イエクラ国王視点2 ゴリラ女を撃破することにしました

気付いたら俺は血まみれの寝室に立っていたのだ。


もうどうでも良い! 俺はやけになった。


生意気な兄を殺し、好きだった女も殺した。もうとことんやるしか無いだろう。


茨の道を歩くしか無い。


俺はそのまま王太子も殺して国王の座についたのだ。


そして、影の男を使って恐怖政治をしいた。俺に逆らう貴族を次々に投獄して殺していった。



そして、国内を手中に収めると、俺の目は国外に向いた。

丁度良いところにルートン王国があった。ここは歴史だけしか取り柄のない国なのだが、やたらプライドの高い国だ。


外務卿時代に訪問した時に散々嫌味を言われた国だ。


元々、俺自身のこの国に向ける感情は良くはなかった。我が国の王族の生き残りを匿ったと知ってからは更に悪くなった。


歴史だけが自慢の奴らに目にもの見せてくれると俺は色々と画策したのだ。


ルートン王国は魔道具開発と交易が盛んな国だ。俺は海賊を使ってその交易路を脅かしだしたのだ。

影は手の者を使ってルートン王国内にも俺のシンパを作っていってくれた。


俺はいけ好かないルートン王国に王女の輿入れと亡命した王族の引き渡しを要求したのだ。


亡命した元王女はあのサラの血が入っている。サラの代わりに泣き叫ぶ元王女を自分のものにして憂さを晴らしても良い。


ルートンの奴らは俺の配下の海賊共の暗躍に対処しきれていなかった。

ルートンも歴史だけで大したこともない。


そう考えていた時に帝国から親善の使者が来たのだ。

かの大帝国が俺に親善の使者を送ってきたのだ。

俺は有頂天になった。


帝国も海は苦手のようで、海洋国家の我が国と手を組みたいと言ってきたのだ。


そのついでにエルグラン王国から高位貴族の令嬢が留学にルートンに向かうと教えてくれた。


「護衛もなしに、あなた様の支配している海を渡るとはだいそれた事をしてくれますな」

使者は豪快に笑っていたが、


それを襲って人質にしたら、エルグランから結構身代金が取れるのではないか?

留学生を拐われたルートンの失点にも出来るし、良いこと尽くめだ。

いい女がいれば俺の妾の1人にしても良いと俺は思い、海賊共にその船を襲うように指示を出したのだ。


エルグランの奴らは交易に疎く、このあたりを航海するのに護衛の必要性を感じないとは愚かな奴らだ。

俺はそう奴らを哀れんだ。海賊共が失敗するとは微塵も危惧していなかったのだ。


しかしだ。あろうことか、最近名を挙げて俺のお気に入りの一人だった赤髪のジャックが、なんと、あろうことか逆に捕まってしまったというのだ。


俺は信じられなかった。


それもその相手がなんとエルグランの公爵令嬢だというではないか。


赤髪のジャックも何を遊んでいるのだ。奴のことだ。絶対に女を前にして油断したのだ。


本当に海賊共は頭が抜けている。


俺は影に直ちにその令嬢を捕まえて辱めるように命じた。


俺様に逆らうからだ。勲章をルートンの国王からもらって、いい気になって喜んでいるようだが、それが運の尽きだ。二度と表を歩けないようにしてやる。

俺は今回こそは成功すると信じて疑わなかった。


しかし、二度目の襲撃も失敗したのだ。


俺には信じられなかった。


相手は令嬢とは名ばかりで、ジャックと対決した時も原始人のような雄叫びを上げて船から船に飛び移って来たそうだ。


海賊共が噂で聞きつけてきたところによると、何でも魔の森で5歳の時に公爵夫妻に拾われた現地民の捨て子だそうで、性格は凶暴、とんでもないあばずれらしい。狼も殴り倒すほどの怪力であるとか。まさにゴリラ女だ。


そんな女を婚約者にしているエルグランの王太子も公爵から無理やりに厄介払いとばかりに押し付けられたのだとか。公爵夫妻も拾ったは良いもののの、扱いに困って王太子に押し付けるなど王太子もとんだ迷惑だろう。


しかし、我が国が虚仮にされたのは事実だ。


おれはそんなゴリラ女を影の男に抹殺を命じたのだ。


それだけ厄介者ならばエルグランも殺しても何も言うまい。

影の男は珍しく自ら手を下すと言ってくれた。

こいつが失敗することはあるまい。今度こそ期待して待っていればよいだろう。

俺は安心しきっていた。



ところがだ。今度はその影自身が捕まってしまったのだ。


どうなっているのだ?


もうこうなったら、やるしかない。


俺は海賊共にルートン王国の王都襲撃を命じたのだ。


俺様の意向に逆らって王女を輿入れさせてこないルートン王国にお灸を据えるために俺は百隻の海賊団を向かわせたのだ。


それだけで襲いかかれば王都もひとたまりもないだろう。


略奪し放題。女もさらい放題だ。


ついでに現地の協力者共にそのゴリラ女の抹殺を命じた。


海賊共の襲撃で混乱したルートンでゴリラ女の抹殺など容易いことだろう。


そのついでにルートンの王女と我が国の元王女も攫って来るように命じたのだ。


「陛下。王女殿下を連れてこれれば、これでルートン王国も陛下の傘下に収まりますな」

「あの生意気なルートンの奴らの顔が歪むのが今から楽しみですな」

「もっとも我らの襲撃に生き残ればの話ですが」

「あの生意気なゴリラ女も今回はイチコロでしょう」

俺は俺に忠実な宮廷貴族たちと海賊船団の帰りを楽しみに待っていたのだ。


その時だ。


外が急に明るくなったのだ。


そして、


ドカーーーーン


凄まじい爆発音と衝撃が宮殿を襲ったのだ。


凄まじい噴煙が舞い何も見えなくなった。


俺達は衝撃で地面に投げ出されていた。


「な、何事だ」

俺は立ち上がって周りを見るが何も見えない。


しかし、粉塵が去った後天井がなかった。


天井が綺麗さっぱり無くなっていたのだ。青空がポッカリと見えていた。


「へ、陛下ご無事ですか」

護衛隊長が飛んできた。


「俺は無事だが何があった?」

「現在調査中ですが、海の方から攻撃があったと思われます」

「どこかの艦隊が責めて来たのか?」

「見る限り海洋には何もないようですが」

「直ちに被害状況をまとめよ」

俺は命じていた。


このような攻撃を出来る奴などこの世にいるのか?


宮殿は上が完全に消滅。


政治犯を入れる監獄は上部の監視塔が消滅、政治犯が逃亡したそうだ。


船舶の多くが衝撃波で破損しただとか、山の上に穴が開いているだとか、あたかも天から隕石が降ってきたような有様だった。天から降ってきたのだろうか?

天災なら仕方がないだろう。


家屋の多くも損害が出ているようだ。


幸いなことに死人は少ないようだった。



「も、申し上げます」

そこに伝令が飛び込んできた。


「どうしたのだ」

「はっ、青髪のブルーからの伝言です。我、ゴリラ女の追跡を受け苦戦中。至急救援を請うとのことです」


「な、何だと他の船はどうしたのだ。百隻も出しただろうが」

「はっ、大半は沈没したそうです」

「何だと」

俺は驚愕した。

「信じられませんな。百隻の襲撃を躱すとか、ルートンの奴らは襲撃を予想していたのでしょうか?」

「そんなのは知るか!」

聞かれても俺も判らなかった。


「ブルーは現在王女を連れて逃亡中ですがゴリラ女の追跡が急で至急救援を請うとのことです」

「判った。全軍で出撃する」

伝令の言葉に俺は全軍を率いて王女の確保とゴリラ女を撃破することにした。


今度こそは生意気なゴリラ女の息の根を止めるのだ。

俺は率いられるだけのすべての船に出撃を命じていた。


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ここまで読んで頂いて有難うございます。

本日もう一話更新します。

そして、明朝で第三部完結となりる予定です。

おそらく……

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