大けがをしたアルマンに友人が泣き叫びだして、礼儀作法の先生に何故か私が犯人だと決めつけられました

「アルマン、大丈夫なの?」

私は訓練施設で倒れているアルマンに駆け寄った。


アルマンは全身血だらけで倒れていた。


「な、なんとかな」

アルマンは目を開けて、何とか声を出した。


「どうすればこんなになるのよ」

私が怒りの声を上げると、


「フランソワーズ様、申し訳ありません」

傍にいた、クラリスが頭を下げてくるんだけど。


「私の癒し魔術で治せるだけは治しました」

「それは有難う。でもどうしてこうなったの?」

「すみません。フランソワーズ様。わがクラスのエーリック様がやり過ぎたみたいで」

言いにくそうにクラリスが言う。


また、あの顔だけ気障男か。


もう、許さない!

プチっと私の我慢の限界線が切れる音がした。

こうなったら、私が本気でやってやる。私が怒りの目で四方を見渡した時だ。


「キャーーーー、アルマン、アルマン、大丈夫なの?」

そこにメラニーがアルマンに縋りついて泣き叫び出したんだけど……


「えっ?」

その様子に私は頭の中が真っ白になった。

私のクラスの面々もその様子に唖然としている。


あのメラニーが、あのいつも沈着冷静なメラニーが取り乱しているんだけど、何故? 

それもアルマンに抱きついているんだけど、この二人付き合っていたっけ?

いやいや、例え付き合っていたとしても、メラニーがこんな状況になるなんてあり得ない。まだ、ノエルとかジャッキーならば判るけれど、メラニーが取り乱して男にしがみつくなんてありえないのだ……


「酷い! 私のアルマンがこんなことになるなんて」

ええええ! 本当に、メラニーってアルマンと付き合っていたの? 

でも、抱きつかれているアルマンが、どう見てもドン引きしているんだけど……


その顔も引きつっているし……


「も、申し訳ありません。メラニー様。我がクラスのエーリック様がとんでもないことをしてしまって」

クラリスが慌てて頭を下げるが、

「本当ですわ。私のアルマンがこんなになるなんて。酷い!」

メラニーが涙目でクラリスを見上げているんだけど、なんか、絶対に胡散臭い。

単純なクラリスは同情しているけれど、絶対にこれは変だ!


「学内の暴力沙汰は停学処分ですわね」

泣きながら、メラニーが言うんだけど……

いきなりとても現実的なんだけど……


「えっ、でも、これは訓練場の中の出来事ですし」

動揺したクラリスがなんとか、言い訳する。

「そうだ。そもそもそいつが挑発してきたんだ」

遠くから王弟の息子のカミーユに抑えられて引き離されていたエーリックが叫んできた。


「ああああ、なんて酷い。アルマンが平民だからってこんなことまでされるなんて。さすが、A組の皆様は人間の心がおありではないのですね」

メラニーが真柏の演技を始めるんだけど。

いや、絶対に演技だ!


私が他人事で感心して見つめていると、その足を思いっきり叩かれたんだけど。それも弁慶の泣き所だ。

「ギャッ」

私は脚を抱えて思わず叫んでいた。


「あなたもそう思うわよね。フラン」

私はもう涙目で頷くしかなかった。

覚えていなさいよ、メラニー、涙目で睨みつけるけど、メラニーはびくともしない。


「そ、そんな、確かにエーリック様はやり過ぎでしたけど、停学までは」

「そうよ。お兄様はその男にお情けで残された公国と馬鹿にされたのよ」

妹の緑頭まで言ってくるんだけど。


「そんなことで殺そうとするなんて、酷いですわ」

「そんな事ですって……」

「マドレーヌ様、落ち着いて」

叫びだそうとしたマドレーヌの口をクラリスが防ぐ。


「さすが、公国のお貴族様は、平民の命なんて虫けら同然としかお考えになっていらっしゃらないのですね」

「いや、そんな事は無いかと」

クラリスが必至に言い訳しようとするが、緑頭といい顔だけ気障男といい、絶対にそう思っているに違いないわ。


「ああん。酷いわ、私のアルマンをこんなにして、学園で殺人未遂が起こるなんて、信じられない。殿下の婚約者のフランソワーズ様もそう思われるでしょ」

メラニーの演技は更に続くんだけど、私もこれ以上痛い目に合うのは嫌なので、私は精一杯、涙目で頷いたのだ。


「まさか、クラリス様は平民のアルマンなんか死んでも良いと、公国の御曹司のエーリック様の肩を持たれるのですか」

メラニーの演技が続くんだげと、何処からか取り出した黄色いハンカチまで噛んで悔しさを表しているんだけど……


「いえ、そのような事は」

「いや、絶対にそいつが悪いぞ」

クラリスが困ったように言うのに、遠くでエーリックが叫んでそれをぶち壊していた。


「エーリック、お前は頼むから黙ってくれ」

カミーユが必死に言い聞かせているんだけど。


「ひどい。やはり、公国の御曹司は平民の命なんて虫けらいかにしか思われていないんですわ」

そう言ってメラニーが泣き出したのだ……。


「ちょっと、フランソワーズさん。これはあなたがやったのですか?」

そこへ飛んできたフェリシー先生が晴天の霹靂の言葉で叱責してきたんだけど……


いや、今回は絶対に何も関係していないから!

私は心の底から叫んでいた。




************************************************************

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

さて、フランの心の叫びは信じてもらえるのか?

次話はまた明日です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る