第14話
「ノア、この先に野営ができるスペースがあるみたいなの。
もう暗くなってきているから今日はそこで休みましょう」
野営スペースにたどり着き端の方の空いているところに向かう。
人が見ていない隙にアイテムボックスからテントと野営道具を取り出し食事の準備をする。
今日は野菜とソーセージを煮込んだポトフにパン、塩を振って焼いたホーンラビットの丸焼きもある。
「いただきます。うーん、美味しい!」
じっくり焚き火で焼いたお肉が絶品だわ。
「うまいな! 今までは生肉しか食べたことがなかったが、人の食べるものもこんなに美味いのか」
私のご飯に興味があったのかチラチラこちらを見ているのがわかったので「ノアも私と同じの食べてみる?」と聞くと明らかにキラキラとした目をして喜んでいたので同じものを出したらお気に召したみたいだ。
食事を終えたら食器にクリーンをかけてしまい、自身とノアにもクリーンの魔法をかけ布団に入る。
一度一緒に布団で寝てみたら寝心地にハマったようで最近は鳥の姿のままノアも一緒に布団で寝ている。
「おやすみ、ノア」
「おやすみ、リア」
「ノア、着いたわ! あそこがバルタザールよ」
結局盗賊の事や2日目が雨だったこともあってバルタザールに到着したのは3日目の昼だった。
街に入るため入り口に並び門番に身分証を見せる。
「確認できました。バルタザールへようこそ!」
「ありがとうございます。
あの、ここへ来る途中に盗賊を討伐したのですがどこへ報告に行けばいいでしょうか?」
そう門番に言うと何を言われたのかわからない、というような表情になる。
「盗賊、ですか?」
「はい。盗賊を、討伐しました」
そういうときょろきょろと周りを見廻しキョトンとしている。
「あの、お1人で??
証明できるものなどはありますか?」
たしかにこんな小娘が手ぶらで盗賊討伐をしたと言っても信用できないだろう。
そう思い小声で「私、魔法使いでアイテムボックス持ちなんです」、と言うと門番ば驚いたように目を見開いて、すぐに門にある個室に案内してくれた。
コンコン
部屋で待って10分ほど経った頃、先ほど門番をしていたお兄さんと一緒にもう1人男性が入ってくる。
「私はこのバルタザールの兵隊長をしているアーモスと言う。
あなたがこの近くで盗賊を討伐したと言うのは本当だろうか?」
赤髪短髪で顔にワイルドな傷がある。強そうだと思ったが兵隊長さんなのか。どうやらこの門番さんがわざわざ偉い人を連れてきてくれたようだ。
「本当です。先ほどそこの門番さんにも伝えましたが、私は魔法使いでアイテムボックスを使えるので討伐した盗賊も持ってきています」
そうハッキリと伝えるとアーモスさんは少し考えるような表示を見せ、「ついてきてくれ」と言い立ち上がる。
アーモスさんの後についていくと、倉庫の ようなところにたどり着く。床には皮のシートが敷いてある。
「ここに出してもらえるか?」
討伐した盗賊をアイテムボックスに入れてきたと伝えたから、その事だろう。
盗賊を次々と皮のシートの上に出し、最後に頭領だと思われる男を出す。
「こいつは!!」
そう驚きこちらに近づいてきたアーモスさんがまじまじと頭領の顔を確認する。
「鋼の斧盗賊団の頭領だ」
鋼の斧盗賊団? 財宝も沢山あったし、有名な盗賊団だったのだろうか?
『リア、斧とはあの頭領の横に転がっていたやつではないか?』
そうノアに言われて思い出す。
鋼の斧……。そういえば頭領を倒した部屋の床に斧が転がっていた気がする。
「もしかしてこの斧頭領の武器ですか?」
そう言いアイテムボックスからずっしり重い、大きな鋼の斧を出す。
「それだ! その武器がこいつのトレードマークなんだ。
ここに盗賊団のマークも入ってる」
持ち手の先を見ると斧のマークが入っている。
顔の確認は済んでいたが、この斧を出したおかげで鋼の斧盗賊団だという確固たる証拠になったようだ。
「ありがとう!」
そう言いアーモスさんが深く頭を下げる。
なんでもこの盗賊団はずっとバルタザール周辺で盗賊行為を行なっていて、何度も討伐隊を出していたが元冒険者でランクBの頭領がいたため討伐できていなかったようだ。
「最近うちの領主様の馬車が襲われてな。早く討伐しろと上からせっつかれていたんだ」
盗賊団の規模にしては高価な財宝が多かったのはそういう事だったのか。
「もしかしたら荷を買い戻したいと思っているかもしれない。
領主様に話を通すから2日ほど待ってもらえるだろうか?」
デブブ伯爵か。
できれば関わりたくないけどここで断るのもおかしいと思われるよね。さっさと荷を買い戻してもらってこの町を出よう。
「わかりました」
アジトから持ってきた財宝を一通り書き写してもらいまた2日後に来ると約束し門を出た。
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