もしかしてわたしって……!?<Ⅰ>

 サラに治癒魔法を使うが、わたしの力では最低限痛みを抑える程度だろう。治癒をしている間、沈黙が訪れるが、サラが口を開く。


「リリアさん、ごめんさない!私のせいでリリアさんの試験に影響が……」

「サラさんが謝る事はないわ。わたしも大人気なかったから……」


 そう言うと、少しサラが笑う。


「あはは、「大人気ない」って!自覚があったんだね!」

「なっ……」

「私のためにやってくれたってことは嬉しいけど、ここまでするなんてね……」

「うっ……わかってるよ……でも、わたしもサラさんに言いたいことがありますからね」

「えっ!?」


 そして二人で笑い出す。すると連絡が入る。


「残り時間10分となりました。繰り返します、残り時間10分となりました」


 そう言われ、途端に焦り出すサラ。


「もうそんな時間!?まだ10点分しか取ってないんだけど!?」

「……妨害があったとはいえ、少ないわよ」

「そういうリリアさんはどうなのさ!」

「27よ」

「そこまで稼いでると思いませんでした!ごめんなさい!」


 そんな事をやっている暇はない。平均がどれくらいかわからない以上、稼ぐに越したことはない。


「……そうだ、アレがあったわ」

「アレ……?あー、私も似たようなの見つけてたよ」


 わたしはサラに肩を貸し、出来る限り低空飛行で移動をした。



「只今をもちまして、試験を終了と致します。参加者の皆様は、速やかに出口の方へ向かうように。わからない場合は、付札を破いて頂ければ順次係の者が向かいます。繰り返します。只今をもちまして──」


 区域内に案内が響き渡る。わたしはサラと鉱物が入った袋を二人分持って移動した。森の出口に近付き、低空飛行を止めて、歩いて進んだ。


「はーい、こちらに鉱物が入った袋を持ってきてくださーい。付札が無い人は、腕章の番号を確認いたしますので私に声をかけてくださーい」


 係の女性の声が案内をし、参加者は並びながら袋を渡している。わたし達もその列の後ろに並ぶ。わたし達の後ろに並んだ人が、自分の袋を地面に置き、ため息をついた後、「えっ!?」と声を上げた。


 それもそうだろう。わたしの袋は地面に垂直に立ち、まるで子供が隣に立っているかのように並んでいた。この中には最初に見つけた100点の鉱物、もとい銅像もどきが入っている。



「えっ……!?これを持ってくの!?いやいや……いくら100点だからって……」

「わたしも出来ればこんな物持っていきたくないよ……」


 わたしが地面から出したそれを見て口々にそんな事を言った。サラも点数は30点だが、似たように大きな鉱物を見つけていた。しかし、既に誰かが持っていったのか、その場所からは無くなっていた。


 埋めたお陰か、こんな物を持っていきたくなかったのか、わたしの方は残っていた。


「それじゃあ、これを入れるからこの鉱物はサラさんの袋に入れるわね」

「……なんかズルしてる気分だけど、しょうがないよね……これ入れるとなると他の鉱物、邪魔になるし……」


 サラが持っていた10点と、わたしの分の27点、合わせて37点あれば充分だろう。サラにはあの時のせいで稼げなかった分だと渋々納得させた。



「何……あれ?ホントに鉱物だけなの?」

「昨日のあの人でしょ?それならあり得るのでは……」

「「欲張り物は身を滅ぼす」って言われたけど、強者の身は滅びないんだな……」


 やはり目立ってしまう形となった。いっそのことサラの点数にしてしまうかなんて考えていると、サラが急に声を上げた。


「うぅっ……!!」

「っ!痛みが!すみません!救護係を!」


 サラの痛みがぶり返したため、係の人に連れて行ってもらう。治癒魔法を使えば数日の内に普通に歩けるようになるはずだが、それでも心配だ。師匠せんせいにしっかり治癒魔法を習うべきだった。


 と言うのも、師匠せんせい曰く治癒魔法はあくまで「その人の自己治癒力の活性化、言わば寿命の前借り」ということらしい。


「治癒魔法を覚えてしまうと、それに頼って無茶な事をしてしまう意識ができてしまうから最低限しか教えないよ」


と言われた。確かにそうかもしれないが、こういった可能性を考えてなかったのは単にわたしと行動をし続ける想定だったのか……。


 そんな事を考えつつわたしの順番になり、袋を渡して足速に去っていった。サラが心配だと言うこともあるが、これ以上奇異の目で見られたくなかったからだ。


 結局、その日はサラとは会わせてもらえず、試験の次の日、結果が発表される当日の朝になって会うこととなった。

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