どうも、少女漫画の絶対に報われないチャラ系イケメンに成り代わりました。しんどい。

消息不明

第1話 少女漫画の主人公


 少女漫画が好きだった。姉と妹との三兄弟で、父はおらず家の中には俺以外の男がいなかった。だからだろうか、家の中には少女漫画しか漫画と呼べるものが存在せず、最初は暇つぶしに読んでいたそれを自らの金で買うようになったのは早かったと思う。


 男子高校生になっても、俺の少女漫画好きは治らなかった。それどころか俺の部屋の本棚には少女漫画がずらりと並べられ、友達を呼ぶには姉か妹の部屋に全て移す必要がありとても面倒臭かったのを覚えている。



 なんの変哲もない日だった。太陽は相変わらず俺たちを平等に照らし、いつも通りの朝がやってきた。


 そのはずなのに、俺には朝が訪れなかった。

 なぜかと問われればよくわからないが、きっと俺が死んだからなのだろう。次に目が覚めると、俺は俺でなくなっていた。



 **



「快斗、おはよう!」


「はよ」


「お二人さんおはよ。ほんっと美玲は朝から元気だよなぁ」


「私は朝元気で夜静かになるタイプなの!」


「うーんいらん情報〜」


「ひっっど!」


「……美玲、今日寝坊してたくせに」


「ちょっ、蒼! ボソッと変なこと言わないで! わざわざ言わなくてもよかったよね!?」


「朝強いみたいに言うから」


「言ってない!」


 おはようの挨拶から発展しイチャイチャし始めたクラス公認カップルは、本人達は認めないが距離は近いしなにより仲がいい。


 セミロングの黒髪がきれいな女子は美玲で、男子の方は蒼。俺の好きな人――好きだった人は、ここにいる美玲だ。



 生まれ変わった俺は誰もが認めるイケメンだった。どこかの国が混じっているのか、茶色がかった髪と瞳。でも顔立ちは完全にアジア系だし両親は二人とも日本人なので遺伝子隔離というやつだろう。

 どうでもいいが今世は父親がいるので、なんとも新鮮な気持ちで毎日を過ごしている。少しは慣れたが、まだ元の家族が懐かしい。


 そんな俺だが、今世は顔もいいし両親は仲良さそうだし、弟妹はかわいいしで人生勝ち組やっほいと思っていた。なんなら調子に乗っていた。


 だが、前世の死亡年齢と同じ歳、高校生の入学式。新入生代表挨拶をする一年男子の顔とセリフ、声までもに既視感があった。――どこかで見たことがある、聞いたことがある。そしてハッと気がついた。



 あれ、俺が前世読んでた少女漫画のヒーローでは? と。



 そんなのが頭に浮かんでからは早かった。だってその漫画には、俺が毎日見る自分の顔も描かれていたから。それもメインキャラとして。


 ――そう。なんとも突飛な話だが、俺は大好きだった少女漫画の、ヒロインを一途に好きになるが報われないチャラ系イケメンに成り代わってしまったらしい。







「……わかってるなら、好きになんかならなきゃよかったのに」














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