好きな人への恋心をのせて「歌ってみた」してたら、好きな人が私ガチ勢になってた
ぼっち猫@書籍発売中!
第1話 恋したのは、カースト上位男子だった
「ねーイツキ! 今日どうする?」
「暇ならみんなでカラオケ行こうよ!」
「おー、いいよ。オレめっちゃかっこいい歌仕入れたから!」
「えー何それウケる!」
放課後。
ホームルームが終わるやいなや、教室が一気に騒がしくなる。
友達同士で集まってだらだら話し始める者もいれば、予定を合わせてそそくさと街へ繰り出す者もいるし、そのために化粧を始める者もいる。
いずれにせよ、多くは友達と楽しむ放課後という時間を心待ちにしているが――
その「友達」のどれにも、私、小鳥遊琴音(たかなし ことね)は含まれていない。
(はあ。もういっそ学校爆発しないかなー)
私は、地味な上に人見知りでコミュ障な、絵に描いたような陰キャである。
そして社会という場において、大人だろうが子どもだろうが「陰キャ」の立場は総じて低い。
見た目に気を遣い、うまく立ち回り、誰とでもうまく話せる「陽キャ」は、当然人を惹きつけるから大きな「勢力」になっていくし。
そうして築き上げられたカースト上位層にとって、私みたいな陰キャは場をしらけさせる不要な存在だ。
カースト上位層から遠いどころか友達もいない私に「放課後の予定」なんてあるはずもなく、ただ早くこの場から立ち去りたいという理由で席を立つ。
授業中も休み時間も、学校での私はもはや空気。
特にいじめられているわけではないけど、椅子や机と同化している、いてもいなくても一緒の存在。
(きっと私、また卒業まで1人なんだろうな)
心の中でため息をつくも、きっと私がそんなことを考えていることすらクラスメイトにとっては興味外だろう。
小学校も中学校もそうだった。
たまに面倒見のいい女子が話しかけてくれるけど、うまく言葉が出てこない。
だから結局、友達になれない。
完全に、生きててごめんなさいレベルの自業自得。
――なのに。
なのに私は、今とても困った大失態を犯している。
なんと、クラスで人気のカースト上位男子、八神樹(やがみ いつき)君に恋をしてしまったのだ。
カースト最下層の私がイツキ君に惚れるなんて、どう考えても釣り合わないし実らない。
同じクラスにいるのに、話しかけることすらできない。
なのに気持ちが溢れて止まらない。
どうして私はこうなんだろう?
好きになったきっかけはよく分からない。
でも、いつも私にも「おはよう」と声をかけてくれる優しさや、目が合うと微笑んでくれる人の良さ、イケメンなのに気取らない純朴さに気を取られ、いつの間にか好きになっていた。
(あーあ、私、ばかだなぁ。イツキ君はみんなに優しいだけなのに。でもそんなとこも好き……)
もう、考えれば考えるほどため息しか出てこなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます