(二)-16

 私はジッと彼女の左右に揺れる長い髪を見つめた。彼女は、エレベーターホールの方ではなく、503号室のドアの方へ向いた。そして右手でドアノブを掴み、引いて、開けた。

 彼女は、竹浦さんの奥さんだった。隣の部屋で夫と情交行為をしていたのは、あの奥さんだった……。

 私はドアを閉めた。一体いつからなのだろうか。どうしてそういうことになっているのだろうか。きっかけは? 夫はどう言い寄られたのだろうか。

 私の頭の中で、そんなことがぐるぐる巡っていた。


(続く)

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