第20話 陛下に呼ばれて行くといきなり苛めの犯人だと言われました

王宮は二週間ぶりだ。というか小さいときから散々入っているので、別にどうと言うことは無いが、呼ばれた理由が気になった。


まさか、訓練場を壊したくらいではわざわざ陛下に呼ばれ無いだろう。王宮の訓練場を壊した時はさすがに近衛師団長に呼び出されたが、隣に何故か、両親がいて、『良くやった、すごいじゃない!』と私の魔力量が多いのにとても喜んでいたのだ。折角怒ろうとした師団長もその出鼻を挫かれて、更には魔導師団長と中央師団長が私をスカウトし出して、そこに反対する父が加わってそれどころではなくなったのだ。


「やっぱりピンク頭の件じゃない?」

「フランもそう思うよね」

私が言うとアドも頷いた。


「教会とか伯爵らはアドとピンク頭をくっつけたいんじゃないかな?」

「あいつら、そんな事を画策していたらぶっ潰してやる!」

何故か、アドがプッツン切れている。


「他に好きな子が出来たら、いつでも婚約破棄してあげるから」

私が婚約者の地位にしがみついて、それで冤罪かけられて処刑されるのは嫌だ。はっきりとアドに宣言しておいた。


「な、何を言うんだ!」

私の言葉にアドはとてもショックを受けたようだった。

今まで私を放っておいたのに何故ショックを受ける?

それに最近やたら構ってくるんだけど何でだろう?

でもアドの婚約者のまま、冤罪てで処刑は嫌なんだけど。


「俺は絶対に婚約の破棄はしないから」

怒ってアドが言い切った。


「えええ! 何で? だってアド、王宮で倒れたのに、皇女とイチャイチャして私の見舞いにも来てくれなかったじゃん」

「いや、それは誤解だからフラン」

「誤解じゃないって、ヴァンが言っていたよ」

「あの野郎! 判った。次倒れたら絶対にお前が起き上がれるまで枕元にいるから!」

決意を固めてアドが言う。


「えっ、別に無理しなくて良いよ!」

「無理なんてしていない!絶対に傍から離れないからな」

アドが私の顔を見て言い切ってくれた。


うーん。


どんな心境の変化なんだろう? 私には良く判らなかった。


まあ、とりあえずゲームみたいにアドがピンク頭を好きになっても、私に冤罪かけて処刑さえしてくれなかったら良いんだけど・・・

折角神様にもらった二度目の人生、冤罪処刑だと神様にも申し訳ないし、私自身嫌だ。今生は絶対に年よりになるまで生き抜くんだから。というか取り敢えず青春を謳歌するのだ!


それやこれや考えているうちに王宮に着いた。うーん、横のアドがとても不機嫌そうなんだけど・・・・。


王宮の応接室に通されるとそこには既に国王夫妻と、その前にラクロワ公爵とその娘のグレース、デボア伯爵とピンク頭、が長椅子に4人がけで座っていた。


私たちはまた、その両端の向い合せの席が空いていたが、私はこの前と同じで、ラクロワ公爵の横の席に座ろうとすると、(前は公爵はいなかったが)、ピンク頭はアドがまた隣に来るのを期待したみたいだが、アドは後ろの近衛に指示をする。

そして、何故か私の横に立っているのだ。


「えっ?、ここに座る?」

私は立ち上がろうとしたが、不機嫌そうなアドが私の肩を押してとどまらせた。


「何をしているのだ。アドルフ」

「そうよ、早く座りなさい」

陛下と王妃様が言われる。


「どうでも良いのですが、何故私とフランが離れて座らないといけないのですか? おかしいでしょう!」

「いや、お前たちは大人だし、王家側の人間だからのう」

「どうでもいいですが、次から離れた席を用意していたらそのまま帰りますから」

アドが怒って言った。

えっ? 今までそんな事を気にした事もないのに!、アドはどうしたんだろう?



「そこはそんなに気になるのか?」

陛下も驚いておられる。そうよね。今までと違うから驚かれますよね。


「気になるのです。母上も判って頂けましたね」

アドが文句を言っているうちに座席が動かされて私の横にアドが座った。というか、これでもかっていうくらい私の傍に席をくっつけようとするのは止めてほしいんだけど。


「で、伯爵、わざわざ私達を呼び出したということは、この前の貴公の養女の不始末に対しての謝罪なんだろうな」

アドはめちゃくちゃ不機嫌そうに言った。


「えっ?、いや殿下」

伯爵は慌てた。そんな事は全く考えていなかった顔をしている。


「そもそも、伯爵の教育がなっていないのだろうが。婚約者でもないのに私にベタベタくっつくわ、私を名前呼びするわ、どうなっているのだ!」

「まあ、アドルフ、ローズさんもまだ貴族に慣れていないから」

「母上。平民でも婚約者でもない男にくっつくの娼婦くらいですよ」

「で、殿下、酷いです」

アドの言葉にピンク頭はお得意の泣きに入った。


「そ、そうよ、アドルフ、その言い方は酷いのではなくて」

王妃も慌ててアドルフを責めた。


「何も酷くないですよ。事実です。事実! 同じ学園の平民達もはっきりそう言っていましたよ。平民を貶めるなって!」

今日はアドが強く言ってくれている。まあ、そこは事実だからちゃんとしてほしいとは思うど。


「まあ、アドルフ。ローズ嬢はまだ貴族として慣れていないんだ」

陛下はまだまだピンク頭の味方だ。


「でも、娼婦の真似事する必要はないでしょう」

「いや、まあ、それはそうだが、ローズ嬢は親愛の情を持ってだな」

「娼婦の真似事をするんですか」

アドがきっとして陛下を見た。


「いや、判った。ローズ嬢、今後はできる限りアドルフにベタベタするでないぞ」

「私だけではなくてすべての男にです」

「婚約者にもですか」

泣きながらローズ嬢が言った。


「いや、婚約者ならば多少は許されるじゃろうて」

「でも婚約する前はくっつくなよ」

アドが突っ込んだ。


「判りました。善処します」

善処かよ、思わず突っ込みそうになったが、皆それで黙ったので、私も黙っていることにした。


「で、デボア伯爵。今日の要件を」

国王がため息をついて言われた。

「そう、実は今日ご相談に上がったのは、娘がどうやら虐められているようなのです」

伯爵が言うが、私はピンク頭の言動が悪いのではないかと思ってしまった。婚約者でない男たちにベタベタするわ、元々自分も庶民なのに、伯爵令嬢になった途端にその庶民を貶めたりしていたら流石にみんな怒るだろう。私はそう思ったのだが、まさかそれが私に関係しているとは思ってもいなかったのだ。


「それも、言いたくはないのですが、ルブラン公爵令嬢が、主導されていると聞いているのですが」

ええええ? デボア伯爵の言葉はまさに青天の霹靂だった。

どういう事だ?

私には全く覚えがないのに!

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