第15話

 今までは狩った魔物とジュエリーを売ったら町を出ていたけれど今回は2日間ある。

 昨日1日で魔物とジュエリーの買取は終わったから今日は1日フリーだ。


『今日1日何をするんだ?』

 そうワクワクした声で念話を送ってきたのは肩に乗っているノア。

 ずっと生肉しか食べていなかったノアは料理されたご飯にハマってしまい屋台が並ぶ通りに行きたくて行きたくて仕方がないらしい。

 特に私は行きたいところもないし、ノアの行きたい屋台通りに行ってもいいかな。


『特に予定もないし、屋台通りに行って食べ歩きでもする?』


 と言うと『それはいいな!!……ま、まあ、リアがお腹が空いていると言うなら付き合おう』と、喜んでいるのが隠しきれていない。


 屋台通りに着くといろいろな料理の美味しそうな香りが辺り一面に漂っている。

 さっきからノアもふんふんと匂いを嗅いで美味しいお店を見つけるのに必死だ。


 あの、肩の上でヨダレは垂らさないでください。


『リア! あそこの煮込みはどうだ!? 肉がゴロゴロ入ってて美味そうだ』


 ノアの視線の先には大きな鍋でグツグツ煮込まれている肉と野菜の煮込みがあった。

 たしかに肉も野菜もゴロゴロ入ってて美味しそうだ。


「おじさん、これ2人前ちょうだい」


「はいよ! 2人前で800リルだよ」


 銀貨を8枚渡すと鍋からお玉でたっぷりと煮込みを掬い、木でできた簡単な器に入れてくれる。


 煮込みを受け取り屋台の横の椅子があるスペースに向かいノアと煮込みを食べる。


『美味い! やはり私の嗅覚は正しかった!』


 ノアは鳥の姿なので嘴を必死に開いて一生懸命に煮込みを突いている。

 私も一口すくって食べると濃厚な味が口いっぱいに広がる。


 美味しい!

 洋風な煮込みで、魔物の肉だけど味付けはビーフシチューに似ているかな。確かにノアの嗅覚は正しいわね。


 濃厚な煮込みを夢中になって食べていると、ノアの食べっぷりを見たからなのか店主のおじさんが話しかけてきた。


「ご主人様にいいもん食わせてもらって幸せだねぇ。

でも鳥なのに煮込みも食えるんだな」


 確かに普通の鳥は煮込みは食べないかも。

 他の鳥も食べると思って食べさせたりしたら大変だ。

「この子は鳥に見えるかもしれないけど小型の鳥魔物なのでなんでも食べれるのかもしれません」と伝えておく。


 魔物と言ったからか、おじさんはそういうものなのか。と納得してくれたみたいだ。


『リア、この煮込みもっと買って帰ろう!』


 ノアはよほど気に入ったようで、おじさんと話していると念話でそう伝えてきた。


「おじさん、この煮込み鍋で買ってもいいですか?

この子も気に入ったみたいだし、私もすごく美味しかったから」


 そう伝えてアイテムボックスから鍋を取りだす。

 急に現れた鍋に驚いたのか目を丸くしていたが、自慢の料理を褒められて嬉しいのかすぐに「もちろんだ!」と言い鍋にたっぷりと煮込みを移してくれた。


 アイテムボックスに入れておけば腐らないから野営の時にでもまた食べよう。


 その後もノアと屋台巡りをしたり食料品以外のお店も見てみたりと1日中楽しんだ。


『こんなふうに観光したのは初めてだけど楽しかったね!』


『そうだな。人の生活というのをここまで見たのは初めてだったが思ったより面白かったな』


 ノアはこんなふうに言っているけど、初めて見るものばかりだからか食品のお店以外もかなりしっかりと楽しんでいた。


『それじゃ、また明日の朝迎えに来るからね』

 そうノアに伝えて厩舎に預けて宿に入る。


 これからまた国境に向かって大森林を抜けて隣国に行くことを考えると早めに出発したい。早く隣国に行って宿や野営ではなく自分の家でゆっくり過ごしたいのだ。


 兵隊長さんに会って財宝の買取が終わったら明日町を出られるかなぁ。

 出られるといいなぁ。

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