異世界警察24時!

@riboru

第1話 なんでもなかったあの日の夜

その日は俺の8歳の誕生日だった。誕生日プレゼントや誕生日ケーキ俺は楽しみで仕方なかった。学校から急いで家に帰ると両親は家にいなかった、何時間経っても両親が帰って来る気配がない。そして深夜2時頃にインターホンが鳴った。

「おかえりなさい!」

 てっきり両親が帰って来たのだと思った、だがドアを開けるとそこにいたのは警察官だった。

「斗陽君だね、お母さんとお父さんが警察署で待っているから一緒に行こうか」

 そして警察署に着くと母さんが俺に抱きついてきた。泣いている。

「なんで泣いてるの?僕が悪い子だから?ごめんなさい。謝ったからもう泣かないで」

「斗陽のせいじゃないわよ、誰も悪くないの......ごめんね」

 この時の母さんは一番辛かったと思う。

「そろそろ行きましょうか」

 俺たちは警察官に面会室に連れてこられた。そして壁越しには父親がいた。空気は最悪だった。母さんはずっと泣いていて、父さんは死んだような顔している、見ると父さんは殴られたような傷がいくつもあった。

 口火を切ったのはやはりと言うべきか俺だった。

「なんでお父さん傷だらけなの?大丈夫?早くこっちに来なよ、僕が手当てしてあげる。この前お母さんに教えてもらったんだ、だから」

 すると父さんは重い口を開いた。

「ごめんな斗陽、お父さんはそっちに行けそうにない、......本当に、すまない」

 父さんはこの時殺人容疑がかけられていた、それを警察官が暴行をして父さんに犯人だと認めさせた、そして裁判の結果三人を殺したことにされ、父さんは死刑、母さんはショックから裁判の二日後自殺した。身寄りがなくなった俺は施設で暮らすことになったが、そこは地獄そのものだった。父親が人殺しということでイジメばかり受けていた。俺は恨んだ、父さんを犯人にした。母さんを殺した。俺を地獄に落とした。警察が全て悪いと。

 そしてトウヤは今16歳。施設を出て一人暮らしをしていた。

「疲れた、今日は早く寝るか」

 バイトから帰ったトウヤはだいぶ疲れているのか、そのままベットで寝てしまった。

 誰かいるのだろうか、騒がしいな......寒い、床が冷たい、変な夢だな。トウヤは夢だと思っている。だがこれは紛れもない現実だった。

「君、大丈夫?」

 俺が目を開けると、ツインテールの白髪、宝石のように綺麗な赤い瞳。まるでアニメから飛び出してきたような少女が話しかけている。

「大丈夫で......え?」

 見ると辺り一面血の海だった。

「大丈夫だよ、もう終わったから。とりあえず君は保護させてもらうね」

 感覚がある、寒さも痛みも、これが現実であることを俺は悟ると同時に絶望した。

 俺は彼女に連れられ出口に向かっている。ここは地下だろうか、やけに寒い、酷い匂いだ、ここで何人死んだのだろうか。彼女の他にも何人か武装している人がいる。

 俺は誘拐されていたのだろうか、だが家の鍵はかけたはず。

「どうして君はこんな場所にいたの?」

 そんなこと知らない、俺が聞きたいぐらいだ。

「気がついたらあの場所にいました。今何が起こっているのかわからないです」

「世界転移」

 突然彼女の口からそんな単語が出た。

「......世界転移?」

「そう、ここで秘密裏に実験されていたの、まさか成功していたのね」

 そして外に出ると驚きの光景が広がっていた。

「......なんだよ、ここ」

 辺りを見渡すと、見知らぬ街、空飛ぶ船、見たこともない生物。ここは地球ではないことはひと目でわかった。

「この世界の名はディフレン、歓迎するよ、少年」

 そう言った彼女の表情を俺は美しいと思ってしまった。

「着いたよ」

 あの後馬車に乗せられ、どこかに連れてこられた、どうやらここが目的地のようだが、その場所には見覚えがあった。

「......警察署」

 どうやら世界が変わってもこの場所はあるらしい。

「どうしたの?顔色悪いよ」

「......もしかして、お前らは警察か?」

「そちらの世界にもあるんだね、そうだよ私達は警察官だ」

 俺は突発的に彼女の胸ぐらを掴んだ。

「ふざけんなよ!警察なんかに助けられるんだったら、死んだ方がマシだ!」

 彼女は突然のことに驚いているようだ。

「急にどうしたんだ、まずは落ち着いてくれ、少年」

 少しやり過ぎたと思い手を離す。

「すまない、取り乱した」

「大丈夫だよ少年、少し怖かったけど」

 沈黙の時間が続く、少し落ち着いたので、さっきから気になっていたことを聞いてみることにした。

「思っていたんだけど、その少年って呼び方やめてくれない、それに俺はあんたとそれほど歳の差ないだろ」

 すると彼女は悪戯な笑みを浮かべ、

「そうかな、私は初対面の人の胸ぐらを掴むほど、幼くはないと思うのだけど」

「それはごめんって」

「冗談だよ、君、面白いね」

 ここで俺は彼女にからかわれていたことに気づいて、ほんの少しだけムカっときた、嫌、かなりムカっときた。

「そうだ、名前ぐらい名乗っておこうか、私の名前はアイリスだ、よろしくね」

「如月斗陽だ、よろしく」

「それじゃあ、自己紹介も終わったことだし、そろそろ入ろうか」

「......ああ」

 こうして俺はこの世で一番嫌いな場所に、また足を踏み入れた。

「あっ、そういえば」

 警察署に入ると、アイリスが何かを思い出したようだ。

「どうした、忘れ物か?」

「嫌、そういうことじゃなくて、ただ、これからは君のことラギって呼ぶから」

「......は?」

 正直クソどうでもいい、しかもキサラギだからラギってセンスなくね。

「それじゃあ付いてきて」

 トウヤはアイリスにある部屋に連れてこられた。その部屋は生活感があり台所やベットやテレビなんかもあった。

「今日からラギはここで暮らすんだよ」

 するとトウヤの表情が暗いものに変わる。

「嫌だ」

「即答だね、どうして嫌なのか聞いてもいい」

「少し長くなるけどいいか?」

「うん、お願い」

 俺は気がついたら彼女に全て話していた。両親が冤罪で殺されたこと、俺が地獄に落とされたこと。

「それは、辛かったね」

「本当だよ、お前らのせいでな」

 俺はアイリスに敵意を向ける。彼女には俺の八つ当たりに付き合ってもらうことにした。

「嫌われることは警察の立派な仕事だよ」

「......え」

 アイリスはトウヤが何を思っているのか、どんな気持ちでいるのか。その全てが手に取るようにわかっている。

「でもね、生憎恨まれることは仕事ではないんだ」

 そしてアイリスは自分の右手をそっと差し出す。

「だからラギ、私の助手になってはくれないかな?」

「......どういうことだ?いきなり話しが飛んでいて理解ができないのだが」

 戸惑っているトウヤを置き去りにしながらアイリスは話しを続ける。

「ラギと私で色々な事件を解決するの、そして一緒に事件を解決していくに連れて誤解も解いてほしくって」

「何かってに決めてるんだよ!......誰が警察なんかと」

 アイリスがトウヤの声を遮る。

「だから全部の警察が恨まれ存在じゃないを私が証明する」

 アイリスの堂々たる宣言にトウヤの心が揺らいだ。

「そのために如月斗陽!私の助手になれ!」

 俺はここでこの人には絶対に勝てないことをここで悟った。

 トウヤは両手を上げながら、

「俺の負けだ、そのだからだな......そんなこと言ったからには絶対証明してくれよ」

「もちろんだよ、相棒」

こうして俺の異世界での物語が始まった。

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