第71話
帝都には1度皇太子殿下と騎士団長と来ているから、ノアとネージュがいても門もすんなり通れたし、王宮までもすんなりこれた。
王宮の門を守る騎士さんたちも私を覚えていたのか手紙をだしたらすぐに通してくれた。
メイドさんに案内されついていくと、前回と同じ豪華な部屋へ案内される。
「こちらでお待ちください」
前回ノアとネージュがお菓子を何度もおかわりしたからか、今回はお茶と共に最初から大量のお菓子が運ばれてきた。
「んおお! 気が効くではないか!」
ノアとネージュはお菓子がテーブルに出されると同時にガツガツと食べ始める。
ちょっと! お菓子のカスこぼさないでよー!!
部屋で待つこと50分。皇帝陛下が皇太子殿下と宰相様と騎士団長を連れて部屋へと入ってきた。
「いや、戻ったばかりなのに呼んでしまってすまないね」
「いえ。皇妃様に何かあったのかと心配しておりました」
そういうと皇帝陛下はニコリと笑って皇妃様の様子を教えてくれる。
「ああ、そうじゃないんだ。皇妃はまだベットからは動けないが、少しずつ回復しているよ」
ほっ。皇妃様に問題がないならよかった。
「皇妃を治療する際に、リア殿の素性を詮索しないという約束をしただろう?」
「はい」
それがどうしたんだろう?
……まさか!!
「実は王国から手紙が来てね。これはリア殿のことだろう?」
バレた! 私が罪人だということを知られてしまった! 手紙ってまさか、罪人として引き渡せという手紙だろうか?
そう思い恐る恐る皇帝陛下が出した手紙を見ると、手違いで国外追放になったオレリア・アールグレーン公爵令嬢が帝国へ向かった。
令嬢はグリフォンと共に行動しているからすぐに見つかるだろう。
令嬢は罪も国外追放も婚約破棄も取り消しになったので王国へ戻るように。というようなことが丁寧に書かれていた。
手違いってどういうこと!?
罪も国外追放も婚約破棄も取り消し!?
「グリフォンを連れている人なんてリア殿以外にはいないからね。すぐにわかった。この手紙のことを伝えるために帝都に戻ってもらったのだ」
いきなりのことで何が何だかわからないが、罪がなくなるのはありがたい。ありがたいというか元から冤罪なんだけどね。
そして国外追放取り消しも家族に会えるからすごく嬉しい。
けど婚約破棄取り消しってなに!?
あれだけのことを私にしておいて!?
というか新しく婚約者になったはずのシャルロッテ・シフォンヌ男爵令嬢は!?
「……まぁゆっくり考えればよい。令嬢が1人で大森林を通って来たのだ。よっぽどのことだったのだろうしな」
私の混乱を悟ったのか、皇帝陛下はそう優しく語りかける。
「実は、私のところにもマティアスから手紙がきていたんだ。」
そう言って今まで静かに話を聞いていた皇太子殿下が取り出した手紙には見慣れた字が並んでいる。
「……お兄様の字だわ」
その手紙には、私が魔法も使えないのに1人で帝国へ行くため大森林に入ったということ。冤罪だということ。もし可能なら助けてほしいということが書いてある。
いくら仲が良かったとはいえ、自国より大きな国の皇太子殿下に公爵令息が頼めるようなことではない。それでも私を想ってダメ元で手紙を送ってくれたのだろう。
「お兄様……」
お兄様の気持ちが嬉しくて、涙が一粒溢れた。
「その手紙が届いてアールグレーン嬢の行方を探させていたんだが、手がかりもなくてね。魔法も使えず1人で大森林に入ったと聞いていたから、正直帝国へ辿り着く前に亡くなってしまったと思っていたんだ。まさか魔法も使えてグリフォンとフェンリルを従魔にして既に入国していたとは思いもよらなかったよ」
まさかこの手紙で私を探してくれていたなんて!
「……皇太子殿下は私が罪を犯したと思わなかったのですか?」
いくらお兄様が冤罪だと手紙を送っていても、実際に国外追放の刑にされているのに。
「私は幼い頃のアールグレーン嬢しか知らないが、王子の婚約者として令嬢達の見本になれるように、王子の隣に立って恥ずかしくないようにと常に血の滲むような努力していたのを知っている。そんなアールグレーン嬢が嫉妬で殺人を犯そうとするなどありえない。そんな愚かなことをするとは思えないよ」
家族以外、誰も私を信じてくれなかった。
でもここにも私を信じてくれた人がいたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます