第51話

「ヒェ!?」


「ちょっとシメオン! 静かに!」


 まさか皇太子がいるとは思っていなかったのだろう。銀色の刃のリーダーなんかは面白い顔で固まっている。


「まず今回の依頼について詳しく説明する」


 さすがは高ランク冒険者。

 あれだけ動揺していたにもかかわらず、依頼について話し始めると皆真剣な顔つきになった。

 

「まず、私の母であるこの国の皇妃は病に侵されている。内密にセフィーロ神聖教国の神官に治療をしてもらったが効果がなく、もう治す手がない状況であった。

そんな時にこの町に現れた魔女の話を聞いたのだ。

その魔女は魔法に長けており、強力な魔物を2匹従え大森林の奥地に住んでいるという。

その魔女は見た目は若く見えるが実際は数100年を生きているとの噂もある。その魔女ならもしかしたら母上の病を治す方法を知っているかもしれない。

私は母上のためにできるだけ早くその魔女を探し出したい。大森林の奥地に向かうということは命の危険もあるだろう。

だがどうか、一緒に大森林へ捜索に来てもらいたい。この通りだ」


「殿下! 殿下ともあろうお方が頭を下げてはなりません!!」


 騎士団長と辺境伯が止めに入るが、私は頭を下げ続ける。

 この者たちに受けてもらえなければもう母上の命を諦めるしかない。

 だが私は少しでも可能性があるのならその可能性に賭けたいのだ。


「あの! 俺たちはBランクで皇太子殿下のお役に立てるかどうかわかりませんが、その依頼お受けします」


 銀色の刃が震えながらも声を上げる。


「俺たちも受けよう。元より依頼を受けるつもりでここに来たのだから」


 ナイトクレッセントも続いて声を上げる。


「俺たちは皇帝陛下から既に詳細を聞いてここにいる。受けるぜ!」


 金色の逆鱗も声を上げた。


「本当に感謝する!!」


 私の気持ちに皆が答えてくれたことに胸が熱くなる。


「これからしばらく共に行動することになるメンバーだ。まずは自己紹介だな。

 大森林に向かうこちら側のメンバーは私、騎士団長のジルヴェスター・フォシュマン、そして騎士団員達だ」


「「「「よろしくお願いします!!」」」」


「待ってくれ、皇太子殿下も大森林に向かうのか!? 危険ではありませんか??」


 冒険者達はまさか皇太子もついてくるとは思わなかったようだ。


「危険なのは承知の上だ。

母上を助けるために魔女の元に行くと言い出したのは私。覚悟もしている。それに幼い頃から騎士団長に剣の指導を受けているから足は引っ張らないつもりだ。

次はそちらから自己紹介を頼む」


「は、はい!俺たちは銀色の刃と言います。Bランクパーティーです!

俺はリーダーのシメオンで大剣使いです。

こっちがレジスで短剣二刀流、そっちのドナシアンが盾使いで、リーゼロッテが魔法使いです!

よろしくお願いします!」


 銀色の刃は4人組のパーティーでメンバーそれぞれの役割的にバランスの良いパーティーだと言える。

 資料には幼なじみパーティーだと書いてあった。チームワークにも期待ができそうだ。


「俺たちはナイトクレッセント。Aランクパーティーです。

俺はリーダーのノエ。短剣をメインで暗器も使う。

こいつはヴァンで弓使い、そいつはフォンセで糸使いです。あとこの猫獣人のアーテルが嗅覚や聴覚を使って斥候をしています。よろしくお願いします」


 ナイトクレッセントは見た目からしてかなり特徴的なパーティーだ。

 全身黒づくめで偵察や奇襲が得意というのも納得できる。

 戦闘スタイルの影響か冒険者にしては細めでしなやかだ。


「最後は俺たちだな。

俺たちは金色の逆鱗。Sランクパーティーだ。

俺はリーダーのゴルドで竜人で大剣を使う。

この不思議な服を着ているのがコジロウ、武器は刀という切ることに特化した東方の武器だ。こっちのブリーゼが弓使いで、そっちのデカいのがジャバルで巨人族の血を継ぐ大盾使い。エルフのローズが魔法使いで植物の魔法と少し回復を使える。よろしくな!」


「す、すごい……!」


 竜人のゴルドだけでも珍しいのに、エルフに巨人族の末裔まで!!

 特に巨人族!巨人族は身体が大きく力が強い分よく食べる。数百年前に純粋な巨人族は食糧難で居なくなってしまったと聞いた。ジャバルは巨人族の血を引いているだけあってかなりの巨体で、手に持っている大盾が普通の盾のように見える。


 これなら大森林だって、魔女だって探し出せるはず。


「大森林は広大だ。魔女は大森林の奥に住んでいるというから探し出すのにかなりの日数を要するだろう。その間の食糧は調味料だけ持って行き狩った肉や採取した植物になる。

睡眠も寝袋で行う。かなり過酷な旅になるだろう。

そして銀色の刃には魔物を倒す以外にももう1つ仕事を頼みたい。

君たちが魔女と知り合いだと聞いた。

交渉がうまく行くように手助けをしてほしい」


「魔女がリアのことでしたら知り合いです!

まだ俺たちも知り合って間もないのですが出来る限りやってみます!」


「それぞれ準備があるだろうから明日1日は準備に使い、明後日の朝大森林門に集合して出発だ。みんな、よろしく頼む」


「「「「「よろしくお願いします!」」」」」


 いよいよだ。

 翌日1日は大森林に行くことや本当に魔女を見つけられるのか、協力をしてもらえるのかを考えていたらなかなか落ち着けずあっという間に過ぎていった。


 そして朝日が登る。

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