第2話 入学式で身分を隠して無理やり友達を作りました

なんやかんやで春休みも終わり私は王立学園の中等部から高等部に今日から上がる。


まあ、貴族のトップに立つ公爵家令嬢で、第一王子の婚約者なのだ。下に侮られるわけにはいかない。


と言うよりも、ゲームの悪役令嬢に転生してしまったのだ。どうしようと、春休みの間悩みまくった。


私なりに・・・・


そう、私なりに頑張ったのだ。

でも、ゲームは途中でいやになってやめてしまったし、ゲームの内容も良く判っていない。

私は頭を抱えてしまった。こんな風になるならもっとちゃんとゲームをやるべきだった。と後悔したけど今更どうしようもなかった。


ゲームでは聖女様を苛めて、断罪されるのだ。聖女が婚約者の第一王子と仲良くなってそれに嫉妬して、苛めるのだとか。


うーん、元々、王妃なんて私では無理なのよね。

王妃教育もかったるいし、それよりは余程騎士団に入って戦っていた方が良い。あの馬鹿の面倒見るのも疲れたし、聖女様に、のしつけてあげたいくらいだ。


ということで、私はなにもしないことにした。

そんな事を考える時間がもったいないのだ。折角今世は健康なのだ。前の世界ではほとんど学校にも通えなかった。でも、今回は通えるのだ。友達をたくさん作って、有意義な青春を満喫するのだ。


この学園は制服があるので公爵令嬢と言えども見ただけでは判るまい。前世は身分差別なんかなかったし、私は身分に対する差別なんか全然無い。良い子がいたらどんどん友達になろうと、意気込んで入学式に挑んだ。


入学式はクラス毎に分かれるが自由席みたいで、わざと最後の方に行って、適当なところに潜り込んだ。だって前もって座っていたら、貴族の子達に見つかって公爵令嬢だと判って、平民の子らに避けられたら嫌だもの。


赤い髪の女の子と青い頭髪の女の子を見つけた。間が空いている。三人揃えば青黃赤で信号機みたいじゃない! 早速私はその間に潜り込んだのだ。

「すいません。ここ空いてますか?」

「ええ、空いてますよ」

青い髪の女の子の方が取っつきやすそうだったので、その子に声をかける。


そして座ろうとした時だ。横の赤い髪の女の子が驚いてこちらを見た。見たこと無い子だったけど、貴族の子だろうか?

私が知らないと言うことは低位貴族の子だろう。


でもその子の口が「なんで悪役令嬢が」って言っていたように思うのだけど気のせいだろうか?


ここは私を知っている子じゃなくて知らない子と仲良くなるべきだ。

早速その子に話しかける。

「私はフランソワ、フランって呼んでね。あなたは?」

「私はノエル・ハーベイ。宜しくね」

よし、言わせた。これでもう絶対に敬語は話させない。中等部の時は最初に失敗したのだ。教師が最初にバラしてくれたせいで、皆にバレてしまった。皆私の身分知ってからは絶対に敬語だった。だからばれないうちにできるだけ友達を作るのだ。今回は先生たちにもやんわりと釘を刺しておいた。私の身分バラしたら、国外に飛ばすと。これでうまいこと行くはずだ。絶対に。


「あなたは?」

そのままの勢いで赤い髪の子にも言う。勢いが大切だ。

「私はメラニー・バロー、男爵家の者です」

私は思わず舌打ちしそうになった。なんで敬語でしゃべるの? 折角フランクに話しているのに!


「えっあなたの家バロー商会経営してるの?」

しかし、ノエルはそこではなくて別のところに引っ掛かったみたいだ。


「そうだけど」

「すごいじゃない。今、庶民に人気の化粧品とか売り出しているバロー商会でしょ」

「ええまあ、そうだけど」

「えっ何々、バロー商会ってそんなに有名なの?」

私は良く判らないので聞いた。


「王都ではすごい人気なのよ」

「そうなんだ。今度案内してよ!」

私は良くわかなかったが今後のためには絶対に一度は行って見ようと思ったのだった。


「えっ、いや、あなた」

「メラニー、宜しくね」


メラニーが余計な事を言いそうになったので

「わかり」

「判ったわ。私はフランよ」

メラニーが話そうとするのを強引に握手して直させる。


「フラン様」

「フラン!」


「えっでも」

「学園は全て平等なのよ!」

私は言いきった。


「それよりも私達三人揃ったら青黄赤で信号機みたいじゃない?」

メラニーは私が言った瞬間、こいつ馬鹿じゃないって目で見てきた。生意気だ。でも次のノエルの一言で私は失敗したことを悟ったのだ。


「信号ってなに?」

そうだった。この世界には信号が無いのだ。私はすっかり忘れていた。


「えっと」

私はどう言い訳しようかと必死に考えようとしたときだ。




「皆さん静粛に」

先生の声で助けられた。

しかし、そこには見たくもない、フェリシー・ローランド男爵夫人が壇の真ん中に立っていたのだ。


「げっ」

私は目が点になる。フェリシーは私の王宮での礼儀作法の先生で、出来ない私はいつも苛められていたのだ。王妃様に次いで苦手だ。


それが何でここにいる?


「皆さんは紳士淑女なのです。静かにする時にはしなさい。特に一年生。今年は一年生の中には第一王子殿下の婚約者もいらっしゃるんです。礼儀作法マナーが、恥ずかしくないように宜しくお願いしますね」

あのばばあ嫌味たらしく、どうせ、礼儀作法マナーが私はひどいですよ。私はフェリシーを睨み付けていた。許されるなら思いっきり舌を出したかった。そんな事したら後が怖いので止めておいたが。


「へえええ、この学年に第一王子殿下の婚約者がいらっしゃるんだ。どこにいらっしゃるんだろう?」

キョロキョロノエルがするので、

「ほんとにどこにいるのかしら?」

と周りにガンをとばしながら私も周りを見渡した。


メラニーは呆れた顔をして私を見ていた。

絶対にこいつは何か知っている。信号にも動じなかったし。後でじっくりと問い詰めねば!私は決心したのだった。


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