おれはおかしい
横倉 悟
第1話
おれはおかしいのかもしれない。そう思ったのはいつからだろう。
たとえば、体育の着替えの時に友だちのほうをじっと見ちゃう。がっしりした先生や男のひとがいるとなんだかぼうっとしちゃう。
「トウジってさ、クラスの女子ならぶっちゃけだれが一番気になる? お前いつも彼女ほしいって言ってるじゃん。なあ、だれ?」
去年の六年生の修学旅行の時も、友だちからそう聞かれて上手く答えられなかった。なんだかモニョモニョごまかしてたら「なんだよ、ノリ悪ぃなー」なんて言われたけどそっちのほうがマシだ。
だって、おれはたぶんホモってやつだから。男なのに男が好きっていうイジョーシャだから。それがバレたらどうなると思う?
……ぜったい、いじめられる。笑われる。バカにされる。そんなホモなんか気持ち悪いだけじゃん。いやがられるじゃん。いるだけで迷惑じゃん。いくら「差別はよくない」とか「みんな平等に生きる権利がある」とか言っても、それはひとごとだからだ。自分に関係ないうちはそんな意識高いこと言えるけど、自分のすぐそばにそんなホモがいたらみんなイヤだって思うよ。それが普通なんだから。ホモなんかに生まれたおれが悪いんだから。
だから、おれはウソをつく。女の子が好きなんだよ、彼女がほしいよって言うことにしてる。そうすれば怪しまれないから。自分でそう言い続けていれば、いつか『普通』になれる筈だから。
そうだよ。おれはおかしいよ。ホモなんておかしいよ。だから、おかしくない『普通』のフリをしていなきゃいけないんだよ。ずっと、ずっと。
死ぬまで、ずっと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます