何でジェドが既に知っているの?」
「姉上がヴァネッサと約束していたのにいなかったから、気になって」
ジェドは嬉しい事を言ってくれた。
「流石、ジェド」
「当然のことです」
ジェドは胸を張った。
「じゃあ、既にわが家の騎士たちに探させている?」
「ヴァネッサは何か郵便で大切なものを送るためだとか言って郵便局に行ったみたいで、その周辺を聞き込みをさせているよ」
ジェドの言葉に私は感心した。
「ヴァン、私に喧嘩売ってくるような不届き者ってどれくらい王都にいるの?」
「それは義姉上を恨んでいる奴らなんて、居すぎて、両手足でも足りないよ」
ヴァンが答えてくれた。
「まあ、そうよね」
私は考えた。しかし、結論は出ない。
私はここに、来いと書かれていた地図を見る。
「郵便局の裏の貧民街の一角だな」
それを見てアドが即座に言う。
「没落した古い屋敷跡だ。潰れた商会があったところだ」
「そこにヴァネッサは捕まっていると思う?」
私はアドに聞いた。
「それは判らないが、多分、いるんじゃないか」
「義姉上。最近、その屋敷を『お涙グレマン』とかいうならず者が根城にしているという報告が上がっています。公国の出身だとか」
ヴァンが答えてくれた。
「さすがヴァン」
私はヴァンにも感心した。
「なにか知っていないか、公国からの留学生に聞いておいて!」
私はそう言うと食堂を飛び出そうとした。
「ちょっと、姉上、何処に行くんだよ?」
「来いって言うからそこに行ってくるわ」
私はジェドに振り返ってそう叫ぶと食堂を飛び出していた。
「えっ、ちょっと姉上!」
叫ぶ弟らを無視して私は厩舎に向かった。
そこには乗馬クラブの馬が繋がれていた。
私も一応会員にはなっている。
いざという時に使うためだ。
「ちょっと借りるわよ」
「えっ、フラン様」
厩舎の側にいた係員が慌てるが、無視して、私は厩舎の中に飛び込んだ。そして、一番手近の馬に蔵を付けてそのまま、スカートのまま飛び乗ったのだ。こんなのフェリシー先生に知られたら、また、怒られるの確実だ。しかし、非常事態だ。やむを得ない。
「行くわよ」
その馬に声をかける。
ヒヒーーーン
馬は嬉しそうにないてくれた。確かピーターとかいう名前だ。
脚力もあって一番乗馬クラブの中では力が強いはずだ。
いななきを残して馬が駆け出した。
私は馬に強化魔術をかける。
「ちょっとフラン」
慌てて入ってきたアドが叫ぶが、無視して駆け出す。
アドはついてきてくれるはずだ。
まあ、最悪、ヴァネッサさえ取り返せば、私一人でなんとかなる。
私はピーターを正門に走らせる。
「非常事態なので通るわよ」
私は門番をはねそうになって叫ぶ。
「ふ、フラン様」
門番は慌てて飛び退いた。
そのまま屋外に出るや、一気に王都の指定の場所に走らせた。
既に街は暗くなっていて街路灯はついているが、人通りは少なくなっている。
「どいてどいて」
そこを叫びながら魔術で強化した馬で駆け抜けたのだ。
途中で中央騎士団の騎士らに合うが、
「非常事態だから通るわよ」
叫んで通る。
「えっ、フラン様」
彼らは慌てた。
ついてこれる奴らは馬に乗って、あるいはかけてついてくるみたいだ。
しかし、私の馬の方が圧倒的に早い。
私はターゲットの廃屋敷の門を衝撃波で破壊していた。
私を止めようとした門番がいたようだが、瞬時にピーターが蹴倒してくれた。
屋敷の敷地内に入るや、ヴァネッサの気配を探す。
「居た!」
私はヴァネッサの気配をエントランスの先に感じた。
「ピーター、行くわよ!」
私は馬に叫んでいた。
馬は正面玄関に突っ込んでいった。
一瞬で扉を蹴破って中に飛び込んでいたのだ。
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