第16話 聖女が花束をめちゃくちゃにやったと思うんだけど、確証がないので許してやったら、私がやったことにされてしまいました。

部屋中に、私が初めてアドから貰った花束が無惨に散らばっていた。


私はその様子に呆然として立ち尽くしていた。


「な、なにこれ」

入ってきたクラスメートも驚いて立ち尽くす。


「ちょっと、フラン、大丈夫」

メラニーらが私のところに慌てて駆け寄ってきた。

「えっ、いや、なんか教室がめちゃくちゃ汚れちゃったね」

私は何言っているか判らなかった。


初めて、アドから貰った花束なのに、初めての花束だったのに・・・・

気付いたら私の目から涙が出てきていた。

私はメラニーに抱きついて泣き出してしまったのだ。


「ちょっ、ちょっとフラン」

メラニーは慌てて私を抱きしめてくれた。


「メラニー、アドから・初めて・初めてもらった・花束だったのに・めちゃくちゃになってしまったの」

私もここまで動揺するとは思ってもいなかった。でも、涙が後から後から流れてきたのだ。



「一体どうしたのですか。これは」

そこに怒った表情のローランド先生が入ってきた。


「フランソワーズさん、これはあなたがしたいたずらですか」

先生が泣いている私を見て私がやったと決めつけてきた。まあ、いつものことだけど。


「先生。その言い方はないんじゃないですか」

メラニーが私の代わりに怒ってくれた。


「そうです。先生も女なら、婚約者から初めてもらった花束がどれだけ大切なものか判るでしょう。それをこんな風にされたら普通取り乱すして当たり前ではないのですか」

それにノエルが続いてくれた。


「えっ、これはフランソワーズさんが殿下から貰った花束を教室にほっておいたら、教室へ帰ってきたらこうなっていたということですか?」

何か、殿下からもらった大切なものを置いておいた私が悪いみたいな言い方だったが、事実は事実だ。


「そうです」

私は頷いた。


「絶対にれはあの偽聖女がやったのよ」

ノエルが言った。

「そうだよな。いつも殿下とフランの邪魔しているし」

「あの、ピンク頭に違いない」

みんな、憤ってくれた。


「ちょっとみなさん。待ちなさい。証拠もないのに、他の人を疑うのは止めなさい。それに相手は聖女様なら尚更です。聖女様は清らかな人なんですから」

先生が聖女の肩を持つ。まあ、確かに先生としては聖女を信じたい気持ちも判るけど。私もあのピンク頭の性格を知る前はそう言う反応だったと思うけど、知ってしまった今では中々頷けないが。


「先生。それは間違いです」

「そうです。少なくともあの女は清らかな心なんて持っていませんよ」

「そうです。自分が伯爵家の養女だって自慢してましたし」

「殿下の婚約者でもないのに殿下にベタベタくっついていました」

「絶対にフランのことを逆恨みしてやったに違いありません」

クラスメイト達はもうピンク頭を犯人と決めつけている。



「皆さん。落ち着きなさい。そうは言っても確実な証拠はないのでしょう? 証拠もなくて人を疑ってはいけません。そう思うわよね。フランソワーズさん」

先生も必死みたいだった。そらあ、聖女が嫉妬から犯罪まがいなことをしたなんて広まると聖女のイメージもだだ下がりだし、そんな事が学園で起こったとなると学園のイメージダウンにもなる。


「はい。そ、そう思います」

私はやむを得ず先生に頷いた。


確かに疑わしかったが、ピンク頭がしたという証拠はないのだ。それにあの目立つ容姿がこの離れたクラスまでくれば、目撃者がいるはずだ。こんな状態にするには魔術でも使わない限り5分くらいはかかるだろう。ピンク頭は昼食時間に私達の前に出てきたのだから、その時間の前後でやるのはなかなか難しいのではなかろうか。


でも、アドからもらった初めての花束だったのに・・・・


私はウジウジとしていた。


皆も不満そうだったが、決定的な証拠は出てこなかった。


皆手伝ってくれたので、花束はすぐに片付けられた。でも、私のアドからもらった初めての花束は、ほとんど鑑賞すること無くゴミ箱行きになってしまったのだった。


そんな中、私がもらった花束が気に入らないのでそれを教室中にぶち撒けて、聖女がやった様に見せかけたという、悪役令嬢フランソワーズばりのとんでもない噂がまことしやかに流れ出したのだった。

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せっかく許したのに犯人にされてはたまったものではありません。フランは悪役令嬢として、処刑へ一直線なのか。続きが知りたいと思われた方はぜひともフォロー評価等お願いします。

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