第4話 好きな人がめっちゃ絡んでくる

 音漏れが原因でイツキ君のLIMEをゲットしたあの日から。

 イツキ君がカースト上位組そっちのけで私に絡んでくるようになった。


 会話の内容はほとんどコトリのこと。

 新しく公開された曲がどうとか、SNSにコトリのこと書いたらいいねもらえたとか、コトリの中の人はきっとこんな子とか(妄想)。

 そのバリエーションは、よくもまあコトリ1人にそんなに会話ネタ見つけられるな、とこちらが感心してしまうほど。


 こ、これが陽キャのコミュ力か……。

 こっちはほとんど「うん」とか「はあ」とか返事しかしていないのに、不思議なくらい会話が続いていく。

 しかもどこまでいっても熱量がすごい。


「――あ。ごめんね話しすぎて。コトリちゃんのことになるとつい」

「う、ううん。本当に好きなんだね」

「めっちゃ好き!」

「イツキ最近その話ばっかじゃん。つまんない。もっとほかの話しようよ。小鳥遊さんも困ってるし!」

「ええー。あと少しだけ!」


 イツキ君が私の席の近くに留まるせいで、私の席はカースト上位組に囲まれ中だ。

 正直逃げたい。


「コトリちゃんってどんな子なんだろう? ライブとかしないのかな。こんな切ない声で目の前で歌われたら、オレ絶対好きになっちゃうよ。あー、コトリちゃんみたいな子と付き合いたいなー。まじで好き!」

「その子有名人なんでしょ? イツキじゃ相手にされないって!」

「有名人に恋とかウケるー」


 いやただの地味な高校生なんですけど。

 というか私なんですけど。

 は、話がどんどん大きくなっていく……。


「そういやさー、小鳥遊さんはコトリちゃん?のどこが好きなの?」

「えっ? えーっと……共感できる、というか」

「え、それって小鳥遊さん好きな人いるってこと?」

「えっ? いやっ、ちが――」


 し、しまった――。


「えー! まじで!? 誰?」

「イツキだったりして!」

「まさかー! 小鳥遊さんいつも困ってんじゃん。どっちかっていうとウザがられてんじゃない?」

「あははだよねー」

「おまえらひどくない!? 小鳥遊さん、オレら仲良しだよな!? な!?」

「あはは……」


 か、帰りたい。

 私、カースト上位の陽キャと喋れるコミュ力ないんですけど。

 何なのこのテンションの高さ……。


 というか、私ウザがってるように見えるんだ……。

 自分のことだから、たしかに反応に困ることもあるけど。

 でもそれなりに楽しいと思ってるんだけどな。

 相手は大好きなイツキ君だし。


 ――私にも、この子たちみたいなコミュ力があったらな。

 そしたらもっと仲良くなれるかもしれないのに。

 イツキ君、コトリの話できるのが私しかいないのは分かるけど、私と喋ってて楽しいのかな。


 そんなことを思いながらチラッとイツキ君の方を見ると、目が合ってしまった。

 ドキッとする私とは裏腹に、イツキ君は何でもないことのようにヘラっと笑って見せる。


 くそう……そういうとこだぞ!

 これだから陽キャなイケメンは困る。

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