ランプの魔神ですが、ご主人様が最強すぎて願い事を言ってくれません! 〜仕方がないのでのんびり一緒に旅をしています〜
水都ミナト@【死にかけ公爵】配信中
プロローグ
エスメラルダ王国。
切り立つ山々に囲まれた広大な大国であるが、その地の覇権を争う他種族間の抗争や
そして、魔族の王ーーー人間からは魔王と呼称されたその男は、戦いの化身と言えるほど戦場を血の海にして来た圧倒的な存在であった。返り血に塗れた姿はまさに魔王と言うに
そんな魔王が人間の勇者に討たれたのがちょうど100年前。
それから長い年月をかけ、様々な種族は手を取り合い、互いを認め合い、国を築いた。かつては血の戦場であったエスメラルダ王国は、自然豊かな花と緑の大国と呼ばれるようになった。
すっかり平和で穏やかになったエスメラルダ王国であるが、古の時代より、幾つかの御伽噺が存在した。
そのうちの1つが、魔法のランプの話ーーー
古びたランプの側面を擦ると、何でも願いを叶えてくれる魔神に出会えるとか、出会えないとか……ーーー
◇◇◇
「ランプの魔神よ!!この私を筋骨隆々の最強の男にするのだ!!!」
「お願い!一生遊んで暮らせる程の金貨が欲しい!」
「この町の一番の権力者になりたーい!」
「魔神よ魔神!私を村一番の美女にして!!」
「…ご主人様の仰せのままに」
数百年前より、ランプの魔神は、主人の望むままに願いを叶えてきた。
時の権力を求める者、自らの容姿を変える者、富や名声を求める者ーーーーー
歴代の主人の数は十数名程か。数百年かけて、いくつもの願いを叶えてきた魔神は、人の欲深さに辟易としていた。
偶然ランプを手に入れ、魔神を呼び出した者。
噂を聞きつけランプを奪い取り、魔神を呼び出した者。中にはその時の持ち主を殺害し、強奪した者もいた。かつては戦争を有利に進めるため、ランプを巡った争いも起こった程である。
魔神からすれば、入手方法がどうであれ、いずれも主人に変わりはない。魔神に主人を選ぶ権利は認められていないのだ。
例えその願いが、あまりに利己的なものであれ、魔神は叶え続けてきた。
そう、強大な力を手にした者は等しく欲に目が眩み、自分のためだけにその力を使う。
最後に召喚されたのはいつのことだったか…
勇者が魔王を討ち滅ぼし、しばらくした頃だったか…
もう数十年は呼び出されていないようだ。
主人なければ外に出ることは叶わない。魔神はその間ひたすらランプの闇の中で、召喚されるその時を待つのである。
もちろんその間、魔神に意識はあり、ランプの外部の様子を見ることは出来ないのだが、音を聴くことは出来た。
ランプは現在、巡り巡ってとある商人の手に渡り、骨董市の露店に出品されているようだ。
市場には様々な客が来るため、買ってもらえずとも色んな話を耳にすることが出来たため、退屈せずに済んだ。そして魔神は今の世界の様子を大方把握することができた。
昔と違い、世界は随分と平和になったようだ。
まあ世界が変われど人の本質は変わらないだろう。呼び出されたとて、これまでのような身勝手な願いを叶えることになろう。
魔神が、かつての醜い争いを思い出してうんざりとした気分になっていると、
「よし、このランプを買おう。いくらだ?」
なんとランプの買い手が現れたようである。
そして、数十年ぶりにその時が訪れるーーー
ランプの側面が擦られ、魔神はランプの外へと召喚されたのだ。
はてさて、今回の主人はどのような願いを求めるのか…
「ごきげんよう、ご主人様。3つの願いを叶えましょう。さあ、願いをどうぞーーー」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます