9. 売られた花嫁(9)

「おしっこがしたい」

暗闇の底でぼんやりと目覚めた。

蓋を押し上げようとした。

もう釘は打たれていないのは知っていた。

だが押しのける力がない。

いや力がないわけではない。

・・・じぶんで開けてはいけないような気がした。

逃げようとしたと思われてはいけない。

逃げても無駄だ・・・。

すぐに神父さまが追いかけて来て後ろ髪をつかまれ引き倒される。

・・・神父さまが来るまで叩き続ける。

まさか棺の中でおしっこをするわけにはいかない。

御仕置きをうける!


・・・やがて合図を聞きつけた神父さまが蓋を外してくださった。

棺の縁にすがってようやくからだを起こす。

ここはうす暗闇の地下墓場だ。

切れかかって明滅する蛍光灯がジジジと蝉の鳴声のような音をたてている。

神父さまはいつもと同じ詰襟の黒い上着の上から黒いマントをまといフードを被っている。

顔は死神のように青白い。

うす暗いうえに大きなサングラスと口髭で隠したその表情はよく分からない。

後ろ手錠をかけられ、大きなアイマスクで顔を被われる。

扉を開け、カーテンを引く音がする。

隣は花嫁の部屋だ。

死んだ花嫁が真っ白な顔でベッドに横たわっているはずだ。

天井灯の明かりが顔を照らす気配がするがアイマスクのせいで何も見えない。

ハイヒールを履かされる。

両足の間に金属の洗面器のようなものが置かれる。

サテンのウエディングドレスを腰までたくしあげてお尻を落とす。

勢いよく放出されたおしっこが洗面器を叩く派手な音がする。

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