【後日談】聖女視点2 絶対に悪役令嬢をサマーパーティーにて断罪してやろうと思いました

「何でこうなるのよ!」

私はクッションを思いっきり投げ飛ばしていた。


おかしい。絶対に変だ!


そう、私はこのゲームのヒロインのはずだ。なのに、全然上手くいかないのだ。いや、ゲームではモブ扱いの侯爵令息や伯爵令息とはうまくいくのだ。まあ、侯爵令息とか伯爵令息は一般平民共からみれば、本当に雲の上の人で、それを虜にできるだけで凄いと思われるかもしれないが、私はこのゲームの唯一のヒロインなのだ。モブなんて当然何もせずとも勝手に私に寄って来るのは当然なのだ。



しかし、攻略対象一番人気のアドルフ王子とは全然うまくいかない。


何故だ? 私がヒロインなのに!


王子はあろうことか、悪役として名高い令嬢、フランソワーズに付きまとっているんだけど、本来そんな事はありえない。


ゲーム上は、悪役令嬢が王子に付きまとっているはずなのに、逆になっている。それもヒロインの私がここにいるのに、王子は私なんて全く無視してくれるのだ。何故だ?


せっかく聖女の仕事に王子を付き合わせるまではうまく行ったのだ。

反省した旨を伝えるところりと王子は付いてきたのだ。ちょろいものだと思ったのは事実だ。でも私はヒロインなんだから、当然よね。


予定通りボドワンが消えて、王子に額の汗を拭かせるのに成功した。そして、小さい時からの友人のオリーブに、悪役令嬢をその場に連れてこさせて、はっきりと私達が仲良さげにしているように見せたのだ。


ここまでは完璧だった。


これで王子と悪役令嬢の仲は悪くなるはずだったのだ。

悪役令嬢が怒って私を虐めてくれたら、それこそ、教会から断罪に向けて働きかけてもらうだけで良かった。サマーパーティーでゲーム通り断罪すれば良かったのだ。


でも、そうはうまくいかなかった。


相変わらず、悪役令嬢は私を無視するのだ。

そして、Aクラスには目もくれずに、Eクラスなんて底辺クラスでなんか一生懸命やっているのだ。更にムカつくことに王子も、私を無視して、必死にその底辺クラスの悪役令嬢に取り入ろうとしているのだ。


ヒロインの私を無視するなんて・・・・。絶対におかしい。


それにプラスして、王子はそれ以降の私の慰問に付き合わなくなったのだ。どれだけ教会から依頼しても、一度付き合ったからもう良いだろうと。


なんで? 何で私が毎土曜日わざわざ貧民共のために、あくせくしなければならないのよ!



私が丁度プッツン切れている時だ。ボドワンのところに出入りする帝国の男より、誘拐の誘いが来たのは。


私を悪役令嬢が誘拐、その私を王子に救出させる。悪役令嬢の命令で慰み者になろうとするヒロインを、正義のヒーローが救出するのだ。絵に書いた救出劇、これで王子の心象もアップ。王子と私は結ばれて悪役令嬢は処刑されるのだ。


そう私は思っていた。


でも、全然上手くいかなかった。


いや、途中まではうまく行ったのだ。騎士たちに、悪役令嬢が指示して私を誘拐して慰み者にしようとしたと信じさせたのだ。


これでうまく行ったと思った。


しかし、悪役令嬢に手錠をかけさせたまでだった。


何故か悪役令嬢から指示を受けたと申告させた男が、帝国の間諜だとバレてしまったのだ。


せっかく、むさ苦しいところで我慢して誘拐されたのに、何もならなかったのだ。



私はしばらく愕然として何も手につかなかった。




しかし、私はヒロインだ。そして、最後の舞台、サマーパーティーがまだ残っているのを思い出していた。


そして、サマーパーティーにてなんとしても悪役令嬢を断罪するのだ。


私は幼なじみのオリーブを呼び出して、頼み事をした。でも、何故かオリーブは私の言うことを聞きたくないと言い出したのだ。


「あなた、この世界をもっと住みやすくしたいんじゃないの? 平民の私が王妃になれば絶対にもっと住みよい国にするわ。あの悪役令嬢が王妃になるよりも絶対に良くなるわよ」

「あんた、フラン様が悪役令嬢って言うけど、あの方、本当に悪役令嬢なの?」

なんと、オリーブは疑問の目で私を見てきたのだ。

いや、あいつは悪役令嬢なのだ。紛れもなく。何しろこの世界はゲームの世界なのだから。


「あんた、私が聖女だってわかった時に約束したよね。この世界を一緒に良くしていこうって。その私を裏切るの」

「えっ」

オリーブは私の言葉に固まってしまった。


「確かに悪役令嬢は今は良いようにみえるわ。でも、彼女は所詮大貴族様なのよ。ここを卒業したら二度と私達平民なんて相手にしないわ。今だけよ。私達に優しいのは。自分が王妃になるために人気取りしているだけよ」

私は言い切った。


「オリーブ。私はあんたとの約束守るために必死にやっているのよ。あんたが悪役令嬢にほだされてどうするのよ」

私の言葉にオリーブは絶句していた。そして、必死に説得して最後にはやっと頷いてくれた。


何なのだ。これは。本当にムカつく。このオリーブも私が王妃になった暁にはお払い箱かな。


私はそう思う自分に少しギョッとなったが、上に立つものは時に冷酷にならなければいけないのだ。



着々と断罪の準備を続ける中で、私はボドワンに呼ばれたのだ。私的にはこいつは色々使えると思っていた。何かと便利なのだ。悪巧みも冴えている。そして、その横にはいつもいる帝国の枢機卿もいた。


「ローズ様が王妃にならるために、ぜひとも帝国としても色々と協力をしていきたい」といつも言ってくれる。そう、私には帝国も後ろ盾についているのだ。


いざという時は帝国の力を借りるのも一興だろう。


私達はニコニコとしながら、色んな事を話したのだ。


そうだ。あの王子にキスされて喜んでいた悪役令嬢には絶対に目にもの見せてくれるのだ。


「いざとなれば我々共も聖女様の夢の実現に向けてご協力いたしましょう」

私は帝国の枢機卿の話にも喜んで頷いたのだった。

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