Case.1 探偵なのに盗むんだゆ ③

「良成様。それはそうと、今夜はミッションの日でございます」

「分かってるよ。もうそろそろ前もって何する、とか教えて欲しいんだけど」

「ふーむ。それではやま田様の大切にされているサプライズ、とでもいいましょうか、それがありませんので」

「だよねえ」


 やま田は秘密とか驚きとかいうワードが大好きだ。

 これは宇宙人だからとかではなく、あいつの個性なのだと思う。

 どちらかというと、事前に色々なことを知り、前もって心身の準備を整えたい俺としては、最悪としか言いようがないのだが。


「良成様は超大型豪華客船にでも乗ったつもりで、どんと構えて頂ければ問題ございません」

「それって氷山にぶつかって沈没しませんかね?!」

「はっはっは、その時はその時。このヨーグル、良成様の命をお守りいたします」

「ヨーグルさぁん……!」

「ボクもお守りするゆ!」


 突然ヨーグルの後ろからにょき、とやま田が顔を出す。

 いや、いつの間に。というか。


「……やま田には守られたくないなあ」

「えー、ヨシナリはいざという時、たてに出来るし、それまではお守りしたいゆ」

「いざという時はお守りされないのかよ」


 やま田の思考回路は分からない。

 ともあれ、ここは、最終手段しかない。


「さて、と。俺はちょっとお腹が痛くなってきたから、今日のミッションには参加出来ない。足手まといは作戦にとって百害あって一利なし、マイナス要素だからな。本当にごめん、来週には治ると思うからさ、次は頑張るよ。それではみなさん、さよう」

だまるゆ」


 やま田はいつの間にか手に持っていた謎の宇宙的小瓶こびんスプレーを俺に吹きかけた。

 急激に意識が遠のく中、俺はいつものように、目が覚めたら南国のリゾートでスローライフキメてたらいいな、と願い続けるのだった。

 ま、一度も叶ったことがないんだけど……も……ね……。

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