友人の碌でもない考えから公国の兄と決闘することになりました
翌朝も朝から晴れていた。
快晴だ。
昨日は、婚約者のアドが、なんと絶対に嫌だったフェリシー先生との悪魔の補講を、王妃様に話して無くしてくれたのだ。
そんな事してくれるとは思ってもいなくて、私はなし崩し的にアドを許していたのだ。
それに珍しく王妃様の前で、公国の夫人から私を一応ちゃんと守ってくれたのだ。
私は久しぶりにご機嫌だったのだ。
そう、食堂に行くまでは。
食堂に行くと体中傷だらけのバンジャマンらがいて私は驚きのあまり固まった。
「どうしたの? バンジャマン」
私は驚いて聞いた。
「いや、面目ない。魔術部の朝練していたら昨日の子爵家の令嬢の兄が出て来て、難癖つけてきたから対戦したんだけど、全く歯が立たなかったんだ」
バンジャマンは苦笑いして言ってきた。
「大丈夫なの?」
「俺らは一撃で弾き飛ばされたからまだましだったけれど、剣術で対抗したアルマンが、爆裂魔術で攻撃されて、脳震盪で保健室にいるよ」
「何ですって」
私はきっとしてバンジャマンを見るが、
「近くにピンク頭がいて、珍しくちゃんとヒールをかけてくれたから問題は無いよ」
「いきなり爆裂魔術をぶっ放してくるなんてどういう事なの?」
バンジャマンは平然と私に言ってくれたが、私は納得しなかった。
「いや、アルマンが手加減しなくていいと言ったんだよ」
「それでも訓練場で爆裂魔術を放つなんてどういう事なの」
許さない!
私はいきり立って立ち上がった。
「ちょっとフラン落ち着きなさいよ」
メラニーが注意してくるが、
「これが落ち着いてられる」
「ちょっと待ちなさいって」
仕返ししに行こうとした私をメラニーが強引に止める。
「あんたがまじでやると死人が出るから」
「でも、アルマンやバンジャマンらがやられたのよ」
「落ち着きなさいよ。今年も対抗戦で魔術の使用を禁止されたいの?」
メラニーの一言に一瞬私はうっとするが、
「どのみち私に使用許可が出るとは思えないんだけど」
そうだ。
絶対にまた、A組の陰謀で私は魔術が使えないのだ。
「でも、あんたが仕返ししても一方的なジェノサイドになるだけでしょ。そら見たことかと公国の奴らにあんた停学か退学にさせられるわよ」
「ええええ! それは嫌だ」
せっかく前世出来なかった高校生活を今生は送っているのだ。
こんな事で終わるのは嫌だ。
「緑頭らは絶対にそれを狙っているはずよ。そいつらの陰謀に乗って退学になりたいわけ?」
「でも、酷い目にアルマンがあったのよ」
私が少し涙目で反論すると
「それは緑頭のその兄貴にもじっくりと味わってもらわないと行けないけれど、あなたまで巻き添えになる必要ないでしょ」
「でも、どうするのよ」
私が不満げにメラニーに聞くと
「私に任せておいて。絶対にフランの溜飲が下がるようにしてあげるから」
私はメラニーの言葉に仕返しに行きたいのを無理やり抑えたのだ。
授業の始まる前にアルマンが教室に帰ってきた。
「アルマン大丈夫なの?」
私が心配して駆け寄ると
「いやあ、面目ない。完全に負けてしまった」
アルマンが頭をかいていった。
「本当にどうしようもないわね。危うくお礼参りしにフランが行って、下手したら退学にされるところだったのよ」
メラニーが言ってくれるんだけど。
「本当にアルマンもバンジャマンもでかい口叩くなら、勝ちなさいよね」
ノエルが怒って言うんだけど、
「いやあ、面目ない。あいつがここまでやるとは思わなかったよ」
二人は頭を下げてくれた。
「本当にだらしないわね」
そこへいきなり、緑頭がしゃしゃり出てきたのだ。
私が思わず、爆裂魔術を放とうとする手をメラニーが止める。
「お兄様にも勝てないのに、我が国を馬鹿にしてくれて、本当に弱い奴しかこの国にはいないのね」
緑頭が言い切ってくれるんだけど。
普通ならば私がまっさきに文句を言うのだが、メラニーが黙っていろと合図してくるんだけど。
「まあ、子爵家のご令嬢は口だけ達者なのね」
私に替わってメラニーが馬鹿にするように言うんだけど。
「何ですって、それはあなたのクラスの男達でしょう」
「そうだ。そいつらは口だけの男だったではないか」
胡散臭い笑みを浮かべた長身の男が言ってくれるんだが。
これが子爵家の息子なんだろう。確か名前は公国の跡継ぎで、なんちゃらリック、こいつも入試で男の最低点を叩き出してくれたはずだ。
メラニーの言葉がなかったらこの場で燃やしていた所だ。
「フンッ、何格好つけているのよ。その二人の男子は端役よ。端役に勝ったくらいで、威張るのは止めてほしいわ。流石にフランの所のご先祖様のお情けで生かされただけはあるわね」
「そこの女、言いたいことはそれだけか」
男が怒りに満ちた目でメラニーを睨みつけるんだけど。
私はいざという時は障壁を張る準備をした。
「ああああら。口で負けたら魔術を使うの。本当に野蛮なのね」
「な、何だと」
「野蛮なのはあなた達でしょう」
兄妹が言うが、
「口で負けたら暴力に訴えるのは野蛮人のすることよ」
「な、何を」
「お兄様!」
流石に妹のほうが落ち着いているみたいだ。
「ふん、口だけ女がいいたいのはそれだけか。口だけで魔術はからきしだと言いたいのか」
男は笑って言った。でも、顔がひきつっているんだけど。
「まさか、我がクラスにはエースのフランがいるのよ。あなた達こそ、命乞いをするのは今のうちよ。怒ったフランはドラゴンよりも獰猛なんだから」
ちょっとメラニー、ドサクサに紛れてなんてこと言うのよ!
私はメラニーにも切れた。
「ふんっ、下らん。私が負けるわけはなかろう」
兄が言うが、
「ふん、笑止ね。決闘でフランが負けるわけ無いでしょう。フランが負けたって言ったら今後はあなたたちの方が上だと認めてあげるわ」
「えっ、メラニー、そんな」
「しっ、あなたは黙って」
いきなり決闘ってフランが言っているし、まわ私が言うことはないと思うけれど、そんな条件飲めるわけがないと文句を言おうとした私はメラニーに止められた。
「それだけじゃなくて、俺達のことも様付けで呼べよ」
「ふんっ、良いわよ。でも、決闘で、フランがそう言わなかったらあなた達が私ら全員に様付けで呼ぶのよ」
「何言っているのよ。絶対に言わせてやるわ」
何故か緑頭が必死に言い募るんだけど。
「じゃあ、決闘は今日の放課後16時に練習場よ」
「判った。逃げるなよ」
「あなた達が粋がるのもその時までよ。絶対にこれからは様付けで呼ばせてやるわ」
兄妹は取り巻きを連れて笑って出ていったのだった。
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