プロローグ



 朝日に照らされながら、電子音のする信号の横断歩道を渡る。

 いつもと変わらない風景を見ながら、俺、[月見里つきみざと零夜れいや]は歩く。

 ちなみに月見里と書いて「やまなし」と読む家もあるが俺のところは、そのまま「つきみざと」だ。

 知っている人には、よく間違えられる。

 誰に俺は、説明してるんだ?

 ま、いいか、そんな意味のないことを考えていると聞きなれた声が聞こえた。


「お~いナイっち!!!!!」


 俺のことを「ナイっち」と呼ぶのは一人しかいない。


「朝っぱらから声がデカい」


「元気でいいんです~一回くらいしっかりかえしてくれてもいいじゃんナイっち」


「嫌だよ、朝から人が振り向くくらい声出すとか何の罰ゲームだよ」


「ぶぅ~いいじゃんか少しくらい…それにしても相変わらずわかりやすい見た目だよね」


 こいつは、[名宮なみや慎吾しんご]170㎝と俺より高い身長で、母親がロシア系らしく色素の薄い髪をしていて髪型はツーブロックだ。

 服装は、ジーパンにレザージャケットである、高そー。

 顔は、ハーフだから少し日本人離れしているがとても整っており、こののんびりで分け隔て無い性格と合わさり、男女共に人気がある。

 慎吾とは、中学一年からの付き合いである。

 ちなみ言うと、ナイっちとは「零夜」から夜を英語の、ナイトに変えて、ナイトは呼びずらいから、トをっちに変えたらしい。

 分かりずらいわ。


「うっさいな一定期間でそれ言うんじゃねぇ」


「言いたくなる見た目だから仕方ないね~」


「はぁーこいつは」


 珍しい自覚はあるが、そう何度も言われると少し腹が立つ。

 そう、俺は、歩いていると視線を感じないことがないくらい珍しいんだ。

 俺の見た目は、一言でいうとだ。

 先天性白皮症、先天性色素欠乏症、白子症などいろいろな呼称はあるんだけど、伝わりやすく言うなら。


『アルビノ』


 俺は、そう呼ばれる症状?がある人間なんだ。

 それ以外にも見られる理由はある、例えば、高一になっても160㎝という男では低めの身長だったり、男なのに白い髪をポニーテールにしてるとことか、身に着けている物も白がばかりで他色は、黒しかないツーカラーなところとか。

 何か言われる理由が自分にあるのは、わかっているが根本の『アルビノ』は治療ができないのだ。

 今でこそ、無くなったが昔は、とからかわれ苛められたりした。

『アルビノ』であることを自分が認められてかったが、名取ともう一人のおかげで、しっかり向き合うことができた。

 表には、出してないが感謝しているのだ。


「そういえば今日は、部室でパーティーだっけか」


「そうだね~部長の誕生日だからね」


「そうなのです!!」


「ひゃっ!」


「ホワっちおはよ~」


「おはようなのです!」


「いつからいたんだよ」


「さっきなのです、それにしても可愛い驚き方でしたのです」


「うっさいわ」


 急に出てきたこいつがさっき言ったもう一人だ、[白崎しらざき那由他なゆた]身長は162㎝で、俺より少し高い、腹立つ。

 髪は、ストレートのロングで混じりっ気のない黒が俺とは対照的だ、顔に関しては、美少女と言わざるを得ないほど整っている。

 服装は,黒のワンピースに白衣である、何故に?

 那由他も慎吾と同じく、接しやすさがあってそれが見た目と合わさりで男女共に、人気である。

 語尾が「のです」になりがちなのも可愛いと評判だ。

 那由他は、俺のことをレイ、慎吾のことはシンと呼ぶ。

 こいつとは、中学三年からの付き合いだ。

 そんなこと考えながら歩いていると、俺達の学校が見えてきた。


「相変わらず、よね~うちの学校」


「本当に何故、こんな青くしたのか」


「きっと建てた人は、ブルーハワイが好きだったのです」


「んなわけないだろ」


「意外とあるかもよー」


「慎吾も賛同するなよ」


 俺らの通っている、『氷天学院ひょうてんがくいん』は、外観が青く、他にも有名なところはあるが、氷天学院と聞くと「あ~あの青いところね」と言われるくらい青いのが特徴である。


「そうだ、部長への誕プレ何持って来たんだ?」


「新作のボードゲームだねー」


「新作のボードゲームなのです」


「まーそうなるわな、ちなみに俺も新作のボドゲだな」


「部長は、本当にボードゲーム好きだからねー」


「俺らみたいに、オセロに特化してるんじゃなくて、ボードゲーム全体を愛してるからな」


「渡したら喜んでるところしか想像できないのです」


 俺達は、ボードゲーム部、略して、ボドゲ部に所属している。

 今日は、部室で我らがボドゲ部の部長の誕生日パーティーがあるのだ。

 部長はボードゲームを愛しているため、皆プレゼントはボードゲームだ。

 俺達三人も、ボードゲーム自体が好きだ。

 だがその中でもオセロが大好きで、その繋がりで仲良くなった。

 先輩方には、「オセロトリオ」とか言われている。


「じゃそろそろ分かれるか、昼休み屋上でな」


「全員クラスが別だとこういうところ面倒だよねー」


「まあ仕方ないのです」


 話をするうちに校門を潜り、靴を履き替え昼休み集まることを伝え、別れる。

 クラスには、特別に仲の良い友人がいるわけでもないので、静かに過ごす。

 早く昼に、なんないかな~。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン


 黒板を写したノートを机に仕舞い、屋上に向かう。

 あいつら先に着いてるだろうな。


「ありゃ、やっぱり俺が一番遅かったか」


「遅いのです、だから先に始めてるのです」


「遅いといっても二分くらいだけどねー」


 俺達が、昼に屋上で集まってやるのは、お弁当を食べながらのオセロである。

 元々は、話しながらお弁当を食べているだけだったのが、いつの間にかオセロもするようになった。


「ぬ~負けなのです、シン強いのです」


「ホワっち『速攻』弱いよねー」


「那由他は、計算していつも置くから、考える時間無いと感覚狂うんだろ」


「それでも負けは悔しいのです」


 速攻とは、俺達が独自に考えたオセロの遊び方の一つだ。

 単純に、一手にかけていい時間は、5秒で使うボードの範囲を一回り小さくするというもので、感覚派の慎吾は強いが、理論派の那由他は弱いのだ。

 他にも、三神、二連、長期、波紋、逆転など多くの遊び方を考え出した。

 好きなことをとことんやるのは楽しいものだ。


「さあ、次はレイの番なのです、やるのです」


「まあ、待て偶にはゆっくりするのも大切だろ、寝転がって空でも見よ」


「いいねー、今日は天気いいから、したくなる気持ちもわかるよ―」


「確かに気分転換もいいのです、それにしても天気いいのですー」


 二人も俺の意見に乗ってくれたので、今日はゆっくりしよう。

 ここまで晴れていると、温かくて眠たくなるな。


「ちょっと寝てもいいか?」


「僕も言おうとしてたー」


「私もなのです」


「じゃ、まだ時間有るしみんなで寝るか。」


「賛成ー」


「賛成なのです」


 そうして、そよ風が頬を撫でる中、俺達の意識は微睡みへと沈んでいった。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




……サァー……サァー

チュンチュン チュンチュン バサッ



 あまり聞きなれない音で目が覚めた。

 周りを見てみる。


「ハァッ!?何が……起こったんだよ」


 辺り何処を見ても、森が広がっていた。


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