第102話
2人ともいきなりのことによくわかっていなそうだが、とりあえずは後ろについてきているので良しとしよう。
できるだけ人が集まってくる前に邸から出たいのでとりあえず壁に当たったらドカンと吹き飛ばして、壁に当たったらドカンと吹き飛ばして進む。たまに力が篭りすぎてしまって崩れたりもしてるが気にしない。隷属の首輪のことが公になったらこんな邸がくずれるくらいのことは些細な問題になるのだ。
1階に出るとダルトン邸で雇われてるらしき屈強な男達が入り口を閉ざしていた。
「そこをどいてください」
「お嬢ちゃん、おとなしく上に戻んな」
男達は退く気がないどころか、こちらを完全に舐めてかかっている。ニヤニヤとした顔がうざい。
「流石に殺したらまずい……よね?」
聖女に任命されてすぐ大量殺人で逮捕なんてごめんである。
「あー? お嬢ちゃんが俺たちを殺すだと?? おい! お前達聞いたかー??」
男達は馬鹿にしたように「怖いよ〜」などと言って笑う。
イラっときたので扉もろともすべて吹き飛ばすことに決めた。
たっぷりと魔力を練り上げ、大きな風の球を作っていく。
風の刃では吹き飛ばすだけではすまなくなってしまうので、今回は風の球だ。
すっぽり私が入れるくらいの大きさになると男達も異変を感じて逃げようとするが、もう遅い。
「えいっ、【エアバレット】!」
男達が聞いていたらエアバレットって大きさじゃねえー!! と言いそうな仕上がりだが、誰がなんと言おうとこれはエアバレットだ。
ひょいっと男達に向かって放り投げると、男達を吸い寄せ吹き飛ばし扉まで突き破り空へと消えていった。
「んなっ! なっ、なな、なん!!」
なんなん聞こえ後ろを振り返ると、追いついたらしいダルトンがボロボロに吹き飛んだ扉を見てアホヅラを晒している。
「……ッリアっ! オレリアッ!」
名前を呼ばれて振り向くと、ネージュに乗ってこちらに向かってくるウィルフレッド様がいた。
やばい……。壊しすぎた??
ダルダルのダルトンとはいえ、この国の枢機卿だもんね……??
「ご、ごめんなさい……。やりすぎまし「心配したんだぞ!」
ネージュから降りてきて私の肩を掴んだウィルフレッド様の顔は真剣そのものだ。
「あ……、ごめんなさい」
「強く言ってすまない。本当に、心配だったんだ。あぁ、心臓に悪い……」
そうこうしているうちに、聖騎士団もあのピカッピカの鎧をカチャカチャといわせてやってきた。
はぁ、これでどうにかなるはずだ。
「しらんっ! 首輪なんてしらん! お前の言うその隷属の首輪は一体どこにあるんだ!」
あれから宮殿に場所を移し、今回の騒動についての話し合いが行われた。
もちろん、ダルトンは隷属の首輪について認めない。地下室もだいぶ崩れたし、隷属の首輪も手元にないし、しらばっくれるつもりだろう。
「教皇聖下、誤解なのです。聖女様は混乱なさっている。そうだ! そこの2人に騙されているのです!」
そう言ってクラーラとディックを指差す。
「教皇聖下、ダルトン卿。隷属の首輪ならばこちらにございます」
腹が立つのでそう言ってダルトンの目の前にアイテムボックスから首輪を取り出す。
「んなっ! ……しらない! しらないぞ! これが私のものだという証拠はどこにあるんだ!」
まだしらばっくれるつもりなの!? でも、たしかにダルトンの物だという確かな証拠はない。ディックから外す時解錠してしまっているので、今はまっさらな状態だ。
「ほら、証拠もない! 聖下、聖女様を一度部屋へとお戻しください。もう一度、落ち着いてから仕切り直しましょう」
そんな時間を与えたら、ダルトンはその間に証拠を隠滅するだろう。
ここでなんとかしなければ、クラーラもディックも教国では暮らせなくなってしまう。
「聖下、さぁっ!」
「お黙りなさい」
ダルトンが騒ぎ立てるのを遮るように、小さな、けれども凛とした声がホールへと響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます