第2話 愛海初女は返事は待たない主義

 メールで返事をするべきか、それとも手紙で返事をするべきか。

 そのことに悩んでいたら、一夜明けた。

 一睡もできなかった。

 目をギンギラギンに輝かせて、登校し、昨日の公開告白が夢ではないかと若干の機体をしたが、男子の恨みがましい視線を一身に浴び、夢ではないのだと思い知る。


 俺はどうやって返事をするべきか、そもそもなんて返事をするべきか……。


 ずっと悩み続けていると、答えがあっちからやって来た。


「えーっと……今日から君たちと一緒に勉強することになっ、」


「転校生の愛海初女あいみはじめです! 早速返事を聞きに此花高校に転校してきました! 今日から宜しくお願いします!」


 ……メチャクチャ過ぎない?


「「「ええええええええええええええええええええ!!!!!!!!」」」


 空気が震えるほどの怒号が鳴り響く。

 そりゃ驚くよ。


「あの……」


 おずおずと手を挙げる。

 一気に男子の熱のこもった視線が向けられる。


「はい! 鶴来くん!」


 びしっと初女が俺を指さす。

 お前が指すんだ。先生困惑してるよ。今年で定年だっていうのに、こんなハチャメチャな状況に巻き込まないでやってほしい。


「昨日の生放送ではメールか手紙で返事をって話だったような気がするんですけど……」

「待ちきれなくて来ちゃいました!」

「来ちゃいましたって……転校ってそんな簡単にできることじゃ」

「細かいことはいいのよ! それよりも告白の返事を聞かせてください! 私と付き合ってくれますか⁉ くれませんか⁉」

「えっ」


 熱のこもった視線を向けられる。

 うるうると瞳をうるませ、胸の前に手を合わせ、若干懇願するような瞳で……。

 俺は……彼女から目を逸らせない。

 視線を逸らしたら男子の「死ね」という強い意志が込められた目線を見ざるを得なくなる。そんなものは見たくない。


 俺は……、


「あ、はい」


「やったああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


 飛び上がって喜ぶ初女。

 いいの?

 メチャクチャ動揺して、適当な返事をしちゃったけど。

 ぴょんぴょんと何度も飛んで喜びを彼女は表しているが……。

 そしてさすがはアイドル。ジャンプ力が高い高い。軽いジャンプのつもりなのだろうが、高さが普通の女子のジャンプの倍ぐらいはあるし、滞空時間が長い。


「「「死ねええええええええええええええぇぇぇぇ~~~~~~~!!!!」」」」

 

「うわぁッ! びっくりしたぁ!」


 教室中の男子から呪いの言葉を一斉に浴びせられた。


 いや、この状況で告白断われるやつ……いる?

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