昨日の味方(幼馴染)は今日の敵(幼馴染)とか勘弁してください!

光影

第1話 憑依された者


「本気で戦って三分だ。その間にバカ姉貴ように呪解の術式をかけた魔道具を作れ」


「いけるの?」


「やるしかないだろ? すまないが殺すつもりでいく」


 術式解凍。

 天才魔術師と呼ばれた真美。

 大切な家族を護る為、魔術の力で具現化した悪を一人その身を持って受け止めた。

 某国は最強の魔術師を失った。

 しかし悲劇は続く。

 国を愛し、国の未来、なにより大切な家族のため戦っていた一人の少女が今度は国を滅ぼす敵となって現れた。


 彼女は某国一の魔術師。

 某国第二位の魔術師との力の差は歴然。

 今まで助けられていた彼女に今度は滅びの道を掲示された。


「今度は私がお姉ちゃんを救う! 悪の傀儡になる予定だった私の犠牲になって終わる人生なんて私が認めないから!」


「ふふっ、もうこの娘の自我はない。悪の権化たる私の支配下に精神を縛っておるのだからな」


「そうか。だったら気を付けろ」


 幼馴染の姉妹を救うために立ち上がった少年は静かに目を閉じる。

 全身の意識を集中させて、体内に巡る魔力の波動を神経で感じ、一点に集中させる。

 最強の魔術師相手に正面から戦って勝てるわけがない。

 冷静になって考えた答えであり、彼女攻略の一手。


「……ちょ!? 『自滅の魔眼』? 本気でお姉ちゃんを殺す気?」


 魔術の一つ。

 『道術』の一種でかなり強力な力を秘めている。

 扱える者は某国では一人。


「当然。その気でやらないと一分も拮抗できない。精神が支配されたとは言え、真美の肉体と真美が扱える魔術を全てアイツが扱えるなら」


 黒い瞳がルビーにも負けない綺麗で淡い赤い瞳へと変わる。

 両目の中心部には黒い六芒星。

 見つめた者(物)や認識した者(物)の魔術を強制的に暴走させたり、直接相手の体内にある魔力を暴走させて命を奪う禁じられた道術の一種。


「その程度か?」


「チッ、演算処理もう終わったのか。早すぎるだろ。暴走を数値化し逆に抑制魔術を自分にかけて強制的に中和……この器用さ間違いないお前真美の魔術をそのまま同じレベルで使えるな?」


「そうね……否定はしないわ」


「というわけだ。三分だ。それ以上は無理だ」


 道術の力を彼女に対して発動。

 それが本来の使い方。

 ただし道術は一定の効果範囲内においても発動が可能。

 自身の魔力も対象に暴走させ、扱えるギリギリのところで制御し攻撃を仕掛ける。

 足の裏を爆発させたように電光石火の如く、彼女の元にいき雷のように速く槍の先端にも負けない切れ味を持つ一撃を放つ。


「全身に身体能力魔術そこに魔力の暴走で得た能力向上」


 首を傾ける事で簡単に躱されてしまう。

 一撃で決まるとは最初から思っていない。

 剃刀のように鋭い蹴り上げ。

 嵐のように荒々しいつむじ風を巻き起こす回転蹴り。

 ジャブの連打からの強打。

 どれも素早く素人では絶対に躱せない攻撃にも関わらず全てが空を切る。

 独特な足さばきによる攻撃の連打が全て見透かされていると錯覚すらしてしまう。


「地味ね。いいわ、見せてあげる」


 次の瞬間。

 鉄の塊のように重たい一撃が顔面に飛んできた。


「――ッ!?」


「次行くわよ」


「面白れぇ!」

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