腐った歪み

藤川 航明

1 元死刑囚 磯部謙三の生い立ち

ガシャン!!

「650番、出ろ!!」

(あぁ…この時が来たか)

俺は、磯部健三いそべけんぞう。死刑判決を下されて今、それが執行される為に看守に付き添われながら処刑場に向かうところだ。

だが、勘違いしないで貰いたいのは俺は冤罪の罪に着せられてこうなってしまった訳だ。

元々俺は、ごく普通の何処にでもいる普通の会社員だった訳なのだが、ある時を境に、その普通の平凡な生活が崩れ去ってしまったのだ。

時は遡り、高度成長期の待っさ中に俺は地元の田舎から大学進学の為に上京した。

だが、その頃は学生運動やらで波乱な時代でもあり、ビル爆破やら大学占拠やら物騒な時代でもあった。

俺は、げんこつなどの多少の暴力なら容易に大丈夫だろと言う考えだったが、理不尽な暴力や罵声は筋が通ってない事は大嫌いな考えだった訳で、それらも興味は無く、ただ生活が貧しいだけの勤勉してるだけの大学生だった。

そして大学卒業後、大手商社に入社して両親からお見合いを進められ、そこで知り合った女性と婚約を前提としてのお付き合いを始め、順風爛漫な人生を歩む間近にそれが崩れさる事となった。

ある日の朝、仕事に向かう為に身支度を整えて家を出ようとしたその時だった。

いきなり玄関から数名の男が入ってきて、俺を取り押さえながら逮捕状を突きつけて俺は手錠を掛けられ連行された。

どうやらその男達は警察だった様だ。

んで、取調室に連行された俺は何の事かさっぱり分からないまま、異常なまでの取調べを受けた。

理不尽な罵声と暴力を喰らいながら俺は、話の流れが読めてしまった。

事の発端は、ある数日前に仕事の営業先で伺ってた先で殺人事件があって、俺もそれは後日にテレビやラジオののニュース、新聞等で知っていたがまさか自分が容疑者にされてるとは予想もしていなかった。

俺は当然、営業で伺ってただけでそこの会社の人に恨みがあった訳でも身に覚えも無く、その事を正直に話しただけだったのだが「お前がやったんだろ!!」「正直に話せ!!」等の罵声を浴びせられ、理不尽な暴行を刑事からやられた訳でそれが数日間続いても耐えられた。

だが、ある日に俺が収容されてる留置所に一通の電報が届いた事で、俺の心が壊れてしまった。

それは、俺の親からで「モウレンラクシテクルナ ヒトゴロシノハジシラズメ」と言う内容の物だった。

この内容はまさしく青天の霹靂だった。

当然、殺人犯と婚約してたって言う事は世間の目から冷たい態様される訳で、婚約も破綻となってしまった…。

この地点で俺は、全てを失い、深い絶望をしてしまい、その後の取り調べで本当はやっていないのに罪を認めざる負えなくなった。

そして、それから数年経った俺は死刑判決を言い渡された。

当然、清廉潔白の無実な訳で担当の弁護士は上告しようと提案してくれたが、俺はもう誰も信じられず全てどうでも良くなった訳でそれを断り、拘置所に服役する事となった。

それから20年近く経った今、俺はその時を迎え目の前には豪華な食事が置いてあったが、俺はそれに手をつけず、タバコ1本を貰い一服した後、看守長から「最期に言い残すことはあるか?」と聞かれたので俺は、

「あなた方に恨みはありませんが、私を陥れた人間全員道連れにしてやるから覚悟しとけ、と伝えといてください」と話し、その後目隠しと口を布で塞がれそのまま首に縄をかけられた後、ガシャン!!と言うすごい音と共に、落とされるような感覚が残ったまま、その生涯を終えたのであった…。

来世ではマシな人生を歩みたいと思いながら…。

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