第39話


 あれから1週間。ノアとネージュは食事と寝る時以外は狩りに行き、毎日ものすごい量の魔物を狩って来た。

 はじめはこのどんどん増える魔物の山をどうすればいいのか頭を抱えたが、自分で消費するわけにもいかないし考えても結局は隣国で売るしかないのでもう考えるのをやめることにした。


「帝国が見えて来たぞ! あと40分くらいで着きそうだ!」


 今はノアの背中に乗って空を飛んでいる。

 元々は大森林の魔物を狩るために歩いて行く予定だったがもう十分すぎるほど魔物はたくさんアイテムボックスに入っているので空を飛んで行くことにした。

 徒歩なら何日もかかる道のりでも空を飛べばあっという間だ。

 ネージュもノアと同じように擬態ができると言うので小さくなって一緒にノアの背中に。

 真っ白なもふもふ犬になった時は思わずもふもふもみくちゃにしてしまった。 


「ノア、急に門のところに降りて驚かせるといけないから少し手前で降りて歩いて行きましょう」


 ノアとネージュをそのままの姿で過ごせるようにするには最初が肝心よね!

 驚かさないように、この子達がちゃんと理性のある子たちだってわかってもらわなきゃ。

 

 門まで歩いて15分くらいのところで降り門に向かって歩いている。が、やはり遠目で空から魔物が降りて来たのがわかったのか門には兵が集まって来ているようだ。


「やばいなぁ。これ、無事に帝国に入れるのかな?」


 そう呟くとノアとネージュはキョトンとこちらを見る。


「入れぬことなどあるのか?」


「もし入れなかったら俺があいつらを薙ぎ倒してやるぜ!」


 それはやめてください。

 ほんとネージュが言ったら冗談にならないからね。


 ネージュははじめての人の町だからテンションが上がっているみたい。


 門に近づくと思っていたよりも大きな騒ぎになっていることがわかる。

 門の前にはずらっと兵が並びこちらに武器を向けているが、皆んな刃先がプルプルと震えている。

 グリフォンとフェンリルに遭遇したら普通はそうなるよね。


 兵の中から1番立派な鎧を着た兵士が前に出てくる。


「その、魔物は……グリフォンと、フェンリルで、間違いないのか……?」


 声が震えている。


「そうです。2匹とも私の従魔です。」


 そういうと兵全体から「おぉっ!」と声が上がる。

 1匹だけでも伝説級なのにグリフォンとフェンリルをどちらも従魔にするなんて!ってことだろう。


「何をしに、帝国に来た??」


 何をしにって……。

 グリフォンとフェンリルを連れて国を滅ぼしにでも来たと思われているのだろうか?


「冒険者ギルドに行って買取りしてほしいものがあるのと、必要なものを買いに。」


 そういうとホッとしたような雰囲気が一瞬流れる。


「その、危険はないのか?」


「大丈夫ですよ。2匹とも無闇に人を襲ったりはしません。」


 そうは言うが信じられないのだろう。

 帝国に入れるかどうするか、という空気が兵たちの間に流れてた時だった。


「ノアちゃん!? ノアちゃんじゃない!!」


 そう言って門のそばからこちらに走ってくる女が1人。


「リ、リーゼロッテさん!!」


 リーゼロッテさんの後ろには急いでリーゼロッテさんを止めようとする3人の男。大森林の野営地で出会った銀色の刃のみんなだった。


 リーゼロッテさんはそのまま走ってノアの元へ向い、モフンッとノアの胸に飛び込んだ。


「あー! ノアちゃん! 会いたかったよぅ!」


 胸元に顔を埋め、すりすりしているリーゼロッテさんの元に他のメンバーもたどり着く。


「はぁっ、はあっ、リーゼロッテ!! お前急に走り出すなよっ!!」


「いやぁ〜、まさかこの状況の中飛び出していくとは思わなかったよ。」


 コクコク。


「な、なんなんだお前たちは!?」


 せっかく少し落ち着いてきていた兵士さんがまたパニックに。


「俺たちは銀色の刃というBランク冒険者パーティで、俺はそのリーダーのシメオンだ。

この嬢ちゃんとは大森林を通った時に野営地で一緒だった」


「そうです。1晩一緒でしたがこの従魔たちは襲って来たりしませんでしたよ。むしろほら」 


 そう言ってレジスさんは未だノアの胸元に顔を埋めたままのリーゼロッテさんを指す。


 あの時はネージュはいなくてノアだけだったけど、私たちが帝国に入れるようにそこは黙ってくれているのだろう。


「ううむ。しかし、もしもなにかあったらだな……」


 なんだかもにょもにょ言っている。

 できれは入国させたくないけどグリフォンとフェンリルを前にしたら強くは言えないのだろうなぁ。

 けど私も入国できないと困るので押していかなきゃ。

王国にはもう戻れないんだもの!


「従魔の種類によって入国できないことなんてあるのですか?」


 そう聞かれた兵士はうっ、痛いところをつかれたような顔をする。


「そんなことはないが……。

ほら、あれだ!従魔が何か事件を起こしたら主人の責任になるんだぞ!?重い刑罰だと極刑になるかもしれん」


「それはほかの種類の魔物を従魔にしていても一緒じゃないですか。

それにうちの子たちはいい子なので心配ありません」


 そういうがよっぽど入国させたくないのかまだ何か言えることはないかと考えを巡らせている。


「いい加減にしたらどうだ。

この嬢ちゃんにはなんの問題もないはずだ。従魔が問題を起こしたら主人の責任になる。それだけだろ?」


 シメオンさんの加勢を受けてもう言えることがなくなったのかがっくりと肩を落とす。


「……こっちに来てくれ。入国の手続きをする」


 並んでいた人たちがいたはずだけど先に手続きしてもらっちゃっていいのだろうか?

 そう思い周りを見るが、私たちが先に通されることに文句を言う人は1人もいなかった。


 何はともあれ、無事目的地のラルージュ帝国に入国だ!

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