(二)-8

 彼女は今でも夜になると出かけているようなので、ホステスの仕事を続けているのかもしれない。

 その翠子さんは、ハイヒールの音を立てながらこちらへ向かって歩いてきた。それだけなら、すれ違いざまに挨拶を交わすなどしたであろう。

 しかし、このとき私はとっさに電柱の物陰に隠れた。というのも、彼女の隣に見たことがない中年から高年のスーツ姿の男性が一緒だったからだ。その男性をよく見てみたが、明らかに竹浦さんの旦那さんではなかった。

 しかも彼女はその男性の腕に、しがみつくように自らの腕を絡めていた。

 これは、不倫の現場だ。私はそう直感した。間違いない。

 私は胸の鼓動が抑えきれなかった。昨日、まさかの不倫の告白を受け、そしてさらに今日、不倫の現場を目撃してしまったわけだ。


(続く)

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