シルビアを助けに行くことになりました
「うーん、海賊の割に弱かったわね」
砂浜に戻ってきた私は呟いた。
既に外は真っ暗になっているが、岸辺には煌々と松明が焚かれてあたりは昼間のような明るさだ。
「フラン様、凄かったです」
イネが感激して出迎えてくれたが、周りの大半が唖然としていた。
「なんか、怪獣フラゴン大暴れって感じだったよな」
「本当だな」
「誰が怪獣よ!」
呆れて言うガスペルとドミンゴを私は睨みつけた。
「いや」
「やばい」
二人は慌ててみんなの影に隠れたが、ほかの皆も二人に頷いていたし、なんだかなと思う。
海岸には大量の縄で縛られた海賊共が転がされていた。
泳ぎ着いた海賊共が戦おうとするが、海岸で待ち構えていた騎士たちが対応している。
でも、陸に上がった海賊など騎士たちの敵ではないだろう。
海賊共の一部は暗闇に紛れて逃げ出したかもしれないが、これでしばらくアルメリアも静かになるだろう。
私がそう思った時だ。
「フラン様大変なんです」
そこへ戦いの前に私が弾き飛ばしたダミアンが駆けてきた。
「どうしたの、ダミアン?」
私が聞くと
「シルビア様が行方不明なのです」
「シルビアが!」
「はい。今日は気分がすぐれないとのことで寮でお休みになっておられたのですが、パーティーの前に様子を見に行ったらいらっしゃらなくて」
「護衛がついていたんじゃないの?」
「それが護衛の女騎士を連れてどこかに行かれたみたいで」
この忙しい時にシルビアはどこに行ったのだろう?
「下町でお菓子でも食べているんじゃないの?」
私は能天気な回答をしていた。
「いや、そんな事は……」
「フランじゃないんだから」
「本当だよな」
戸惑うダミアンに、ガスペルとドミンゴの声が後ろから聴こえてくる。
私が睨みつけると二人は思わず首をすくめてくれたが。
「隊長大変です。殿下はアルメリアに連れて行かれたみたいです」
そこへもう一人の騎士が飛び込んで来た。
「何だと」
「王太子殿下が、自分のためにソニア様を諦めて、フラン様に乗り換えられたのを知って、それなら私が犠牲になるとおっしゃられたそうで」
「はっ! 何よ、それ?」
私には訳が分からなかった。
ダミアンの話によると近年アルメリア王国からの横暴が目立ってきて、シルビアをアルメリア王家の嫁にするように強く出て来たというのだ。
そして、その侍女と護衛に元王族のソニアとベルナルドも差し出せと。
王太子のフェリペはそれを阻止すべく、帝国にも楯突いた破壊の魔女の娘の私と婚姻を結ぼうとしていたのだとか。
でも、それって私の意志は全く考慮されていないじゃない!
私はムッとした。
それでシルビアはアルメリアの大使館に行こうとしてその前にカラモチャが現れて攫われたのだとか。
「カラモチャって?」
「王家の時から我が家に仕えてくれている私の家の家来で、彼がそんな事するとは思えません」
後ろからソニアが言ってきた。
「いや、彼は我らを裏切って、アルメリアについたのだ」
後ろからその兄のベルナルドが断言してきた。
「そんな、カラモチャは先祖代々我が家に忠実な家臣で」
「父がいつまでも兵を上げないから見限られたのさ」
ソニアの言葉に呆れてベルナルドが言った。
「フランソワーズ嬢、今までの数々のご無礼ここに謝ります」
いつの間にか王太子がそばに来ていた。
「申し訳ありませんでした」
そして、今度は土下座まで始めたんだけど。
ちょっと止めて欲しい。アドに次いでルートンの王太子まで土下座させていたなんて皆に知られたら何を言われることやら。
「その上、こんな事はお願いできないのだが、どうにかして妹を助けてもらえないだろうか」
「えっ、いや、あなたこの国の王太子なんでしょ。あなたが軍を動かして追いかけなさいよ」
私は当然と思われることを言ったのだ。当然まずは軍が追うべきだろう。
「それが軍船は帆を尽く切り裂かれていて、動けないのだ」
「えっ、そんな」
私は唖然としていた。
アルメリアの襲撃の前に影によってやられたそうだ。私がこの前に捕まえた影だけでは無かったらしい。
「そんな事言ったって、私も空は飛べないわよ」
あの筏にも限界がある。どこまでシルビアを載せた船が逃げたかわからないし。
「あ、フラン様。船なら、俺達の帆船ならあるぜ」
何故か都合のいいことに行きに乗せてくれた船の船長が現れたんだげど。
なんであんたここにいるのよ!
「頼む。フランソワーズ嬢、このとおりだ」
いつの間にかディオやダミアン、近衛騎士まで私に土下座しているんだけど。
ええええ! 何故皆土下座しているのよ!
ここまでされたら私も断れなかった。
「判ったわよ。やれば良いんでしょ」
仕方なしに私は頷いたのだ。
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残り少しで完結です。
続きは明日
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