第12話伊織は?(side 司)

 入学式が無事に終了し、俺は生徒会の後片付けもせず、すぐさま伊織の担任に駆け寄った。副会長や会計係の文句が後ろから聞こえたが、俺は生徒会どころではなかったので、完全に無視した。

「先生! 今よろしいでしょうか?」

「獅子堂くんではありませんか。先ほどの挨拶、立派でしたぞ」

「お褒めいただき、ありがとうございます」

「それにしても、声を掛けてくるなんて珍しいですなあ。何かありましたかな?」

「いお……、双葉伊織が先ほどから見当たらないのですが……」

「ああ、双葉くんなら、入学式会場に入る寸前にお腹が痛いから保健室に行くと行って、なぜか急いで出て行きましたぞ」

「保健室……。そうですか、ありがとうございます」

「双葉くんが何か、やらかしましたかな?」

「いえいえ、いお……、彼は何もしていませんよ。個人的に気になっただけなので」

「そうなんですか。入学早々何かやってしまったのなら、謝罪させなければならないと焦りましたぞ」

「そんな! 彼は素晴らしいですよ! なんたって彼は……、いえ、何でもありません。居場所を教えていただきありがとうございました。では、失礼致します」

「うむ。今年も獅子堂くんには期待しているぞ」

 そう言って、軽く肩をたたかれたので、俺は伊織の担任に頭を下げた。そのまま方向転換をすると、さっそく伊織がいるであろう保健室へと向かった。

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運命に、逆らいたい B&M @MUSH115

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